鳥取県中部初の私立中高一貫校 「湯梨浜学園」開校へ
平成18年4月開校を目指す「湯梨浜学園」は、鳥取県下に学習塾や予備校を経営する伝習館代表の坂根徹氏が設立代表者である。
文部科学省が示した、全国に中高一貫校を500校つくろうという方針は、鳥取県でも検討委員会を開いて論議が行われたが、実現に至っていない。一部の高校を除き、鳥取県の大学入試合格実績は年々ダウンする傾向にある。こうした鳥取県の進学状況に一石を投じたいと、いち早く手を挙げたのが坂根氏を中心とする経済人だった。
開校までの経緯や抱負、教育方針などについて、坂根氏に話を聞いた。
鳥取県に中高一貫校を
――中高一貫校開校は、いつごろから構想をお持ちでしたか。
坂根 10年ぐらい前からです。塾だけでは、子どもたちとかかわれるのはわずかな時間しかありません。
6年間一貫教育を自分たちで手掛け、確かな実力をつけて大学受験させたいという思いは、前々から持っていました。
少子化対策として高校の統合・再編が進みましたが、いまだに鳥取県には公立の中高一貫校が1校もないのです。国の方針を受けて何回か論議が行われ、公立の中高一貫校をつくろうと答申を出しましたが、もう少し検討しようということになったようです。
全国的に見て現在、難関大学への入試は、私立の中高一貫校が圧倒的に優位です。塾の保護者からも「伝習館は中高一貫校をつくらないのですか」という声も出ていましたが、すぐ実行に移せるようなことではありませんから、タイミングを見ていました。
――学校を設立するのは、資金的にもかなり厳しいことと思われますが。
坂根 土地や建物をゼロから用意するのは、何十億もかかり、とても大変です。朝日塾中学校のように、廃校をお借りする方式なら参入しやすいと考えていました。
そんな折、東郷町立東郷小学校が来年3月閉校になるという話を聞きました。町長さんと助役さん、教育長さんに新設校の構想をお話ししたところ、前向きに検討していただいた次第です。
東郷小学校の敷地11,000uと校舎を10年間、無償に近い形で貸していただけることになりました。更新も可能ということです。統廃合で廃校になった建物は古いものがほとんどですが、東郷小のメインの校舎は築後まだ13、4年。人口7、8千人の町が大切に使ってきた建物で、少しも傷んでいません。耐震設計が施されていることも、条件を満たしていました。
地域の活性化に一役
――廃校を利用することは、町の活性化につながりますね。
坂根 鳥取県は太平洋ベルト地帯に比べて、少子化、不況、公共事業の削減などの影響が強く出ています。加えて、私学志向が低い傾向にあり、私学は公立の受け皿という風潮があります。その中での学校法人の設立は、厳しいものがありますが、最初に選ばれる私学になりたいと思っています。そういう意気込みでなければ、生き残っていけません。
現在、再来年4月の開校に向けて、県と計画を詰めているところです。単年度の収支予算書を何回も修正したり、カリキュラムについてもかなり細かくチェックが入ります。認可が下りるのは、こちらの準備次第ですから、各方面からご意見を伺って、綿密な準備を整えている最中です。
――湯梨浜学園、素晴らしいネーミングですが、その由来は。
坂根 東郷町、羽合町、泊村が合併して、この10月から湯梨浜町になります。「湯梨浜」は、鳥取県の代表的な観光資源である「温泉・二十世紀梨・砂丘」を表わしているのです。この素晴らしい名前に恥じない学校をつくりたいと思っています。
――地域の反響はいかがですか。
坂根 反響は想像以上でした。東郷町役場での調印式には、新聞社、テレビ局などほとんどのマスコミが取材に来ました。少子化の中、みな生き残りをかけていますので、私学の反発がないわけではありません。また、地元の中学校との協調関係を維持するため、地元枠を厳しめに設定しました。
最初は伝習館湯梨浜中学校としていましたが、入試の中立性、公平性を守るには、それはあまりよくないだろうと、伝習館の系列ということは、出来るだけ出さないようにしています。
英才型私学を目指す
――保護者も注目していますが、どのような学校を目指していますか。
坂根 オーソドックスな型になると思います。当面国公立に6割くらいが合格できる学校というのが、私どもが目指す方向です。中部地区においては2校目の私立高校、初めての私立中学、中高一貫校として果たす役割は大きいと自負しています。鳥取県中部地区に初めて開校する英才型私学として、生徒や保護者の支持をいただけると確信しています。
――開校に向けて、意気込みが伝わってきます。
坂根 塾や予備校に行かなくてもいいような、自己完結型の学校にしたいと思っています。10年前は「学校をつくりたい」と言っても相手にしてもらえず、門前払いのような扱いでした。「湯梨浜学園」の開校が、「頑張れば誰にでもできるんだ」という学習塾仲間への励ましとして自信とやる気が、全国に広がっていけばこのうえない喜びと思っています。
――再来春の開校が楽しみです。ありがとうございました。 |