どこでつまずいたのか
人工知能が1問毎に分析して出題
JR目黒駅から徒歩7分。住宅街の中にあるQubena Academy東京本校。2015年に三軒茶屋に開塾し、2017年10月に現在の場所に移転。通塾しているのは小学生高学年から中学生の約30名。1回の授業時間は50分で、通塾回数は週2回。Qubenaで小4から中3までの算数・数学を学習している(取材時は2017年10月。小1〜3の範囲は同年11月にリリースされた)。
生徒が使うのはタブレットとタッチペンのみ。Qubenaが出題する問題を、生徒はタッチペンを使い手書きで回答。その情報をAI(人工知能)が瞬時に解析し、不正解の場合は、間違えた部分をもう一度復習する問題が出題される。それでもまだ不正解の場合はさらに易しい問題を出題。中3の問題を解いていても、中1段階まで遡るといったことが自動的に行われる。
「アダプティブラーニング(個々の生徒に合わせた学習)という言葉がありますが、Qubenaはその生徒にとって最適な問題を出し続けることができます」と塾長の門池金八先生。生徒がどこでつまずいたのか、1問毎に分析・出題することができるのが強みだ。
どんどん先に学習を進めることができるのもQubenaの特徴。学校の1年分の学習範囲を32時間で終わらせることも可能で、2学年先の内容まで進んでいる生徒もいる。しかも、きちんと理解していないと先に進めないシステムになっており、定着しないまま先に進むことはない。ステップアップ問題、チャレンジ問題もあるが、基礎を理解していない生徒には難易度の高い問題のアイコンは出ないようになっている。
効果測定には数検を利用。数検に合格できたかどうかで、定着度を検証している。無学年で学習を進めることができるQubenaだが、学校の定期テスト対策には、テスト範囲の単元に戻って学習することで対応している。
●指導のポイント
人工知能型教材 Qubenaを使うことで、個々の生徒に最適な問題を出題一人ひとりの生徒に合わせた効率の良い学習を実現
講師の役割は
ティーチングからコーチングへ
同塾の先生は、勉強を教えない。学習指導は全てQubenaで完結できるからだ。「人工知能が教えてくれるのなら、人間の先生はいらないのでは?」という少々意地悪な質問を投げかけてみた。「私たちは先生がいらなくなるとは一切考えていません。むしろ、先生の役割はより重要になってくると思っています」と門池先生。ここでの先生の役割は「ティーチング」ではなく、「コーチング」であり、生徒のやる気を引き出す関わり方を重要視している。
授業中、先生は各生徒の学習状況がリアルタイムに表示される管理画面「Qubenaマネージャー」をチェック。生徒の名前とともに「12問連続で正解しています」「時間がかかっているようです」とメッセージも出るようになっており、どのように声がけをしたら良いかわかるようになっている。「生徒がのびのびと、勉強しようという気持ちになれる。そんなサポートができるのは人間だけです。テクノロジーが進化する中、先生による生徒の心のサポートは、より重要になると思います」と門池先生は話している。
●運営のポイント
管理画面「Qubenaマネージャー」を活用し、先生はコーチングに専念生徒の心のサポートを行うことで、やる気を引き出す
STEM教育で数学を使って物事を解決する力を
同塾を運営する株式会社COMPASSの神野元基代表は、元々シリコンバレーで事業を展開していた。その時「シンギュラリティ(技術的特異点:2045年に人工知能が人間の能力を超えること)」という言葉を知り、教育を志し、帰国後に開塾。そして、子どもたちに、更なる技術革新により激変しているであろう「未来」を伝える教育を行なう必要性を感じ、まず基礎的な学習時間の圧縮が必要との考えから、Qubenaを開発した。
同塾ではドローン花火VRや3Dプリンターを使ったワークショップも開催。最先端の技術に触れる機会を設けている。
さらに、STEM教育コースも2017年8月からスタート。ゲーム「マインクラフト」と教育用プログラミング言語「スクラッチ」を組み合わせた初級コース、自律型ロボット「レゴマインストームEV3」を使う中級コースを用意している。
特徴的なのは、ただプログラミングを学ぶのではなく、数学や科学の知識を盛り込んだ内容になっていること。数学を使って物事を解決する力を育成していく。
現在、Qubenaは全国の塾、約30社に導入されている。門池先生は「私達は、単に数学が早く勉強できれば良いということではなく、人工知能時代に優れた人材を輩出する環境を作ることを目標に事業を展開しています。今後はテクノロジーが教育に浸透してきた時、先生はどうあるべきかの研究を進め、教育現場の方々にメッセージとして発信できたらと思っています」と話している。
●指導のポイント
授業以外にワークショップやSTEM教育コースで、人工知能時代に向けた人材を育成
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