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中学・高校受験:学びネット

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2020/7 塾ジャーナルより一部抜粋

「無限の可能性」の引き出し方 第6回

     

 「将来、入社面接で『君はコロナ禍の時、受験生だったけど、どのように過ごしていましたか?』という質問があった時に、しっかり答えられるような生活をしよう!」

 最近よく生徒に伝える言葉です。と同時に、私たちもそれが問われているのだと感じています。今、新型コロナが何を教えてくれているのか? それを偶然ではなく必然だと捉えると、どう動けば良いのだろう? と考える今 日この頃です。

伝えたいこと

 さて、ナカジュクはイベントの多い塾です。教室の中では「宿題をしっかりやってくる」「授業をしっかり聴く」「点数が取れる」生徒はもちろん成績を伸ばしてくれますが、そうではないところで力を発揮する生徒もたくさんいます。例えば、普段塾ではおとなしい生徒が、自然体験合宿の生活の中で下級生の面倒をよく見てくれたりします。そして、それを承認することで、生徒との信頼関係が生まれ、教室での雰囲気が変わっていくというようなこともよくあることです。塾という縦社会の良いところですね。

 先日、いも苗植えを終えたところですが(自粛中で生徒は呼べませんでした)、秋には収穫をします。以前これがきっかけで東京農大へ進学を決めた生徒もいました。しかし、このようなイベントに参加するのは、よくて全体の2~3割です。

 そこで10割の生徒にナカジュクの理念を伝えたいと考えてスタートしたのが、『NAKAJUKU-TED』(あくまでも内輪での呼称)です。当方は、ほぼ個別授業形態の塾ですが、授業の始めと終わりは「姿勢を正して」挨拶をし(リモート授業でも行っていました)、始めに先生が5分ほど語る時間を設けています。目的は「成績向上」はもちろんですが、『人間力』を上げることです。「何のために生きるのか?」「何のために勉強するのか? 働くのか?」を考えます。時には小学生新聞などを使ってディスカッションしたり、異業種の方にお越しいただくこともあります。内容としては、ご自身の仕事のやりがいを中心に語っていただきます。

成長と共有の場
ナカジュクの『MBA』

 話は変わりますが、当方の社訓は「人を勝たせる」です。少々偉そうな感じに聞こえるかもしれませんが、「自分を超える人を育成しよう」という思いが詰まっています。その方法論は、企業理念として「『人間性』『人格』を相互に高め、品質の高い企業経営を行う」と謳っています。『人間性』は、思いやり、優しさ、感謝など、心の部分。『人格』は、姿勢、挨拶、傾聴力など、行動の部分に位置付けていますが、大事なことは、「人を勝たせる」には自らが成長することだということです。よって社員が社外で研修する機会も多いのですが、塾内でも『MBA』という、ちょっとカッコ良さそうな名称の会(月に1回)を設けています。実は『ムチャブリアソシエーション』の略称です(笑)。

 訳あって、私は2年ほど前から自塾の経営会議にも出ていませんし、全体会の企画もスタッフに任せていますが、この『MBA』だけは仕切っています。参加は強制ではありませんが、強い圧力をかけています(笑)。

 始めたきっかけは立川談志師匠のお弟子さんの、「ムチャブリをされて育った」というような本を読んだのがきっかけでした。「はい、今日の塾長の挨拶はSさんね」「今の話、経営者だったらどう助言する?」など、会は私の胸三寸で進めていきますので、今はもう慣れていますが、最初のうちはハラハラしていたと思います。

 ここは『人を勝たせる』ために自らが成長する場です。やることは単純で、1ヵ月で出会った「人」と「本」のシェアです。「学びはこの2つの出会いから来る」という考えのもとです。当初、輪読のかたちを取ろうかと悩みましたが、それぞれの価値観を共有する意味から、自由課題としました。課題をやっていなかったりしても咎めるようなことはしませんが、今では全員が取り組んでくれています。さらに『MBA』で話すために日ごろから『2つの出会い』を意識して行動するようになったと、スタッフは自らの成長を楽しんでいるようにも見えます。

 会ではそれぞれが2つの出会いから心に響いたことをシェアし、質問や感想を伝え、最後に私が所感を述べるようなかたちで進めますが、「理念」を共有する場にもなっています。4~5月はZoomで行いましたが、集まる負担もなく、外部の方も誘いやすいので、当分このかたちでいこうかと考えています。

 そして、一番の理由はこのことかもしれません。最近の『MBA』の最後の私のメッセージです。「みんな、ごめんね。いつもおっかない顔で、会議に出ていたことに気付きました。怒っているわけではなかったけど、こんな顔で会議で座っていられたら嫌だよね。Zoomだとすぐに自分の顔に気づくから、みんなも笑顔になれるよね」

 こんな感じだったと思います。

 この会の成長とともに、『NAKAJUKUTED』の質も上がってきました。相手に成長してもらいたければ自らが成長している姿を見せるのが一番であることは、言うまでもありません。長い生徒だと10年くらいは塾に通ってくれるわけですから、心に残るメッセージをたくさんプレゼントしたいものです。

生徒の『可能性』を信じる指導を

 緊急事態宣言が5月いっぱいまで伸びるという情報を受けて、当方では急遽ゴールデンウィークの午前中から小4~中3生対象に、教科書別の授業及び自習室の開放、受験生の講習(有料)、そして、9時半から朝礼をZoomにて行いました。始めの10分くらいは、自塾のスタッフ、外部の方に話をしてもらい、その後ブレイクアウトルームで2人1組に分かれて聴いた話の感想のシェア、1日の予定などを話し合います。教室が東京と埼玉にあるので、地域を越えた交流や、高校生と小学生の話し合いができるところが面白いです。

 最後は、高校生にも『TED』をしてもらいましたが、「勉強の苦手な自分がどのようにその状況を克服したか?」を上手に語ってくれました。現役の生徒の言葉なので下級生たちにはとても参考になったと思います。その後、何人かはそのまま自習室に入ります。手元をずっと写しているだけですが、決まった時間勉強できるので、計画性のある生徒には良い時間です。

 また、自習中は可能な限りブレイクアウトルームで1:1の面談をし、自習計画などの相談にのります。お察しの通り、この間は任意参加なので、「自習室に参加しない生徒」「朝礼でもシェアが苦痛でギブアップしてしまう生徒」「そもそも朝礼も出てこない生徒」もいました。しかし、本来私たちが目指すものが伝わっているなら、生徒全員が「朝礼」「自習室」へ自らの選択で参加してくるものだと思っています。まだまだやれることがあると、今回課題がたくさん見つかりました。

 二度とあっては欲しくないですが、次回もし今回のようなかたちで「朝礼」や「授業」及び「自習」をするようなことがあったら、塾生全員が自らの選択で参加してくれる力が持てるよう、指導に当たっていきたいと思います。私たちが生徒の可能性を信じて関われば、きっと達成できると思います。


仲野十和田(なかの とわだ) プロフィール

 1964年生まれ。東京都板橋区出身。全日本私塾教育ネットワーク理事長。不登校のためのNPO法人フォー・ユー研究会代表理事。1 9 8 6年、「ナカジュク」の前身「仲野学習塾」を創業。現在東京・埼玉に7教室、つばさ高等学院(通信制サポート校)・つばさスクール(フリースクール)を経営。

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