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2017/9 塾ジャーナルより一部抜粋

時代に応じた教育を目指す通信制高校

  学校法人 つくば開成学園 関西統括本部長 市川 一彦  
     

教育改革と通信制高校

 日本の教育が変わる。センター入試に代わり、2020年から導入される「大学入学共通テスト」では、従来の教育だけでは太刀打ちできない評価を求められることが明確化された。今まで必要とされてきた「正確な答えを出すために素早く処理する能力」は、今後、AIやロボットに代替される。丸暗記だけの勉強は、時代遅れとなっている。

 これからは「情報を組み合わせながら、最適な答えを導き出せる能力」が必要とされる。すべてにまんべんなくできるナンバーワンより、一つのことに秀でたオンリーワンが求められる。

 こうした時代の変化の中で、通信制高校の教育システムは非常に適応しやすい。画一化された教育システムではなく、個々の生徒に合わせて自由に選択できるシステムを構築できるからである。

オンリーワンの
個性を伸ばす学校教育

 私の所属する京都つくば開成高等学校では、コース制を実施している。生徒たちは、進学、心理教育、外国語、保育、ダンス、ミュージック、スポーツ、調理製菓、芸術、コミックアニメーション、IT、声優、芸能、美容、理美容国家資格取得コースから選択して学ぶことができる。これらのコースは、一つひとつがプロの講師陣で固められた専門性の高い授業であり、3年間を通して継続することも、毎年変更することも可能である。

 また、例えば美容コースの中のネイルだけ取りたいという生徒のために、1つの科目だけ履修ができるトライアル科目も設けている。

 総合的な学習の時間は、37講座の中から自由に選択できる。コース制と連動したダンス、ガラス工芸や陶芸、茶道、華道などの実技系講座と、漢字検定や英語検定、日本語検定の資格取得を目指す講座等を開講している。その他に、専門学校の先生から直接学べる歯科衛生士や歯科技工士の入門講座、バイオや化学の実験、スポーツ医療講座なども、全生徒が自由に履修できる。

 このような専門性の高い授業は、すべて卒業単位に認定される。好きなことで世界一になった人はいても、嫌いなことでなった人はいない。自分の好きなことは何か、得意なことは何かを判断する基準は、さまざまな経験を通じて養える。その中で見つかった好きなことを好きなのに苦しいくらい頑張ってやり遂げる。そのときにはもう、誰にも負けない強みになっている。

 普通科目では、工芸を除くすべての科目を開講し、数学や英語は中学校の復習から始まる入門の科目を設けるなど、生徒のレベルと興味・関心に合わせて選択できる幅を広くしている。体育のスクーリングにおいては、苦手意識を持つ生徒が多数を占めるため、体育館での球技を中心として、スポーツジムやゴルフの打ちっぱなし、ボウリング、ボクシング、スケート等の中から自分に合った運動ができるようにしている。登校スタイルも選択できる。大学のように自由に授業を組み合わせて登校するフレックス制、毎回同じクラスのメンバーと同じ授業を受けるクラス制、週1日に集中して登校する少人数制の土曜日選択制がある。また、個々の生徒の履修科目に合わせて開講している夏冬集中受講制では、例えば海外で生活をしている生徒などでも帰国中に高校卒業資格が取得できる。

これからの時代に
求められるもの

 従来までの知識・技能に加え、思考力、判断力、表現力が必要とされ、また主体性、多様性、協調性が問われる。通信制高校では、生徒の主体性を高め、積極性な学校生活を引き出す仕組みも重要となる。

 3年で30時間の参加が必要とされる特別活動は、本校では年間で100時間以上実施しており、抹茶工場や新聞社、博物館の見学、嵐山ウォーキングや鴨川クリーンハイクなどがある。こうした校外での学習のときに、1人で参加している生徒を集めて友人紹介を行うのは、オリター(オリエンテーションコンダクターの略)の生徒たちである。USJなどへの校外学習、毎年参加可能な修学旅行、清園祭(せいおんさい・生徒が名づけた文化祭の名称)などは生徒会が企画している。生徒たちが、他の生徒の友人づくりをサポートする。生徒が自分たちでしたいこと、行きたいところを考える。

 クラブ活動においては、5人以上集まれば、好きなクラブを新設することができるというシステムを採っている。人集めから企画書作成、部員同士の情報交換等もすべて生徒が中心となる。吹奏楽部は通信制高校で初となる全日本吹奏楽連盟に加盟しており、コンクールなどにも積極的に出場している。総合学習やコース制に連動したクラブも多く、茶道部、ダンス部、料理部、声劇部などがある。他にも、運動部ではテニス部、フットサル部、卓球部があり、文化部は軽音楽部、マンガ研究部、演劇部などが授業の空き時間を利用して活動しており、現在26のクラブが活動している。

 本校に在籍するかなりの生徒が不登校を経験している。今まで自分の望む学校生活を送ってこられなかった生徒たちは、ここでは自分が学校をつくる主体であるという自負のもと、さまざまな人間関係の中で、自分の意思を主張したり、相手の意見を聞いたりしながら、入学時に比べても見違えるように変身し、自信を取り戻している。

塾・サポート校との
これからの協力体制

 一部の通信制高校がサポート校に教育活動を丸投げしている実態が、昨今問題となっている。面接指導やレポート添削においては高校内で行われることが必須であり、サポート校ではあくまで自宅学習の部分をサポートするという区別を正確にしなければならない。

 自宅学習とは、例えば、生徒のレポート作成や試験対策、高校から提示された計画的・継続的な放送視聴などである。

 また、本校の進学コースにおいて、大学入試に特化した講師の派遣は予備校との提携で成り立っている。レベル分けされたクラスで1科目から履修できる。基礎学力のためのクラスから、国公立大や難関私大を目指したクラスがある。

 今年からは進学コースと中学生の不登校支援センター利用者のみが入れる新校舎を建設し、国語・数学・理科や英語科の教員を中心に各科目の教員が交代で常駐し、いつでも質問ができるラーニングコモンズのスペースを設けている。生徒たちはここを「かなえるカフェ」と呼び、利用者には無料で飲める自販機を設置している。

 これから国立大の定員の3割が、推薦やAO入試の枠になる。それに伴い、私立大学も増加していくことが予想される。知識量だけでなく、主体性、多様性、協調性を図るには、高校3年間でどんな活動をしたのかを小論文や面接で判断するということである。このような入試での合格者は、導入直後から「学力が低い」と批判を浴びてはいるが、海外のトップ大学の入試では、高校時代の活動実績評価は必須となっている。アメリカでは、ハーバード大学をはじめアイビーリーグと呼ばれる超難関大学へ入学するための活動実績を作るために、高い時給の家庭教師をつけている家庭も珍しくない。暗記中心の学力しか判断基準にしない日本の大学入試が、海外基準になってきているのである。

 本校では、単位として認めるものではないが、生徒が目標を見つけられるような具体的な活動や実践、地域のボランティアなどの課外活動を学校が支援し、学内での勉強だけでは経験できない活動を斡旋している。これまでの実績では、阪神淡路大震災の写真調べ学習、京都都市計画のフィールドワーク、身体障害者たちのスポーツをサポートするボランティア活動などがある。現在は、立命館大学との共同で小学生にピタゴラスイッチを教えるイベントを、生徒たちが大学生と一緒に企画、実践している。

 それを、「生きた経験」として対外的に伝えるための文章化も指導している。個別対応であり、時間がかかるが、推敲した文章を幾度も幾度も書き直させることで、その大学に入る動機や目標も明確化する。特に難関大学のAO入試を受験した生徒たちは、合否結果を問わず「書いてよかった」と感じている。このような卒業生の多くは、大学に入ってからの満足度も高く、高校時代よりもパワーアップさせた活動を学内外問わず、実践している。こうした文章化の作業は、大学での就職活動の際には必ず必要となる。大学に入ることを最終目標にさせない、大学生活を充実させる、そして、その後の就職等も見据えた指導方法として、自身の過去、現在、未来を文章化させることは非常に有効な手段である。それ以外にも、キャリア教育は個別対応が必須のため、本校ではカウンセリング体制を取り、4名の臨床心理士と、5名のキャリアカウンセラーの計9名のカウンセラーを配置している。

 今後、こうした課外活動の実績作りや小論文・自己アピール・プレゼンテーションの指導、キャリア教育などの分野で、サポート校や塾が高校とかかわり、そして大学や専門学校、企業など外部の組織を含めて相互に連携できるようになると、生徒たちの活動の幅は大きく広がるのではないだろうか。

通信制高校選びのポイント

 2015年以降、通信制高校といえば一部の学校の不祥事によって悪評が立ってしまっているものの、少子化の中、この10年の統計では全体の生徒数は横ばいから微増となっている。良い意味でも悪い意味でも、通信制高校に対する注目がこれほど高まったのは過去にはないと思われる。その分、選ばれる学校とそうでない学校の格差も広がっている。

 そんな中で、どのように通信制高校を選べばよいか。お金をかければ外見よく見せられるパンフレットやホームページではわからない。学校が健全に運営されているかどうかは、レポート内容や添削状況、授業の中身など具体的な情報公開がされているかを調べることが重要である。そして、一番必要なのは、実際に学校に行き、雰囲気を見ること、可能であれば、授業を体験し、在校生や卒業生に話を聞くことである。

 嬉しいことに本校では、たくさんの卒業生が頻繁に訪問してくれる。卒業した直後の生徒たちや、卒業後7、8年経ち、立派に社会人になった今の自分の話を聞かせてくれている。

 レポートのわからない生徒たちのために定期的に開いているレポート相談会には、立命館大学などに在籍している卒業生たちが、教員とともに学習指導のサポートをしてくれている。「自分を育ててくれた学校に貢献したいと思っている」という感想を聞いたり、つくばの教員を志望して、教育実習に訪れる卒業生を見て、この学校を創ってきて本当によかったと実感する。

 学校の方針、生徒の雰囲気、施設設備、具体的な学習生活がイメージでき、それが生徒本人に合っているかどうか。進学実績だけでは見えないところは、どのくらいの生徒が自分の夢を見つけ、その夢を叶えられる進路についているかというところであろう。どこまで時代が変化しようと、入試の方法が変わろうと、人と人がかかわりながら生徒が成長する場=学校であることは変わりない。

 我々教職員は、保護者、卒業生、そして、外部組織の関係者の方々と、在校生徒一人ひとりが確実に成長していける学校創りを目指していきたい。

市川 一彦氏プロフィール
大阪府庁職員、会計事務所員、一般企業勤務を経験した後、1985年に専門学校教員となり、通信制高校との技能連携に携わる。1993年、大阪の私立通信制高校設立にかかわり、約15年間勤務の後に2008年、つくば開成高等学校京都校の開設に関与する。
2013年に京都府より認可を受けた京都つくば開成高等学校内に設けた関西統括本部にて本部長を務める。

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