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2017/7 塾ジャーナルより一部抜粋

小学校英語教育の完全実施について
いよいよ来年から先行実施スタート

  AJC全国学習塾協同組合 理事長 森 貞孝  
     

きっかけ

 2013年9月7日(日本時間9月8日)リオデジャネイロで開かれたIOC総会で2020年東京オリンピックの開催が決まった。

 同年12月、文部科学省はオリンピックに訪れる2,000万人の外国人観光客を想定して小学校から英語教育の完全実施を発表した。2008年に北京オリンピックの開催が決まって 2001年から中国で小学校の英語教育が実施されるようになったのと全く同じ経過をたどったのである。

 すでに隣国の韓国および中国で、低学年からの英語教育が実施され、効果を上げている中で、何らかの方策を行いたいと模索していた文部科学省にとって、まさに絶好の機会であったかもしれない。文部科学省は、「グローバル化に対応した英語教育改革実施計画」を12月に策定、具体化のために翌年2月26日、有識者会議をスタートさせた。11人の委員の中には民間から実用英語推進機構の安河内哲也氏と楽天会長の三木谷浩史氏、双日総研社長の多田幸雄氏が入った。私は、学習塾にも大きな影響があると考え、そのほとんどの会議を傍聴した。

英語教育の在り方に関する
有識者会議

 文部科学省本庁舎3階の会議室で、2月から9月まで、合計9回開催された。ここではグローバル化に対応した英語教育改革の5つの提言、@国が示す教育目標・内容の改善、A学校における指導と評価の改善、B高等学校・大学の英語力の評価及び入学者選抜の改善、C教科書・教材の充実、D学校における指導体制の充実等について議論が交わされた。

 グローバル化の進展の中で、国際共通語である英語力の向上は、日本の将来にとって極めて重要である。アジアの中でトップクラスの英語力を目指すべき。特にコミュニケーション能力の育成について、改善を加速化すべき課題が多い。東京オリンピック・パラリンピックを迎える2020年を見据え、小・中・高等学校を通じた新たな英語教育改革を順次実施できるよう検討を進めるとした。会議の中で一貫して言い続けられたのは、中学、高校、大学と10年英語を学んでも話せない。世界の共通語としての英会話力がアジアで下から2番目。今までの英語はリーディングとライティングがほとんどで、これからはスピーキングとヒアリングを加えた4技能のバランスの取れた学力を養う方向にしていきたいという意見が中心であった。

 小学校中学年では、活動型を導入し、コミュニケーション能力の素地を養うため、週1コマか2コマ程度。高学年では教科型とし、コミュニケーション能力の基礎を養うことを目標に、年間70単位、週2コマ相当とし、モジュール学習を活用しながら、合わせて週3コマ程度を確保するとしている。モジュール学習とは、10分とか15分の短時間学習のことで、すでに多くの学校で朝学習の形で取り入れているとのこと。

 また、小学校でも英語の成績がつけられることになるが、評価の取り扱いに当たっては、外国語学習の初期段階であることを踏まえ、語彙や文法等の知識の量ではなく、パフォーマンス評価等を通して、

・言語や文化に関する気付き
・コミュニケーションへの関心・意欲
・積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度
・「聞くこと」「話すこと」などの技能を評価することも考えられるとして、単語力や文法の知識のみで評価しない方向を打ち出している。

 小学校高学年で教科化する場合、学習効果の高いICT活用も含め必要な教材等を開発検証活用する。公立学校におけるICTの環境整備と活用は全国的には十分とは言えず、ICTの環境整備の充実を一層促す必要がある。

 小学校では、中学年と高学年の接続が円滑になされるのを前提に、

・中学年では主に学級担任が、外国語指導助手(ALT)や英語が堪能な外部人材とのチームティーチングを活用しながら指導する。
・高学年では学級担任が、英語の指導力に関する専門性を高めて指導する。合わせて教科指導を行う教員を活用することにより、専門性を一層重視した指導体制を構築する必要がある。

 また、小学校教員が自信をもって専科指導に当たることが可能となるよう、必要な研修を充実するとともに、「免許法認定講習」の開設支援等による中学校英語免許状取得を促進する。なお、教員免許を有しない者のうち、十分な英語力・指導力を有する人材を、特別免許状を積極的に授与した上で活用するとともに、英語が堪能な地域人材や英語担当教員の退職者等を非常勤講師として活用する方策を講じることも検討する。2019年までにすべての小学校でALTを確保できる条件を整備する。

有識者会議を振り返って

 文部科学省関係者、学校関係者が100名前後傍聴する中で、会議は進められた。文部科学省からは、局長やかかわりのある部署の課長や担当者が、常時メモなどをとりながら出席していた。事務方は初等中等教育局外国語教育推進室の円入室長が務めた。

 すべての資料は、傍聴者にも配布されたが、「小・中・高を通じた目標及び内容の主なイメージ」という別添資料がある。A3の裏表のもので、その中の1目標の小学校高学年のところは、

@自分の考えや気持ち事実などを、聞き手を意識しながら初歩的な英語で伝えることができる。
A聞いたことに相づちを打ったり、感想を言ったりすることができる。
B与えられたテーマにについて、初歩的な英語で簡単なスピーチができる。

の3つが掲げられている。全体を通して話せる英語に重点が置かれ、小学校終了時までに初歩的な会話ができ、中学の英語につなげていく。もはや、従来型の英語指導を繰り返していくことはできないと感じた。

 なお、余談になるが、小学校英語の増えた授業を現行の総時間数について全体の授業時間数が増えるのかという問題について教師の負担が大きくなる、増やさない場合は他の教科の時間数が減らされることになりはしないか、などといった発言があった。また小学校の指導を中学で生かす、中学校から高等学校へ英語教育の連携をする話が出たときに、一つの学校の中でも、十分英語の教師同士が話し合っていないのに、そのようなことが可能なのかという疑問を呈する発言もあった。

 文部科学省としては、オリンピックの2020年にスタートするのではなくて、少しでも早めに準備して前倒してスタートをしたい意向が強く、2018年の先行実施に向けて準備を進めている。

東京都英語教育戦略会議

 昨年(平成28年)10月17日、東京都庁第1本庁舎42階北側特別会議室で、東京都教育委員会から、例年通り翌年の都立高校入試について説明を受けた後、「東京都英語教育戦略会議」の報告書が発表されたことについて説明を受けた。

 文部科学省が平成25年12月「グローバル化に対応した英語教育改革実施計画」(既出)を立ち上げると、翌年2月「都立高校改革推進計画新実施計画」を、さらに4月に「第三次東京都教育ビジョン」を策定し、「東京都英語教育戦略会議」をスタートさせた。座長は、初年度は教育監の高野敬三氏が務めたが、26年からは文科省の有識者会議の座長である上智大学教授の吉田研作氏が務めた。

 英語教育戦略会議は、平成25・26年度の構成員は、学識経験者6人、産業界等有識者7人、学校関係者3人、教育庁関係者9人、28年度は外部有識者学識経験者3人、学校関係者2人、教育庁関係者5人であった。平成28年度は、小学校を英語の教科化への対応と戦略会議の報告書のまとめが主力であったため、2回会議が開かれただけであった。

 会議は平成25年度5回、26年6回、27年は小学校英語の教科化に向けた国の動向を注視することで検討委員会を行い、28年度2回の合計13回行われた後、報告書を作成した。

 具体的には、英語教育の推進およびグローバル人材育成のための具体的な方策として、@使える英語力の養成に向けて9つの提言、A指導力向上に向けての4つの提言、国際理解の深化と世界に貢献する意欲の育成に向けての11の提言、その他の4つの提言を合わせて28の提言を行った【表1参照】。

 そして、平成26年度から次々に取り組みを開始し、着実に準備が進んでいる。

 具体的に例を挙げれば、平成28年度から2年間10地域を英語教育推進地域に指定し、区市町村教育委員会の英語教育にかかわる取り組みを支援している。10地域とは、目黒区、世田谷区、荒川区、町田市、日野市、東村山市、福生市、羽村市、あきる野市、西東京市。さらに英語教育推進地域を含めた25地区に38名の英語教育推進リーダーを指定し、外部人材の効果的な活用やカリキュラム開発、ICTの効果的な活用等に関する研究を行っている。

 10地域以外の英語教育推進リーダー配置地域は、中央区、港区、文京区、墨田区、江東区、品川区の6区と、八王子市、青梅市、昭島市、国立市、狛江市、清瀬市、武蔵村山市、多摩市、稲城市の9市である。また小学校教員の中・高等学校英語科免許取得を促進するため、平成28年度から、免許取得に係る経費の支援を開始している。

 具体的な区や市の名前を見ると、東京都は区部よりも市部に先行実施地区を持って行こうとしているように見える。

 この例に見られるように、具体的な行動が次々と進んでおり、平成30年度の先行実施に向けて着々と準備していることがうかがえる。

 オリンピックが開かれる東京都での英語教育に関する対応であるため、次々に手を打ち続けている。そしてこれを各県の教育関係者が細かく注視している。

英語村(仮称)の設置へ

 東京都は昨年3月、英語村事業募集要項を発表し、8月に3件の提案書を受け付けた。

 3グループの提案について、書面による一次審査並びに提案書およびプレゼンテーションに基づく2次審査の結果、最優秀事業応募者として、学研ホールディングス、市進ホールディングス、博報堂を中心とした5社のグループに決定した。場所はゆりかもめのテレコムセンター駅の近くにあるタイム24ビルの約7,000u。1日当たり最大収容人数約1,300人とし(650人×2回転の場合)、各グループ6名から8名につき1名のイングリッシュスピーカーをつけてプログラムを行う。主な利用対象者は小学生から高校生までの学校団体での利用を想定している。事業開始は平成30年9月を予定している。

先進韓国・中国の
英語教育について

 韓国が国家戦略として小学校に英語教育を導入して20年。中国がオリンピックを契機として小学校英語をスタートさせてからも17年経った。そしてそれぞれの国で、小学校に英語を導入したのをビッグチャンスと捉えて、続々と英語指導を中心とした企業が急成長し、従来型の学習塾が淘汰されつつある。中国では、新東方教育科技集団というお化けのような巨大な学習塾に、200万人を超える生徒が通っている。今までの20年の隣国の激変の波を、これから日本の学習塾はどのように受け止めるのか。

当全国学習塾協同組合の
対応について

 小学校に英語教育が完全実施されるという指導内容の激変に向けて、2014年から徹底的に内容をチェックし、韓国・中国の指導についても研究してきた。韓国の公立学校の英語の授業を参観し、英語村に組合員の塾の生徒を送り込んだ。韓国、中国、台湾、香港、フィリピンなどの英語教育施設を訪問し、現地の先生たちと話し合ってきた。英語教育の現状と方向性については、14年末に、幻冬舎より拙著「英語ショック」と題した新書を刊行。都内では50ヵ所近くの図書館で購入されている。さらに当組合が監修して、15年4月から17年3月まで小学校英語用DVD教材24巻を製作、創立25周年の特別キャンペーンとして本年4月より組合員には無料で配布を始めた。最も効果があるといわれるモジュール授業に着目し、話せる英語を目指した教材だ。

 話せる英語といっても、英会話ができればいいという内容のものではなく、学校での成績評価を見据えた教材がよいことは当然のこと。組合員である学習塾の生き残りと発展を願って、今後とも積極的に英語教育改革の最前線に立って、旗を振り続けていくつもりだ。またこの際、多くの学習塾に組合員として加入していただき、組合で作成したDVD教材も活用して、自塾を大きく発展させるチャンスとなるはずだ。

 来年4月、先行実施が始まるときに、ある程度の生徒数と実績を積み上げていきたい。小学校への英語教育導入はプラス思考で、追い風ビッグチャンスと捉えて、学習塾の先生方に言いたい。「思い切りぶつかってみないか」。

森 貞孝(もり さだたか)氏プロフィール慶應義塾大学経済学部経済学科卒業
全国進学指導協会・事務局長、会長、私塾協議会・会長、公益社団法人全国学習塾協会・副理事長、理事長を歴任。現在、全国学習塾協同組合・理事長
[現職]  全国学習塾協同組合・理事長、私塾三田会・顧問、株式会社日進研・名誉会長

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