2019年7月14日(日)
調布市市民プラザ「あくろす」3階ホール・研修室3
主催:NPO法人全国教育ボランティアの会
NPO法人全国教育ボランティアの会は、子どもたちの多様な体験学習活動を推進し、子どもたちの豊かな心や学ぶ力を育み、地域における大人と子どもの交流を通して青少年の健全育成に寄与している全国組織。地域社会との連携と協力の下で、大きな学びやボランティアのネットワークの構築を推進中である。
そうした活動の一環として開催している「生きいきワクワク体験・親子の集い」は今年で第29回目を迎えた。はじめに、実行委員長で司会進行をつとめる佐藤勇治先生の挨拶と、本日の講師が紹介された。
本日のプログラムは、アルミ箔・備長炭電池(厚木ゼミナール塾長・西畑功氏ほか)、魔方陣パズル(実験工房あつぎ所長・西畑正夫氏ほか)、天文教室(一橋大学名誉教授・理学博士 中嶋浩一氏)の3講座。
オープニングセレモニーで、理事長の田中敏勝先生が考案されたふわふわ紙飛行機(正式名称『はくちょうタイプ「スチロールペーパーひこうき」』)を全員で飛ばす。田中先生の「いち、にの、さん」のかけ声で、ふわふわ紙飛行機が宙に舞い、3時間に及ぶ体験学習の幕が上がった。
アルミ箔・備長炭電池づくりに挑戦
NPO法人 全国教育ボランティアの会
理事長 田中 敏勝 氏
『アルミ箔・備長炭電池』では、備長炭に食塩水を染み込ませたキッチンペーパーとアルミ箔を巻いて電池をつくり、リード線でプロペラモーターにつなぐ実験を行った。西畑功先生が、乾電池を手に説明する。
「備長炭電池の仕組みは、乾電池と同じです。今日は、アルミ箔という金属を使うことによって、中に入っている電気のもとになる電子を取り出して、回路を回し、電気が生まれたことを確認してみましょう」
原理はこうだ。アルミニウムが、食塩水を含んだキッチンペーパーと接触して電子を放出しながら食塩水に溶け込む。放出された電子は、リード線を伝って備長炭へと流れ、備長炭の細かい穴に吸着している酸素と結びつく。このとき、アルミ箔に小さな穴が開く。
「キッチンペーパーに食塩水をたっぷりとかけ、表裏しっかり濡らすこと。巻き付ける時に、両端からアルミ箔を出すこと。これでプロペラが回るはずです。回らなかったら呼んでください。魔法をかけます」
実験が始まると、親子で熱心に取り組む様子が見られた。プロペラが回らないと「先生~」と声がかかり、4名の先生方がホール内を駆け回る。回らない原因を一緒に考えたり、新しい炭を出したり、てんてこ舞いだ。「工作に使えそう」「めっちゃ楽しかった」などの声が上がった。
実験が終了し、先生が「アルミ箔に小さな穴が開いています。見てください」と促す。アルミ箔の星空に見とれる子どもたちの、生き生きした表情が印象的だった。実験の楽しさを通して子どもたちの好奇心に訴え、「なぜ」を引き出す。まるで魔法だ。
魔方陣パズルに取り組む子どもたち
西畑正夫先生の『魔方陣パズル』は、参加経験者が多いことから、今年は希望者のみの少人数クラスが実現した。
魔方陣とは、正方形のマス目に数字を配置し、縦・横・対角線のすべての列で、並んだ数字の合計が同じになる数学的パズル。一説によれば紀元前1世紀ごろから存在しているという。
先生オリジナルの魔方陣キットは、正方形のマス目に収まる数字ピースの裏側に動物の絵が描いてあり、無理なく魔方陣に親しめる。説明を聞きながらすぐに答えをつぶやく子も。先生の出題を、子どもたちが前に出てどんどん解いていく。挑戦した子どもに先生が優しく声をかけ、正解すると拍手が起きていた。
天文教室は夢いっぱい
一橋大学名誉教授
中嶋 浩一 氏
いよいよ『天文教室』。中嶋浩一教授が、七夕のお話などを挟みながら、ステラナビゲーターによる天体観測が始まった。プロジェクタで映し出される天体に、子どもたちも大人も釘付け。お馴染みの「夏の大三角形」や「天の川」の映像、木星の衛星が回る様子に、歓声が上がる。途中、影絵遊びでスクリーンがいっぱいになるハプニングも。そんな喧噪も、ブラックホールの話が始まるまで。一般相対性理論と万有引力の法則をわかりやすく解説する中嶋名誉教授の話術に、会場全体が引き込まれた。さらに中嶋名誉教授は、水の表面張力を利用した万有引力の立証実験をその場で披露。ひと目見ようとする子どもたちが、入れ替わり立ち替わり中嶋名誉教授を取り囲んだ。質問コーナーでは、子どもたちの鋭い質問に、中嶋名誉教授がユーモアたっぷりに答えていた。
3時間あまりの長丁場だったが、子どもたちからは、「楽しかった」「驚いた」などの感想が寄せられ、「もっと詳しい説明を聞きたい」といった積極的な反応も多く見られた。今回の「生きいきワクワク体験・親子の集い」は、子どもたちのより大きく豊かな育成に貢献し、夏休みの過ごし方を親子で考える機会も提供する、貴重なイベントであると言えよう。
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