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2020/3 塾ジャーナルより一部抜粋

~ 永遠に未完の塾学 ~
第35回 入塾希望者が殺到する募集法

俊英塾 代表 鳥枝 義則(とりえだ よしのり)
1953年生まれ、山口県出身。
京都大学法学部卒業後、俊英塾(大阪府柏原市)創設。公益社団法人全国学習塾協会常任理事、全国読書作文コンクール委員長等歴任。関西私塾教育連盟所属。
塾の学習指導を公開したサイト『働きアリ』(10,000PV/日)には、多くの受験生
や保護者から「ありがとう」のコメントが。
成りたい人格は「謙虚」「感謝」「報恩」…。

 塾をしていて、「昔はよかったなあ」と思うことは多々あるが(というより、何事も昔は楽だった)、そのトップは塾生の募集方法であろう。

全く効かなくなった新聞チラシ

 35年前、全く縁もゆかりもない土地に舞い降りてA4サイズのチラシを1回新聞に折り込んだら、それだけで30人を超える問い合わせがあった。

 今年の冬期講習、B4両面のチラシを2回、市内全戸に折り込んで、そのチラシがきっかけで受講してくださった生徒はたったの2名、どちらもおばあ様の引率であった。

 今は新聞をとっている人の方が希少で、さらに新聞をとっているご家庭は圧倒的に高齢者のおうちが多い。閉鎖されたり、あるいは店主が他に働きに行ったりという新聞販売店が増えているとも聞く。

 さらに外部に公表されている購読者数は眉唾であり、実際の配布数はその何分の一かであって、廃棄される折り込みチラシを引き取りに古紙業者のトラックが日々新聞販売店をまわっているというのは今や公然の秘密である。

 印刷会社、折り込み業者、新聞販売店が三位一体、お互い持ちつ持たれつで、その架空の配布数を基準にこちらに料金を請求してくるから、わが市のような小さな町でも、新年度募集時にかかる折り込み費用は軽く50万円を超えてしまう。

 零細個人塾としてはたまったものではない。

ポスティングはどうだろう?

 以前は、昼間の塾生が来ない時間に塾長が近所のポストに塾のチラシを投函してまわる行動は、商売熱心だとして同業者から称賛された。

 ところが私は大柄なので、どこでも目立ってしまう。すぐに見つかって、「あの威張りくさっていた塾長がいよいよポスティングまでするなんて、俊英塾はそこまで堕ちたか」と悪い評判が立ちかねない。そこで、ポスティングの専門業者に依頼することにした。

 市内全域に投函してもらった翌日、期待に胸を膨らませて電話を待っていると、午前中に2件、早速かかってきた。ところが2件とも、「何々マンションの管理人だが、ポストに勝手にチラシを入れるな」という苦情の電話であった。無理もない。自分自身をかえりみても、自宅のポストを開けて、中身がチラシだとチッと舌打ちをしてごみ箱に投げ捨てる。

 ポスティングの唯一の成功例は、ECCの提携教室を新たに開いたときだけだ。対象が幼児だからごくごく近所に、おまけの文具を袋に同封して投函すると、それなりの反響があった。

校門配布は?

 私の塾の塾生が、某有名個別指導塾の消しゴムをよく使っている。最初は、そこからの転塾者かと疑った。あるいは、体験にでも行ってそこから流れてきたのかとも思った。いずれにしても、よその塾の名入りの文具を目の前で使われるのは、あまり気持ちのよいものではない。

 ある日、「なぜ、みんなその消しゴムを持ってるん?」と聞いたら、口を揃えて「だってよく校門の前で配ってるし」「消しゴムは残して、パンフは見えないところで捨てるんだ」との返事。私は、その販促物を校門の前で熱心に配っている室長さんや講師さんを想像して、ちょっとだけ同情した。

 頭を下げるのが大の苦手の私は、配布の許可をとるのも億劫だし、配布後にごみとして捨てられるであろうものの苦情処理も嫌だし、校門配布はできそうにもない。

では、いよいよインターネットの活用か?

 従来型の宣伝手法はすべてだめだと思ったから、軽薄な私は「よし、これからはインターネットの活用だ!」と思い当たった(今時、「インターネット」なる言葉を使うこと自体が、時代遅れの老人である証拠だが)。

 常々私がその才能を高く評価している同業の若者に聞くと、「『ネット折り込み』がいいですよ」とのこと。WEBで検索して、一番安くて親切そうなところに依頼することにした。

 送られてきたリーフレットを見ると、「塾周辺に住んでいる人だけのスマートフォンに直接広告を配信できる画期的なサービス」とのこと。「これだ、これを探していたんだ!」と私は跳びあがって喜んだ。

疑惑が次々と

 早速申し込み、期待に胸を膨らませてウェブ上に広告が掲載されるのを待った。

 掲載後、依頼した会社から、毎日のレポートが送られてくる。それを見ると、自塾のネット広告から誘導されて「ネット折り込み」用に作成した広告ページをクリックしている人の数がほぼ毎日20前後はある。塾の営業地域にいる人のスマートフォンにだけ掲載される広告で、わざわざクリックしている人の数だから、これは申し込みも殺到するぞ、とわくわくして待った。

 しかし……何も起こらない。

 何故だ?

 疑惑がむくむくと胸に広がってくる。私は真相を解明するために、クリックした後に誘導されるランディングページに一つの罠を仕掛けてみた。

 クリックした人のIPがわかる設定にしてみたのだ。

 そのIP一覧を見た私は驚愕した。IPが示唆する住所は、福岡、広島、東京、松山、仙台、札幌などの大都市だけ。さらに、ニューヨーク、シドニー……と海外の都市もちらほら。地域塾だから、自塾から数キロ以内だけにネット広告の表示圏を指定したのに、近所を指し示すIPはゼロ、ナッシング。

 そこから推測できるのは、請け負った広告会社が大都市にあるプロキシサーバーを通して自分たちがクリックしているか、広告の表示範囲を全世界に設定して間違ってクリックした人の数が日に20ほどであるかの、どちらかであろう。

 この会社は信用できないと思って、ネット折り込みを考案したとされる大手企業に鞍替えするために電話をしてみた。前の会社の疑問点を指摘すると、担当者が「あ、そこはうちの代理店の一つです」と。

 後でわかったことだが、画期的な新ネット広告なるものは、誰でもできるgoogle 広告の掲載手続きを代行しているだけだった。

google よ、おまえもか?

 もう人に頼ることはやめて、google広告を自分で一からつくることにした。昨年の春期講習はそれでまあまあの成果があった。

 ところが今年の冬期講習、googleの場合、素人にはアドバイザーがつくことがあるのだが、私のアドバイザーがクリック数を増やすために、通塾範囲を目安に半径3キロ圏内に設定していた広告表示地域を、半径7キロに広げましょうと提案してきた。アドバイザーの甘言に乗った私は助言に従い、提案された半径7キロに変更してみた。

 すると、半径3キロのときには一週間で2万円ほどだった費用が、無駄なクリック数が増えた分、わずか一日で5万を超えてしまった。

 電話の応対といい、営業担当者の能力といい、google も利益のためには手段を選ばないようになってきたようだ。

 結局(当たり前のことだが)、個人塾は来ている子を大事にして、塾を信頼し、親のネットワークを通して塾を宣伝してくださる保護者に頼るしか生きる道はないのだと、あらためて痛感した。

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