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中学・高校受験:学びネット

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2016/3 塾ジャーナルより一部抜粋

ズームアップインタビュー この人に聞く115
21世紀型の寺小屋授業で躍進中
インターネットを通じて世界市場へも

     

岡村ゼミナール株式会社
代表取締役会長 岡村 寛三郎さん

 兵庫県姫路市を中心に播磨一帯に30の教室をもつ老舗の岡村ゼミナール。開塾から44年。長らく小・中・高生を対象として指導してきたが、ここ数年は幼児教育にも力を注いでおり、3年前に「学童保育:OKAMURA Kids World」を開設した。英会話、速読を手始めに、昨年3月には早期知能開発「ACE Kids Academy」を立ち上げ、珠算と習字の教室もスタート。中でも珠算教室は評判を呼び、わずか半年で損益分岐点を超え、黒字となった。伝統的な「読み・書き・そろばん」を21世紀の教育に合うようにアレンジした講座。その成功のカギは何なのか? 会長の岡村寛三郎氏にインタビューを行った。

計算能力の向上だけではない
そろばんが秘める高度な能力

── 早期能力開発スクールACE Kids Academyは、現在何校あるのでしょうか。

岡村 19校まで増えました。3月には赤穂と相生駅前にも開校します。珠算部門だけでも、昨年末時点で生徒が350名を超える勢いで、現時点では18名の講師スタッフを抱えるまでになりました。スタッフ3〜4名単位で、受け付け・名簿管理、テスト問題作成、採点業務などのチームを組んでいます。

 そろばんは英語でアバカスと言い、習字はカリグラフィーと言いますが、それらの頭文字に英語Englishの頭文字を続けて、ACEと名付けたんです。読み・書き・そろばんと聞くと寺子屋などの古いイメージを持たれるでしょうが、本校はそこに現代的な学習塾のノウハウを加味しています。いわば、21世紀型の寺子屋。伝統と最新のハイブリッド方式が特徴です。

── そろばんの授業を見学させていただきましたが、生徒さんの集中力がすごかったですね。

岡村 年少から受け入れているので、3歳の子もいます。授業は少人数制で、多くても20人まで。一般のそろばん教室のように集団一斉式指導はしません。講師が教室内を回り、生徒一人ひとりに沿った指導をしています。検定試験も通常は10級からですが、年少でも始めやすいように20級から細かく設定しています。実力に合った教え方をしているので、落ちこぼれる子もいません。同じ兵庫県に小野市という町があるのですが、古くからのそろばんの産地なんです。入塾した生徒さんには、その小野市で製造された、使いやすくて丈夫なそろばんを贈っています。

── なぜ、そろばん教室を導入したのですか。

岡村 44年前に学習塾を始めましたが、そのとき、実はそろばん教室をやりたかったのです。でも当時は、業界の全国的な団体である日本珠算連盟、全国珠算連盟に加入しなければ教室が開けない状態でした。閉鎖的といってはなんですが、そういう時代だったのです。でも、それが良かったのかもしれません。小・中・高生を対象とする学習塾でノウハウを積んできたので、子どもたちに何かを教える技術にかけてはどこにも負けないと自負しています。

── 珠算検定の記入内容を変更させたと聞きました。

岡村 珠算検定は全国各地の商工会議所が主催する「オープンスタイルの検定」です。誰が受けてもかまわない。ところが、長らく「所属教室」を記入する欄がありました。時代にそぐわない習慣ですし、日珠連や全珠連所属教室の生徒と、そうでない生徒間で何らかの差がつけられるのでは? という危惧を受験者にもたらすと思いました。そこで昨年秋、思い切って、姫路商工会議所に直訴したんです。そろばん業界の盛衰の歴史を振り返りつつ、古くからの制度を改めて、真に平等で公平な検定試験が行われるようにと担当者宛に手紙を書きました。そうしたら1ヵ月後、会議所の幹部職員が来塾して、「おっしゃるとおりです。受験生の所属教室名の記入欄は削除します」となりました。事の成り行きを心配する周囲からは、そろばん業界に喧嘩を売るようなことはしないでほしいと大反対されましたが、誰かが古い体質を改める行動を起こさなければ、そろばん市場は広がらない。そういう思いで動いたのです。

── そろばんの良さはどんなところにありますか。

岡村 そろばんは計算能力を高めるものだと一般には認識されています。でも、富士山に例えるなら、計算力や暗算力は頂上の一部に過ぎません。教室の様子を見てもわかるとおり、集中力、記憶力、忍耐力も鍛えてくれます。より上級に挑戦する心、計画性、熟慮など精神的な要素の強化も同時に行っているんです。これらの要素は富士山で言うなら裾野にあたります。

 珠算検定1級の問題に「見取り算」というものがあります。10ケタの数字を足し引きするのですが、1問の字数は100字。これを平均60秒以内に計算しなければなりません。そろばんの珠を弾く回数は130〜170回で、そのうち1回でも間違えれば、誤答になる。それぐらい集中力を要します。単なる計算技法ではなく、人間としての基盤を養うと言ってもいいでしょう。それと、そろばんは指を使います。まず体で覚える。理屈は後からついてくる。身体性を伴ったものは確かな技となって、年をとっても忘れない一生の宝物になると思います。

この春、e-ラーニングをスタート
まずはアジア市場への進出を目指す

── この4月からe-ラーニングにも乗り出されるとか。

岡村 昨年、e-ラーニング専用のスタジオを開設しました。設備投資に600万円ほどかかりましたが、今後、間違いなく必要になるものだと判断したのです。

 というのも、塾というものは実際に通うのが最善ですが、そのためには生徒が自力で通える場所に住んでいなければなりません。遠方からの通塾者のためにスクールバスを用意している塾もありますが、運転手の確保やその人件費などの手間や経費を考えると、難しい側面もある。今後はますます共働きのご家庭も増えると思いますので、保護者の送り迎えに頼るのも厳しい時代になるかもしれません。

── ということは、e-ラーニングで在宅授業も行うのですか。

岡村 その予定です。でも、インターネット通信教育だけで初心者の指導をうまく行えるか、わかってもらえるか。実力を上げることができるかという課題もあります。その解決法のひとつとして、月初めの土日連休や春・夏・冬休みを活用し、短期通塾スタイルもしくは、合宿スタイルで「個別指導のスクーリング」を実施しようと考えています。もちろん、インターネット制作用スタジオ内で最新の機器を使うので、準備も大変です。私を含め、スタッフには誰でも簡単なコンテンツなら制作できるように、慎重に準備や勉強を行っているところです。

── 教室数が多いので助かりますね。

岡村 授業はもちろんですが、講師の勉強や社内会議にも活用したいと思っています。そろばん教室に興味を持つ他塾さんは多いのですが、どこも講師の育成に悩んでおられる。そろばんはできても指導力のない人も少なくはありません。ならば、わかりやすい指導法のコンテンツを作れば、講師の育成にも役立つはずです。また、うちは教室が広域に散らばって30もあるので、講師やスタッフが一堂に集まる機会が少ない。そういうときにインターネットを活用して会議や情報共有をできればと思っています。

── インターネットで発信すれば、海外でも学ぶことができそうですね。

岡村 そうなんです。近い将来、海外へ発信したいと構想を練っています。そろばんは東洋の文化でして、アジア諸国では盛んです。ベトナムでは1万人の生徒を有する教室もあるほど。アメリカへも輸出されていますし、ハンガリーでは授業にも取り入れられています。そういう国でも、そろばん教育用の映像コンテンツは、まだ導入されていません。ビジネスとしても非常に成長力のある分野だと考えています。そのためには人材も必要ですが、私自身が国家資格としての通訳案内士でもあるため、多くの種類の外国語に堪能な友人や仲間も多く、彼らの協力を得つつ、そろばん講座を世界に広める社会貢献を考えています。

医療通訳士養成事業を経て
幼児教育の大切さを実感

── 会長ご自身は「学習塾」からは手を退いておられるとか。

岡村 今70歳ですが、60歳のときに定年退職ということで、岡村ゼミナールの社長は引退しました。今は、長年にわたって当社に勤務してきた江木和夫先生が後継社長となり、私は会長という立場です。社長業の引退後、実は東京へ行き、以前から興味をもっていた通訳案内士の団体の運営事業を始めました。賛同者も多く集まり、東京通訳アカデミーという語学の専門家養成学校を立ち上げたんです。以後10年間、通訳士養成という仕事に打ち込みました。私自身も医療通訳という分野に興味を持ち、徹底的に勉強し、医療通訳士の資格を取得したんです。現在は、その養成学校を引き継ぐ団体として、政府の2省から認可を受けている語学界で唯一の「協同組合クラブ・メディカル・ツーリズム・ジャパン」の理事長として、医療現場で活躍する高度なレベルの専門通訳士を育成しています。

── 幼児教育へとシフトされたのはなぜでしょうか。

岡村 今、学習塾は垂直・水平展開と、行くところまで行っています。となると、あとは幼児しかいない。言うなれば「川上作戦」です。また、珠算や習字、英会話には明確な卒業学年がありません。だから、何年も在籍してもらえる可能性が高い。幼児から入塾してもらえれば、やがて学習塾部門へと進級していくようになるので、運営面でも継続性や安定性が高い事業分野になります。そういう経営的な理由もありますが、ここ数年、学力の低下や学習指導要領の改訂、大学入試改革など日本の教育が劇的に変化しています。そういう環境にも決して左右されない確固たる学力基盤を作るためにも、幼児期からの能力開発は必要不可欠だと思ったからです。

── 日本の伝統を新しい形で継承していくのですね。

岡村 そうですね。とにかく珠算は大いなる可能性を秘めている分野です。例えば、発達障害などハンディキャップを抱えている子どもたちにも適しているんじゃないかと思っているんです。もちろん医療や福祉方面へ進出するには、私自身が専門的な勉強をさらにしていかねばなりませんが、そういうアイデアは常に持っています。

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