100人100通りの満足
喜んでもらうというのは、生徒一人ひとりに満足してもらうことです。全員を平等に扱えばよいというものではありません。「平等」は、与える側の論理です。受け手はそれぞれ異なる人間ですから、どうしたら喜んでくれるかも違います。100人いれば100通りの喜ばせ方を用意しなければなりません。
同じ宿題を出したとしても、良くできる生徒は簡単にこなしますが、成績下位の生徒には負担です。ですから、いつも宿題をやって来ない生徒が1問でも解いてきたら「できたじゃないか、すごいね」と一生懸命に褒めてやります。
また、生徒は日々変化します。やる気になっている時もあれば、疲れている時もあるでしょう。一人ひとりの状態に見合った対応が必要です。そのためには生徒のことが良く見えていなければなりません。
例えば、数学の答え合わせのとき。生徒が本当に丸をつけているのか、手元を見ます。板書するときには「みんな見てね」ではなく、どの生徒も見ていることを確認します。説明した後には「わかった」と尋ねるのではなく、本当に理解できたかどうか生徒に答えさせます。生徒が自分の言葉で答えられて初めて、わかったことになります。自分1人がしゃべって説明できたつもりになっていないか、振り返ってみてください。
まず生徒の話を聞く
どの生徒にも喜ばれるのは生徒の話を「聞くこと」です。今の子どもたちはコミュニケーションが得意ではありません。特に中学生の場合、友だちと仲良くしているようでも本心は分かりません。本当の悩みを話せる相手がいないことが多いようです。塾のスタッフは一番身近にいる大人ですから、とにかく生徒の話を聞いてあげてください。そのときに大切なことは、まず同意することです。話の内容にではなく、気持ちに同意するのです。
わかりやすい例を挙げれば、授業で宿題を多めに出すと、子どもから「え〜っ!」とか「やだぁ」という反応が返ってくるでしょう。そのとき「お前たちのためだ」などと押さえつけないで「そうだね。大変だね」と同意してやります。すると、子どもたちは自分のメッセージを受け止めてもらえたことに安心するのです。そして、こちらの意見も受け入れてくれます。
褒めて伸ばす
ところで皆さんは、褒められるのと突き放されるのでは、どちらが好きですか。
赤ちゃんは褒められて、喜んで、いろいろなことができるようになります。ただ歩いただけで褒められるのですよ(笑)。褒められるのが嫌いな人はいません。赤ちゃんから100歳のお年寄りまで、喜怒哀楽の感じ方は同じだと思います。ただ表現方法が違うだけです。
中学生になると、親も教師もなかなか褒めてくれません。また、褒められても素直に喜ぶような真似はしません。
保護者面談のときによく言うのは、親の言葉に「うるさい」と後ろを向く子どもでも、背中の耳で聞いているということです。ですから「親の思いを必ず伝えてください」と。
褒められると、本心は嬉しいから頑張るし、伸びます。ですから褒める機会を多くするために、仕掛けを作っておきます。毎回、小テストをして少しでも得点がアップしたら褒めてやる。学校の成績が去年の同時期と比べて伸びたと言って褒める、夏休み前と比べて伸びたから褒める、宿題をやってきたら褒める……。叱るのではなく、褒めて伸ばしてください。
教えても子どもが理解できないときは、自分の教え方が未熟なのです。子どもは勉強に集中できないものです。宿題はやってこないのが当たり前。そこからスタートして、いい先生になるために努力を重ねてください。
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