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中学・高校受験:学びネット

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2017/9 塾ジャーナルより一部抜粋

これまでの中学受験、これからの中学受験

  進学教室SAPIX小学部 広野 雅明  
     
 進学教室SAPIX(以下:サピックス)は平成元年に創業し、今年で29年目を迎えました。第1期生2教室・卒業生数311名からスタートし、今春の第28期生は47教室・卒業生数5,004名となりました。このサピックスの成長の物語にも興味深いお話はございますが、今回の趣旨には合いませんので遠慮させていただき、昨今の中学受験の変化について、私見を述べさせていただきたいと思います。

 ただし、私自身がサピックスという極めて狭い世界しか存じ上げませんので、内容は首都圏を中心とした最難関校受験に特化した特殊な内容で、さまざまな私学経営や私塾の戦略策定などに一般化できるような内容ではございませんので、あらかじめご了承ください。

1名あたりの
出願校数・受験校数の推移

 まずは中学受験市場の変化をサピックス小学部卒業生の受験動向を見ながら、概観を述べさせていただきたいと思います。小社の今春のデータと比較しやすい2001年の1名あたりの受験校数(出願校数)の変化を【表1】にまとめてみました。

 この2001年前後の入試トピックスを少し振り返ってみると、早実が2001年に国分寺に移転し、翌年、共学化、2000年に立教新座・2001年に獨協埼玉などが中学校を開設、2002年には早稲田などが2回入試に、2001年は東京女学館などが2科4科選択入試に移行する等々、毎年のように各校の入試改革が続いた時期でした。

 当時に比べ、現在は出願校数が1名あたり約1校増加しています。特に12月から1月9日以前の帰国生入試、地方校の首都圏入試、千葉県の専願入試などが非常に増加しております。また、1月10日以後の埼玉県の入試も2001年では受験者数が多い順に並べると@西武文理A開智B栄東C獨協埼玉D星野学園でしたが、2017年になると@栄東A浦和明の星女子B開智C淑徳与野D西武文理となり、埼玉県東部の学校の伸長が目立ちます。

 一方、1月20日からの千葉県の入試は受験校数が微減ですが、2001年当時は、20日市川・21日東邦大東邦・22日渋谷幕張などの3日連続受験の方がかなりいらっしゃいましたが、最近は体力的な面もあり、遠方の方の3日以上の連続受験が減りました。ただし、専修大松戸・芝浦工大柏などの常磐線エリアの学校の受験者が非常に伸びています。

 2月以後でみると入試の重心の変化が目立ちます。当時は当日発表の学校がまだまだ少数でしたので、3日に複数校出願し、1日の結果を2日にみて、その上で3日以後の受験を決めるご家庭もかなりございました。また4日以後もかなり受験者がおりました。

 現在では当日発表校、午後入試受験者の増加で、1日の受験率は100%を超え、サピックスの男子では約2割、女子では約3割の児童が午後も受験しています。学校サイドから見ますと、偏差値により学校の序列がついていますので、午前入試のみではなかなか上位の受験生が集まりませんが、午後入試の実施により、従来とは違う層の児童が受験しますので、大きなメリットがあります。また、上表に数字としては表れませんが、公立一貫校の参入も中学入試には大きな影響を与えています。当初は「適性検査」が従来の「2科目・4科目」とは異なることから、受験対策が難しいということで、併願を避けるご家庭が主流でしたが、難関校が「思考力・記述力」をベースとする出題をしていますので、公立一貫校との併願がさほど負担にならないことが浸透し、受験者が増加しています。そして、その影響で、今度はさらに「適性検査型」の入試を実施する私学の受験が増えつつあります。

 最近は各学校で公立一貫校型の適性検査型入試の他にも新しいタイプの入試が増加しています。この是非はここで論じるつもりはありませんし、優秀な受験生や志望順位の高い児童を確保するためには、「偏差値の序列」が壁になりますので、従来型の2科目あるいは4科目の入試ではなかなか難しいのが現実です。その際に従来とは違う角度で受験生を集めることはとても大切です。いろいろなタイプのお子様が入学すると、当然ですが、進学塾への通塾の有無、基礎知識の多寡、家庭学習習慣の有無、そもそも授業を受講したり、メモをとるなどの経験量の差がかなりありますので、各学校様には、入学後は綿密なフォローをお願いしたいと思います。

 また、今後は、小学校英語の正式な教科化が始まる2020年以後の入試に注目が集まります。市川中学校などが英語選択入試を導入し、慶應湘南藤沢も2019年度より、「4教科」または「国・算・英」の選択入試を導入することを発表しました。江戸川学園取手中学校は2019年度からは英語選択入試、2022年度からは英語を含む5教科入試を導入することを発表しています。このように英語受験を選択可能な学校が急速に拡大しています。ただし、現状でも中学受験の勉強が過負担なお子様にさらに英語を課すことはかなり厳しい状況かと思います。また英語を含む5教科入試の高校受験では帰国生の英語力での得点が、国内生との差をつけております。中学受験生、ご家族の負担を考え、英語の入試を導入するか否か、導入する際にはどのような出題にするかは、慎重に検討していただきたいと存じます。

トップ層に選ばれる学校の変化

 次に進学先として選ばれる学校の変化を今度は2007年との対比で見比べてみます。【表2】は、サピックス男子卒業生に対する各学校の男子進学者の割合を示しています。

 同じくこの前後の入試トピックスを少し上げますと2006年は慶應中等部1次が2月3日に移行、そして小石川など都立一貫校が開校し、青山学院が4科目入試に移行しました。2007年は法政大学・広尾学園・宝仙学園理数インターなどが校名変更・共学化、2008年には明大明治が調布に移転し、共学化しました。早大学院の中学開校は2010年です。

 本年度サピックス小学部卒業生で進学者の多い30校を10年前と比較しています。共学校は、慶應中等部・渋谷幕張・市川・東邦大東邦・渋谷渋谷・広尾学園・慶應湘南藤沢の8校、大学附属校が慶應普通部・早大学院・学習院・慶應湘南藤沢の4校となりますので、男子校・進学校がまだまだ主流であることがわかります。ただし、共学の進学校の伸びは非常に大きく、栄東・國學院久我山・都市大等々力・中大横浜・開智なども増加しています。難関国公立大・医学部などへの大学進学指導に定評のある海城・早稲田・聖光学院・浅野など、入試改革(入試日の変更)が成功した桐朋・本郷など、面倒見のよさに定評のある攻玉社・都市大付属などが増加しています。

 次に女子の状況【表3】を見てみます。

 まず目立つのは広尾学園・渋谷幕張・東邦大東邦・市川・昭和秀英と共学の進学校が激増していることです。30位以下でも栄東・國學院久我山・開智・三田国際などが増加しており、女子には共学の進学校に人気があることが改めて実感されます。またもう1つの特徴は豊島岡女子学園・吉祥女子・洗足学園・浦和明の星女子・鎌倉女学院など大学進学指導に定評があるまたは進学実績のよい学校の増加があります。その一方で以前は人気が高かった名門女子大の附属校が、一部を除き、人気が低下しています。難関大学の理系学部、特に医療系への進学希望が増加していますので、これらへの対応をいち早く実施し、その内容を保護者に周知した学校に人気が集まったとも思えます。

 中学受験は偏差値による序列化が進み、保護者の皆様はまず偏差値で学校を選ぶ時代になっています。お子様の偏差値を偏差値表に当てはめ、偏差値表を1月校から2月校に横にみて、その線の上下約5ポイントから10ポイントの間で学校を選ぼうとします。そのため、そもそもその偏差値に該当しない学校は検討の対象にもならないのが、「偏差値世代」の父母のご家庭の多くです。そのため、各学校が偏差値を上げるために入試改革(複数回入試や午後入試の導入・特待生入試など)・コース制の導入・新校舎建設・共学化・校名変更・大学の系属化などの取り組みをなさり、取り組みが保護者(あるいは塾)の支持を集めた学校が人気を上げ、注目度が低かった学校が人気を下げていると思われます。

 ただし、最近はこの反動として、「わが子に合う学校、オンリーワンの学校、面倒見のいい学校など」と偏差値によらない学校選びをされるご家庭も増えつつあり、まずは実際に説明会に参加したり、学校行事の見学をお子様とした上で、学校選びをされています。またご家庭の意識としても「トップ校の最下位」よりも「2番手校の中位」や「3番手校の上位」を望むようになっています。

 サピックス創業時と比べ、かなり偏差値表の順序が変わりました。30年に満たない時間で大きく変わりました。10年後、20年後を見据えて、その学校ならではの特色ある学校づくりをお願いします。

サピックス卒業生アンケートから
ひも解く保護者

 以下は今春の卒業生にアンケートを取ったもので、中学受験をする際にサピックス小学部を選んだ理由を答えていただいたものです【グラフ1参照】。このアンケートでは3つ選択していただきましたので、下記のように分散しましたが、以前、ある業者に依頼して、他社との比較をしながら、塾を選んだ理由を1つのみ回答するアンケートを実施した際は、「合格実績」が過半数を超える結果となり、かなり他社とは違いが生じました。

 サピックスをお選びになる方は、まずは合格実績に注目している以上、信頼される「合格実績」にしないといけないことを痛感します。合格実績のカウントは各社により基準が異なりますので、単純な比較はできませんが、サピックスでは、個別指導・通信教育・教材のみの児童・ネット受講者・特別講習生・テスト生は一切含んでいません。1学年100名弱のSS特訓生(日曜日のみを受講する児童)はカウントしていますが、これは低学年から在籍していますが、最終的にはご家庭のご方針で、6年の後期は日曜日のみにする児童が毎年約50名程度おりますので、カウントしております。もちろん6年生になって他社から転塾し、頑張る児童もおりますが、以前に比べ、かなり減少し、遅くも4年生からサピックスで頑張る児童が大半です。志望校別講座も特定の校舎ではなく、原則として各校舎で受講しますので、児童と保護者・講師が一体となって中学受験を応援しています。

 またサピックスでは特待生制度もありませんし、無料テストや無料講習も一切実施していません。児童・生徒募集や実績を増すために必要な手段ではありますが、あまりにも過熱すると多々問題が生じると思われますので、業界全体が「ブラック企業」扱いにならないよう、まずは在籍の生徒・保護者へのサービスの向上と講師の待遇改善もご検討いただければと存じます。

終わりに
少子化の進む中で、新しい市場を

 先日、ある都立特別支援学校の学習塾・出版社等の説明会に参加しました。平成28年度で障害のある児童・生徒は都内で1万2,372名で、そのうち知的障害のお子様が9,060名と東京都のHPには記載され、今後も増加する見込みと書かれています。都立の特別支援学校はこの10年間でかなり整備されつつあり、よりよい教育とチャンスを求め、最も高い学校では約1.6倍の競争になるようです。競争があればそこにサポートするものがあり、そこで新たなビジネスが生じると思われます。

 少子化の進展は労働力の減少・空洞化につながり、現在の都心部では外国人の方が多数就労しているのが現実で、今後とも増加する可能性があります。その中で日本の環境で育った障害のある児童・生徒にその適性が生かせる仕事をしていただくことは社会的に非常に意味のあることに思えます。

 今までの教育は「健常者」と「障害者」に2分し、どちらかというと後者を「特別視」していたように思います。ところが言うまでもなく、「障害」の程度は非常に個人差があり、「健常者」に限りなく近いお子様から、かなり特別な対応を要するお子様までいらっしゃいます。また、「障害」のあるお子様は、ご家庭の状況にかかわらず、どのご家庭でも授かる可能性があり、その際に保護者はかなり将来について心配されます。

 公教育ではその性格上あまり小回りの利く対応は難しいところですので、全体を2分するだけではその中間ゾーンのお子様には十分な対応が難しいと思います。ここに私学教育がお困りのご家庭やお子様をフォローする余地が大きいと思います。

 また厚生労働省は、「障害者の就労意欲は、近年、急速に高まっており、障害者が職業を通じ、誇りをもって自立した生活を送ることができるよう、障害者雇用対策を進めています。障害者の雇用対策としては、障害者雇用促進法において、まず、企業に対して、雇用する労働者の2.0%に相当する障害者を雇用することを義務付けています(障害者雇用率制度)」とHPに記載し、各企業も労働意欲の高いお子様を個々の企業に応じて、採用する努力をされています。

 前掲の特別支援学校はあくまで就労のための特別な学校であり、高等学校ではありません。今後は、学歴社会は崩れつつあるとは思いますが、今はまだ学歴が重要です。その際に私学が高校・短大・大学の卒業資格を付与しながら、ご本人の企業就労と各企業の採用義務のお手伝いをする余地はまだまだ大きいと思われます。

 少子化の進む日本のためにも有為な私学や私塾が新しいマーケットに参入を検討されることを期待しています。

広野 雅明氏プロフィール
 サピックス小学部で、創業期より現在まで、算数を一貫して指導。算数科責任者、教務部長、広報企画部長などを歴任。現在は教育事業本部の本部長として、情報・広報・新事業関係の諸部門を統括。

進学教室SAPIX
 平成元年に創業。小学部は開成・筑駒・桜蔭など首都圏の難関校では全国第1位の合格実績。思考力・記述力を育てる復習主義の授業形態には定評がある。グループ企業としては、大学受験の代々木ゼミナール、Y-SAPIX、高校受験のサピックス中学部・個別指導のプリバート・通信教育のピグマキッズくらぶなどがある。

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