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2020/9 塾ジャーナルより一部抜粋

~ 永遠に未完の塾学 ~
第38回 塾は、独立自尊が自慢ではなかったのか?

俊英塾 代表 鳥枝 義則(とりえだ よしのり)
1953年生まれ、山口県出身。
京都大学法学部卒業後、俊英塾(大阪府柏原市)創設。公益社団法人全国学習塾協会常任理事、全国読書作文コンクール委員長等歴任。関西私塾教育連盟所属。
塾の学習指導を公開したサイト『働きアリ』(10,000PV/日)には、多くの受験生
や保護者から「ありがとう」のコメントが。
成りたい人格は「謙虚」「感謝」「報恩」…。

 昔の塾の世界では、国や自治体に助けてもらおうなどという発想は全くなかった。塾は日陰に咲いた雑草であり、独立自尊、自分だけの力で生き抜いてきたことを自慢とまでは言わないが、心の糧にしている人が多かった。

 私より年齢が少し上の塾長先生たちは特にそうだった。学生運動の終焉期、昭和50年にヒットしたフォークソング『「いちご白書」をもう一度』の一節に、運動から抜ける主人公が伸ばしていた長髪を就職を機に切るという自嘲の歌詞があるが、社会への反抗をあきらめないで、大企業に就職することを潔しとしなかった人たちの一部は、おのれの力量だけを頼りに自由に生きるために塾を世過ぎとした。塾の人に、国を頼ったり、お上に助けてもらったりなどという発想の人は皆無だった。それは塾人として恥ずかしい生き方だった。

塾は徐々に変節をした

 私は、学生時分、運動の主流であった全共闘系ではなく、その反対派の共産党系の民青だった。やめたきっかけは、デモの帰りに「パンを配るから事務所に寄って行け」と言われたと思って立ち寄ったところ、中で飲食物を囲んで談笑していた地区のリーダーに鼻で笑われ、「学生にパンなんかあるかいな、党のパンフの聞き間違いや」と嘲笑されていっぺんに目が覚めたからだ。上にいくほど貴族生活、下は虫けら扱いを見て、スーっと冷めた。

 しかし、学生運動は抜けても、国、お上に頼って生きることは恥だという感覚はずっと持っていた。

 30年ほど前だろうか、それまで塾など視野にも入れていなかった私立の学校が、塾の影響力に気づき、塾を持ち上げ始めた。今では超一流校にのし上がった奈良県のある新設校などは、塾対象説明会で本革のセカンドバッグを配って話題になったりした。やがて、説明会で交通費としてクオカードを配ったり、一流ホテルで豪華な食事を提供したり、お土産まで用意したりが当たり前になった。

 そうすると、塾は少しずつ堕落し始めた。幼い子を連れてきてホテルのバイキングで料理をあさったり、家族総出で出席してお土産の袋を何袋も持ち帰ったりする人が出始めた。

 学校はすぐに気づいて眉を顰め、対策として各席に貴重品を置くのをやめて、帰る際に各塾の代表者に景品を渡し始めた。

 私はと言えば、大概育ちは悪いが、お上に頼るのは堕落だ、恥だ、という感覚は持ち続けてきたつもりだった。社会に大きく貢献していると胸を張って言えるような仕事ではないかもしれないが、施しをうけるようなことだけはしたくないという気持ちは持っていたいと思っていた。

『特別定額給付金』で、味を占める

 新型コロナを機に無自覚に受け取った最初の施しは、令和2年4月時点で住民基本台帳に記録されている者全員が、国から『特別定額給付金』10万円がもらえるというものだった。

 これは国民全員が平等にもらえるものだからと思って、私は何の抵抗もなくさっさと手続きを済ませた。

 今まで税金を払うばっかりで国から何の恩恵も受けた覚えはないからを口実に、「はい、ありがとさん」と喜んで使わせてもらうことにした。ちょっとした贅沢をしようと思って、高級万年筆を買った。

 今から思えば、これが変節、堕落への第一歩だった。

『持続化給付金』『休業要請支援金』で
暗黒面、餓鬼道にまっしぐら

 次に、国からは『持続化給付金』が最大200万円、大阪府からは『休業要請支援金』が最大100万円もらえるというニュースを、公益社団法人全国学習塾協会や税理士さんや複数の塾長さんから教えてもらった。

 最初は、「どうせ手続きが七面倒くさいに決まっている、意地でもお上からの施しは受けんとこう。コロナで大損をこくのも運命だ」と思って、面倒くさいのと痩せ我慢で、何もしなかった。緊急事態宣言の趣旨をくんで塾を休んだ月の赤字分は、なけなしのへそくりをはたいて補填し、すってんてんになった。

 ところがある日、尊敬する同業の先輩であり学生運動の闘士でもあったK先生から突然電話がかかってきて「おおい、今、H先生が来てるんやけどな、『持続化給付金』も『休業支援金』もえらい簡単に済んで、どっちも手に入れたんやと。今から祝杯をあげるとこや」と。

 この電話で、私の見栄、ええかっこしい、かよわき虚栄心は、音を立てて崩れてしまった。

 電話を切ってすぐに、事務を任せているS氏に、「S君、ヘルプ・ミー! 忙しい時期に申し訳ないけど、2つの補助金の申請書類をつくるの手伝って、お願い!」。

 かくして、餓鬼道に堕ちた我らの合言葉は、『もらえるものは貰わにゃ損、損』となった。

変節漢、今どきの若者から
逆襲をくらう

 ここ1ヵ月ほど、どうも個別指導を任せている学生諸君の私への目が冷たい。

 何も心当たりがないので不思議に思っていたところ、ある日授業後にリーダー格のM君が寄ってきて、「先生、大学の教授が授業中に、アルバイトをしている学生は『緊急雇用調整助成金』がもらえるはずだから、雇い主に談じ込んでみろと言っていたんですが、もらえないんですか? 講師のグループラインで相談して、塾長に言おうということになったんですが……」。

 そうだよね、臨時雇用の人に対して雇用主は「法的」には義務はないんだけど、『貰えるものは貰わなきゃ損』精神から一度貰ってしまった雇い主は、従業員から同じ申し出があったら払わざるをえないよね。

 でも、『緊急雇用調整助成金』の手続きは、とてつもなく面倒なんだよ。夏期講習中にそれをしていたら、年寄りは死んじゃうよ。でも、払わないと納得してくれないよね。

歴史の復讐

 先週だったか、小6の社会の授業で鎌倉時代の元寇の後の徳政令を教えていて、「あ、これって、まさに今の政府がやっていることじゃん」と気づいた。

 元を追い払ったのに御家人に報奨として渡さないといけない土地やお金はどこにもない。苦肉の策で「借金帳消し!」。それで借金ができなくなった御家人は益々窮乏化し、やがて鎌倉幕府は滅びてしまう。

 最近のニュースによると、生活苦に融資する緊急小口資金の申請が殺到し、リーマン・ショック時の80倍に達しているらしい。

 また、政府系金融機関による中小企業救済のための印紙不要、実質無利子の運転資金融資も、毎月、前月の倍々増で申し込みが殺到しているらしい。

 痩せ我慢の底が抜けたら、あとは滅亡あるのみか?

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