中学受験
多様化するアプローチ
中学受験といえば、新小4(小3の2月)から大手塾に入塾し、3年間勉強して受験に挑む、というのが典型的パターンであった。が、リーマンショック以降、さまざまなスタイルで中学受験に臨むご家庭が多くなっている。
模試の受験者数増減と
本番の数字が
比例しなくなっている
私のような仕事をやっている人間は、秋口の模試(首都圏では3大模試)の受験状況で、翌年の本番の数字を予想する。ところが、近年この数字が比例しなくなっているのだ。
例えば2014年入試に向けての11月の模試では受験者数が前年より5%くらい減っていた。
それで、本番の数字もかなり悲観的に見ていたのだが、実際には減りはしたが、これほど大きくはなく微減にとどまった。
このことは、大手塾に通い、3大模試で合格の可能性を判断するという典型的受験生ではない受験生が一定数いるということに他ならない。
ここでは、そうした受験生像を探ってみよう。
公文、学研教室から
直接受験
小学校低学年から、基礎学力を付けるために公文、学研教室で国語・算数を学ぶ子は以前から大勢いた。その中で、中学受験をさせようと思い立った家庭は、新小4から受験専門の大手塾に転塾させるというのが一般的であった。いまでもそれが多数派ではあるが、中には6年までそのまま公文、学研教室に通わせるというパターンも増えている。
それが可能になった背景は3つある。
〇経済的な理由で、全般的に入塾時期が遅くなり、4科をきちんと勉強してきた受験生が減ったことで、私立中学の入試教科が4科から2科へと軽量化が進み、2科で受けられる学校が増えていること。
〇中学受験人口が減少方向なのに対し、学校側は、新設校、公立中高一貫校の開校などで募集人員は増加しており、定員が埋まらない学校が増えていること。そのため、受験者を増やすために、受験塾に通っていなくてもできる問題で入試を行う学校が増えていること。
〇公文、学研教室側も受験生がいるので、受験情報に詳しくなっていること。実際、各私立中学が開く塾対象説明会に足を運ぶと、こうした教室の情報担当者と会うことがよくある。
このような受験生が増えているのである。
親が中学受験経験者
私が息子を中学受験させた1980年代末頃は、自分も中学受験したという父親はごく限られていた。が、いま、仕事柄、接する父親の中には中学受験経験者がかなり多くなっている(母親は以前から中学から私立に通ったという比率は高い)。中学受験を経験していないと受験算数は教えられなかったものだが、いまの父親は結構教えられる人が多い。
それで、通信教育(ベネッセ・小学館といった出版社だけでなく、ほとんどの大手塾が通信教育部門を持っている)、市販の教材(四谷大塚の予習シリースなど、塾教材でも外部の人間が購入できるものもある)で、家で勉強させるというケースも増えている。もちろん背景には、通塾時の治安への不安という要素もある。
個別指導塾の増加
先の息子の受験の頃には個別指導塾の存在はほとんど記憶にない。勉強面のフォローは家庭教師であり、家庭教師を派遣する会社が無数にあったものである。いまそのニーズは個別指導塾に移っている。
大手塾に通い、そこでわからなくなった、遅れている勉強をフォローするために個別指導塾に通う、いわばダブルというのが当初は多いかたちだった。が、いまでは個別指導塾だけというケースが非常に多くなっている。このことを少し考えてみたい。
○ダブルは経済的負担が大きすぎる。
○子どもが集団授業になじめない。
○こうした子が多くなっていることから、大手塾では傘下にかなり以前から個別指導部門を抱えている。
○一方、フランチャイズで教室展開する企業が多数誕生し、家のそばに教室があるという環境になっている。
○企業のM&Aが盛んになり、リストラされたホワイトカラーにとって、フランチャイズの教室経営は魅力的な起業である。私は私立中学で保護者向けに中学受験の講演をすることがしばしばあるが、そのとき、そうした方が聴きに来ていることがよくある。
○効率志向の風潮を受けて、保護者の中にも効率よく「わが子に合った勉強、志望校に合った勉強をさせたい」という要望が強くなっている。
○入塾時期が遅くなっているということは先にも述べたが、6年の夏あるいは秋以降になって急に子どもが受験すると言い出すケースがある。そうしたとき、勉強の進度の関係から大手塾では入塾を認めない。そうしたケースでは個別指導塾ということになる。実際、個別指導塾に話を聴くと、そうした駆け込み入塾が多いという。
以上のように、ひと口に中学受験といっても、受験生の学力差を受けて、受験へのアプローチは年々多様化しているというのが昨今の状況である。 |