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2019/1 塾ジャーナルより一部抜粋

小学校英語教育 第7回
―東京グローバル人材育成計画’20―

     

 平成最後の年を迎えた。日本にとっては改元で新しい希望に輝ける時代の幕開けになる年でもありたい。

 来年の東京オリンピックに向けて、慌ただしい準備が続いているが、教育界においては、英語教育改革が今一番大きな話題になっている。

 前号は県内すべての小学校で英語の教科化の先行実施に踏み切った福井県の内容を紹介したが、今回は視点を変えて、東京都の「東京グローバル人材育成計画’20」について述べてみたい。

 例年、東京都教育庁に翌年の都立高校入試についての概要と新しい施策等についてご説明いただく機会を設けている。最近では、平成28年に東京都の英語教育戦略会議の報告書についてお話をいただいた。

 今回は、昨年10月18日(木)に都庁第一本庁舎25階で東京都教育庁指導部指導企画課国際教育推進担当の堀内統括指導主事から学習塾団体に対してご説明をいただいた。このパワーポイントによるプレゼンに加えて東京都教育委員会が昨年2月に公表している内容と合わせてまとめてみたい。

 東京都教育委員会では、平成25年、有識者による「東京都英語教育戦略会議」を設置し、28の提言をまとめ、平成28年9月に報告書として公表した。

 さらに今回、「東京グローバル人材育成計画’20」を東京都教育委員会が発表し、平成32年度に向けたグローバル人材育成の目標の設定と達成への手段を明確にしたところである。

 これは東京都英語教育戦略会議による提言や国による新たな取り組みを前提に、方向性を定め、具体的な実行計画を示している。

 「東京グローバル人材育成計画’20」の冒頭では、東京都教育委員会が進めるグローバル人材の育成がどのような未来をもたらすか、教育の観点から、東京の未来像の一端を描いている。ここではその要旨を紹介する。

 五輪を経て世界一の都市として成熟する東京においては、外国人との交流の機会が飛躍的に増大する。英語でのコミュニケーションは日常化しマルチリンガルの日本人も珍しくない。また様々な言語に応じた自動翻訳機が広く普及し、ボランティアとして国際交流に関わる機会が飛躍的に増える。世界中から優秀な人材が集積し新たな発想による日本初のビジネスモデルも多数誕生し、様々な国籍の仲間と協働することで企業活動も活性化する。

 国際都市の特性を発揮し、東京は日本の教育を先導していく。イマージョン教育やCLIL(内容言語統合型学習)が普及し、英語で学ぶ環境が浸透する。小学校からの英語教育が充実し、JET -ALTをはじめとする外国人指導者が常勤している学校が一般化。そのような中で子ども達は学校生活の様々な場面で自然に英語を使用している。

 子どもたちの中にもダイバーシティの認識が浸透し、多様性への理解や協働への意識がしっかりと育まれ、親友は外国人という生徒も多い。外国人と触れ合う機会の増加は、自分の国を見つめ直すきっかけともなり、豊かな国際感覚や人間性を育てている。

 次に、平成32年度までの3年間の取り組みとして、次のような内容が記述されている。

育成すべき人材像

・社会や世界の動きを見通し、自ら人生をたくましく切り拓く人材を育成
・日本の未来を担い、東京の発展を支え、リードする人材を輩出

育成すべき具体的な資質・能力と態度

・世界中の人と積極的にコミュニケーションできる能力
・相手の意図・考えを的確に理解し、論理的に説明・反論・説得できる能力
・柔軟な思考に基づいた新たな価値を創造する能力
・生涯にわたり学び続ける力
・自国の文化への理解に基づく日本人としての自覚と誇り
・豊かな国際感覚と多様性を受け入れる寛容性

そしてこれらの根底にある考え方として「東京都教育ビジョン」の三つの柱を挙げている。

・「使える英語力」の育成
・豊かな国際感覚の醸成
・日本人としての自覚と誇りの涵養

 本計画の目標としては、東京都の中学三年生の卒業時の英検三級程度の英語力を有する割合、高校卒業時の英検準二級程度の英語力を有する割合をそれぞれ60%とする。

 なお、平成29年度においては、前者が51・6%、後者が38・3%となっている。

 教員においては英検準一級以上の英語力を有する中学校教員の割合を65%、高校教員の割合を80%とする。

 なお、平成29年度においては、前者が48・0%、後者は72・6%である。

 また、都内公立学校における国際交流の実施は100%とする。

 取組の方向性としては、東京都教育ビジョンに示す三つの柱の実現に向け、新たに加えた「授業の質を高める」「学ぶ時間・機会を増やす」「学ぶ意欲を高め、学び続ける」方向性を掲げ、この計画の目標を達成していく。

三つの柱を踏まえた20の施策

1 小学校英語の教科化等への対応
2 中学校における「わかる」「使える」を実現する英語授業の推進
3 教員の英語力・指導力の底上げ
4 最新の英語教授法の習得
5 ネイティブ・スピーカーの活用による授業改善
6 授業改善に向けた4技能評価の導入
7 英語での実践的な発話を体験
8 ICTを活用したスピーキング能力の向上
9 日常的に英語を使用する校内環境の整備
10 日本や東京の文化・歴史等を英語で発信できる力の育成
11 持続的な国際交流の推進
12 「世界ともだちプロジェクト」による交流
13 同世代の外国人と交流できる環境の整備
14 海外留学への支援
15 国際貢献意欲の育成
16 「国際バカロレア」の取組
17 国際色豊かな学校の拡充
18 都立高等学校入学者選抜英語学力検査の改善
19 海外大学進学希望者への支援
20 英語以外の外国語学習の充実

 堀内氏には特に高校に関わる内容について、パワーポイントでのスライドでご説明をいただいた。大変な量になるのでここでは省略したい。

 20の施策においては、それぞれ「現状と課題」「取組の方向」とに分け、さらに東京都英語教育戦略会議における提言を加えて、現在の進行状況および目指す方向を纏めている。

 詳しい内容については、東京都教育委員会のホームページから「東京グローバル人材育成計画’20」を検索して欲しい。

 近づいてきた小学校英語の教科化。各県各市町村で様々な工夫がなされている。東京都の積極的な動きは、他の道府県にも大きな影響を及ぼしそうだ。

 各都道府県の例を見ると、先行実施と移行措置をそれぞれに行い、先行実施しているモデル校に教師を集めて、授業の進め方、教員の養成など様々な取り組みをしている。中には大学と提携したり、海外の英語教育の現場を視察したりして、指導方法を模索している道府県もある。これからの一年はまさに正念場に差し掛かっているといえそうだ。


森 貞孝氏プロフィール

慶應義塾大学(経)卒、私塾協議会会長、全国学習塾協会理事長等歴任。全国学習塾協同組合理事長現職。著書「英語ショック」(幻冬舎刊)

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