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中学・高校受験:学びネット

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2019/1 塾ジャーナルより一部抜粋

~ 永遠に未完の塾学 ~

第28回 個人懇談が最高の学びの場

俊英塾 代表 鳥枝 義則(とりえだ よしのり)
1953年生まれ、山口県出身。
京都大学法学部卒業後、俊英塾(大阪府柏原市)創設。公益社団法人全国学習塾協会常任理事、全国読書作文コンクール委員長等歴任。関西私塾教育連盟所属。
塾の学習指導を公開したサイト『働きアリ』(10,000PV/日)には、多くの受験生
や保護者から「ありがとう」のコメントが。
成りたい人格は「謙虚」「感謝」「報恩」…。

 私の塾では六月からと十一月からと年二回、定期的に一ヵ月以上をかけて毎日、保護者との個人懇談会を行っている。

 歳を重ねるにつれて痛感するのは、各種セミナーや勉強会で学ぶ以上に、懇談会で親御さんからお聞きする身近なお話や貴重なご意見が参考になるということだ。

 若い時はこちらが無知蒙昧でであったがゆえであろう、私の方から相手に「教えてあげる」といった姿勢の、傲慢で一方的な懇談会であった。

 最近は逆に、保護者から教えてもらうことの方が圧倒的に多く、私の社会一般に関する知識や、親と子の現状に対する認識は、圧倒的に懇談会で保護者の方から示唆を受け、教えていただいたものばかりだと言っても過言ではない。

 その一例として、まず、全国に先駆けて大阪府が始めた、私立高校生徒への就学支援制度について書いてみたい。

就学支援制度に対する
反響の推移

 大阪府の「私立高等学校等授業料支援補助金」(年収約六百万未満の家庭では私立高校の授業料が実質無料になる)が始まったのは平成二十三年度であった。その前年末のわが塾の保護者懇談会は、全保護者がその話題に触れてこられて大変な熱気を帯びた。泳ぐように前のめりで懇談室に入ってこられて、いきなり「私学の授業料について教えてください。」と切り出される保護者の方も珍しくなかった。

 その翌年、ほとんどの私立高校は入試説明会で補助金制度のパンフレットを配布して、制度のアピールに努めていた。私も前もってにわか勉強で支援制度についての資料を用意し、懇談室で待ち構えた。

 ところがさらにその翌年になると、私が「私学も補助金があるので通いやすくなりましたし…。」と懇談で切り出すと、「でも、入学金は必要でしょう。」とか、「春に授業料を一旦納入しなければならず、返ってくるのは十一月ですし…」とか、細かい事情まで知っておられて逆に私に教えてくださる保護者の方が多くなった。

 授業料軽減による私立高校バブルは、相当数の私立高校の経営を立て直しはしたものの、たった二、三年で鎮静化してしまったのだ。今年なぞは、懇談の資料として授業料支援制度のパンフレットを使うことは一回もなかった。

 このように、世論の推移、世間の風の変遷は、懇談会でまず、敏感に私たちに伝わってくる。

 さらにわかってきたのは、どんな流行やブームも数年で、早いときは二、三年で実態が露呈してブームが沈静化する、あるいは逆の風が吹き始めるという事実である。

「真実はどうか」ではなく
「どう思っているか」で
世間は動く

 流行が二、三年で盛り上がり、すたっていくのは、世間の評価が、「真実はどうか」ではなくて、「どう思っているか」によって左右されるからであろう。

 私の所属する関西私塾教育連盟では、毎年十一月に、おもに大阪府下の高校、塾の先生方をお迎えして、オープンセミナー『高校入試の最新情報とその分析会』を行っている。今年、私は、『受験生は、なぜその高校を選ぶのか』と題して発表を行った。その準備として、大阪府下で受験生の多い三十校をピックアップして、なぜその高校が選ばれるのかを調査した。

 資料にしたのは、関西私塾教育連盟に所属している各塾の、保護者、生徒からの聞き取りである。

中学生の世論は成績によって
三層に区分される

 資料を集計してまず気がついたのは、今の中学三年生全部に一律に通用する高校の志望動機は存在しないということである。

 受験生は成績によって三層に分断され、各層で志望動機には画然とした違いがある。

 受験生は、国公立大学入学をめざす高校を受験する受験生で構成されるA層、私立有名大学に多くの合格者を輩出している高校を受験しようとする生徒が多いB層、進路が大学・専門学校・就職と三分される学校を受験する生徒のC層の、三層にはっきりと分断されている。

 (1)A層の受験校の志望動機は、その高校の大学進学実績である。この層の志望動機だけは、過去から一貫している。世間の雰囲気には流されない。

 (2)B層が受験校を選ぶ基準は、「雰囲気が明るくてきれい」と、「学校生活が楽しそう」の二つ、女子の場合はそれに「制服が可愛い」が加わる。

 十年ほど前までは、関西の有名私立大学の五傑である関・関・同・立・近(関西大学・関西学院大学・同志社大学・立命館大学・近畿大学)を受験する中学三年生は私立高校への進学を優先的に選択していた。公立高校に行くとクラブもできるし楽しい学校生活がおくれるが、有名私大には合格できない。私立高校で大学入試に向けてびしびし鍛えてもらって、有名私大をめざそうとした。

 今は全くの逆である。

 有名私大には、私立高校に進学して内部進学か指定校推薦で楽をして確実に合格したい。それほど勉強しないでも進学できるはずだから、綺麗でゴージャスな校舎で、クラブもしたいし、とにかく友人たちと楽しく過ごしたい。

 勉強で鍛えてもらって有名私大に進みたい中学生は、今は公立高校をめざす人が多い。実際に偏差値が五十~六十台の公立高校の大学合格実績は急伸している。

 (3)C層の受験生は、以前は死んだ目をした受験生が多かった。そこしか合格できる高校がないから、仕方なしに行ける高校を受験するという風潮があった。

 今、この層の受験生の表情は明るい。まず、自分の進学する高校でも大学へは行けるだろうと確信している。専門学校や就職を選択する生徒も、大学が無理だからその進路を選ぶのではない。大学へは行きたくない、自分の好きな職業に早く就きたいというのが専門学校、就職の志望動機になっている。

 こうした、志望校を決める際の基準の変遷は、個人懇談で聞き取る私たちの肌感覚からでないと、決して発見できなかったことだと思われる。

懇談会での、あれっ?
という違和感が発見の契機

 新しい発見には、必ずその前兆として、個人懇談の場での「え?」「なぜ?」という違和感がある。これは学問上の発見と一緒かもしれない。

 例えばクラブ活動への姿勢。十年以上前だと、クラブをしたい生徒は公立、勉強に専念したい人は私立を志願した。

 ところが七、八年前から、懇談会で受験する私学を決める際に、その私学に自分のしたいクラブがあるかどうかを尋ねる生徒が増えてきた。私は懇談会で、私学連合会が公開している学校別クラブ活動の一覧表を用意して喜ばれた。

 今は、一覧表など生徒は見ようともしない。「私がしたいのは軟式テニスなのにそこは硬式しかない」「水泳部はあるけど学校にプールがなく外のプールだから行きたくない」…、そこまで保護者、生徒の方が先に調べている。

 また、各私学が売り物にしているいわゆる「特待生制度」。数年前まで、懇談会で何人からかはその話が出たので、こちらも特待生制度の一覧表を用意した。今年など、特待生の「と」の字も聞かない。

 どうせ授業料はただなのだから、ということもあるが、少子化で、児童、生徒は大事にされているという雰囲気を親と子が敏感に感じとっており、優待制度は当たり前、こちらから探しまわるようなものではないといった余裕が一般化しているのではないかと推測される。

 庶民はしたたかで、強いのだ。

 我々塾、高等と錯覚している愚民は、個人懇談で教えを乞うしかない。

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