タブレット普及で
住友商事と戦略が合致
── 最初にGGIと経営統合に至った経緯を教えてください。
堀川 どちらも同じウィザスグループで、学習塾に学習プログラムを提供していますので、業務を効率化できるという利点があります。また、GGIの出資会社である住友商事としても、タブレットを教育業界に普及していくために、英語だけでなく「速読」などの教育コンテンツを搭載したいという思惑があります。私どもと戦略が合致した結果、一緒にやりましょうということになりました。タブレットは住友商事のグループ関連会社であるティーガイアを通じて供給されます。
── 「速読英語」はタブレット対応ですか。
堀川 PCとタブレットの両方です。現状はPCで利用する方が多いのですが、これからはタブレットが主流になっていくでしょう。塾においても新しくPCを購入するより、タブレットに切り替えていく動きが目立ちます。
── 現在、「速読」と「速読英語」は何教室に導入されているのですか。
堀川 「速読」は約1,800教室。「速読英語」は、春からスタート予定も含めて約600教室です。これから第一ゼミナールでも始まります。大手では、栄光が全校舎の高校生、市進では中学3年と高校生を対象に開講します。
── 「速読英語」は、「速読」の英語版というイメージでしょうか。
堀川 日本語の「速読」とは少し目的が異なります。「速読英語」はスピードを競うというより、長文読解力を鍛えることに重点を置いています。そのため、語彙の確認や文章の内容のチェックも入っています。
速読トレーニングも2通り。通常の速読と、「意味のかたまり」ごとに理解していくスラッシュリーディングです。スピードを計測して読解力を強化していきます。初級・中級・上級と分かれていて、それぞれ48ずつの文章が用意されていますので、最終的には相当な読解力が身に付くようにプログラムされています。
長文を苦手とする生徒に、速読というゲーム的要素を取り入れることにより、長文に対する抵抗感をなくして、いろいろな文章を読むきっかけを提供したいという思いで開発しました。大学受験の英語も長文化していますので、いいタイミングでリリースできたと思います。
── 塾だけでなく学校にも提供される予定ですか。
堀川 あくまでもメインは学習塾です。学校に関しては、その地域の塾での導入状況などを見極めたうえで慎重に進めたいと考えています。
海外の子どもたちに
コンテンツを提供
── タブレットに搭載するのは、「速読」と「速読英語」ですか。
堀川 「MEET the WORLD」も加えて、3つのアプリを搭載したタブレットを提供していきます。受講料もアプリを利用した分だけ課金するシステムになります。これを春以降に本格的に展開していく予定です。
タブレットも現在は、iPadのみ対応ですが、今後はタブレットの普及に伴って他の機種にも対応していく必要があります。開発費用の点でも、住友商事から出資していただいたメリットは大きいですね。
── 合併により、新たな可能性が広がったわけですね。
堀川 これからのICT教育を推進するうえで、タブレットの供給源が確保できましたので、私どももコンテンツを売るというより、さまざまなコンテンツを搭載したタブレットを供給するという形になります。ですから、自社の教材だけでなく、他社の映像教材なども組み込んでいきます。
── そうすると、ターゲットが拡大しますね。
堀川 ええ。2〜3年先には国内市場だけでなく、住友商事の販売ネットワークを活かして海外にも展開したいと考えています。教育プログラムをつくるだけでなく、タブレットという形で世界中に供給して、普及していく。住友商事と連携できれば可能です。
── 日本人の子ども向けですか。
堀川 現地の子どもが対象です。速読や英語は世界共通のスキルですから、例えば、「MEET the WORLD」をオールイングリッシュにすれば、日本の生徒とインドネシアやベトナムの生徒が一緒に授業を受けられます。
さらに英語だけでなく、他の言語にも利用できます。すでに多言語化できるように作り込んでいますので、中国語やハングルなど、現地での採用案件があれば、文章を他の言語に切り替えてトレーニングすることができます。
「人ありき」から
ICTを活用した塾運営
── ここ数年でさまざまな学習ソフトが登場し、なかには驚くほど安価なものもあります。こうした学習ソフトは学習塾にどのような影響を及ぼすと思われますか。
堀川 消費者はいろいろなものを組み合わせて、自分なりの学習スタイルを確立していくと思います。そのときに学習塾に求められるのは、モチベーションを高めるという役割ではないでしょうか。ひとつはっきり言えるのは、これから塾は人材を確保するのが難しくなるということです。労働人口の減少に伴い、優秀な人材が塾業界で働こうという意識は低下しています。これまで「人ありき」だった学習塾も、人がいなくても回せるような仕組みをつくっていかなければなりません。その点で、ICTが仕組みづくりの一助になると思います。同時に塾のスタイルも多様化していくでしょう。
── では、そうした塾業界において、SRJの今後の課題は何でしょうか。
堀川 教育コンテンツを通じて塾業界の一隅を照らすというのが我々の方針です。いま子どもの数が減り、学習塾の生徒数は10年前に比べると平均して1〜2割減です。我々としても、塾にコンテンツを提供するだけではなく、社員の意識を高めて先生方と信頼関係を築き、経営的な視点をもって集客やサービス向上にかかわっていかなければなりません。そのために組織も見直す必要があります。
昨年12月に沖縄支社を開設し、北海道から沖縄までのフォロー体制が整いました。国内の基盤がある程度固まれば、次は海外進出です。日本の教育は海外でも通用します。現地にある教育機関にコンテンツを提供して、日本の教育の素晴らしさを広めていきたいと考えています。
── 本日はどうもありがとうございました。
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