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中学・高校受験:学びネット

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2015/9 塾ジャーナルより一部抜粋

中学受験ブーム続く

  未来教育研究機構 理事長 樋口義人  
     
 この度、文部科学省主導で、明治の国民皆教育など近代教育制度の制定、戦後の米国式教育の導入に匹敵するくらいの大きな教育改革が行われようとしている。時代の要請もあり、小学校から大学までのこれまでの知識・技能を中心とする教育から、思考力・判断力・表現力を評価する教育へ変わろうとしている。これに伴い、中学受験も大きく変わろうとしている。

首都圏の中学入試の
受験生が増加

 2007年のピーク後、7年連続減少していた中学入試の受験生数が、今春は一転して増加した。来春以降もこの増加傾向が続きそうである【グラフ1参照】。

 去る7月6日に実施された首都圏模試センターのテストでは、前年比6年生が3.2%増、5年生が21.9%増だった。一方、首都圏でトップの生徒数を誇る進学塾では、通塾生が1,000名以上も増加しているとのこと。このように、今後の中学受験生数の増加が見込まれるのである。

 これは、何よりも小学生の受験生を持つ保護者の情報に対する、敏感な反応の結果といってよいのではないかと思う。今や小学生の保護者の一番の関心事は、2020年から始まる「大学入試改革」であり、それに対応している学校の情報である。講演会とか個別相談会の質問の多くが大学入試改革についてであり、それへの対策である。

 私立中学校は、アクティブラーニングなど21世紀型の教育を実施し、2020年の大学入試改革にも充分に対応しようとしている。つまり、私学のほとんどが21世紀型の教育を行いつつあり、保護者の私学に対する期待が高まってきている。

 公立中学・高校では、そういった新しい教育や2020年の大学入試改革については、ほとんど触れられていないし、対応も遅れるのではないかと言われている。『教育課程変更の自由度が高い私立中高一貫校が有利になる恐れがある。(2014.12.23毎日新聞)』とマスコミでも報道された。

 これが、今春の受験生が8年振りに増加した要因の一つである。

大学入試の大改革

 2020年から始まる大学入試の改革についてみてみよう。報道などですでにご案内の通り、「大学入試改革と、高校教育の改革、大学の教育改革」の一体的な改革を目指している。

 文部科学省は、『義務教育段階の取組の成果を発展させ、高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜を通じて、「知識・技能」のみならず、「知識・技能を活用して、自ら課題を発見し、その解決に向けて探究し、成果等を表現するために必要な思考力・判断力・表現力等の能力」(以下「思考力・判断力・表現力」という)や主体性をもって多様な人々と協働する態度(以下「主体性・多様性・協働性」という)などの真の学力の育成・評価に取り組むこと』と発表している。

 グローバルな時代を迎え、多様化の進む世界が求める力が必要であり、その養成が叫ばれている。知識・技能プラス思考力・判断力・表現力が重要であり、予想外の変化に即座に対応する臨機応変の力が重要になる。そして、目標を自ら見出せる「主体性」、多様な人と相互に学ぶ「多様性」、「協働性」が重要としている。

 これを踏まえて、大学入試改革『高大接続システム改革』についての検討が始まっている。現行のセンター試験の変わりに、「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」などの導入で、充分な知識・技能、充分な思考力・判断力・表現力を評価しようと考えられているのである。つまり、今までのように知識・技能を中心にしたペーパーテストの得点のみで選抜したり、マークシート方式から変えて、記述式などを挿入するテストの導入が検討されている。

 そこで、大学・高校以下に、主体性を持ち、能動的に学ぶ「アクティブラーニング」を導入して、教育の質的転換を図ろうとする動きが急展開し始めてきている。このように、大学入試改革と平行して学校教育のありようも大きく様変わりしていく。

 これらが、この度の教育改革の概要である。

保護者の意識が変わる

 保護者の意識変化が、中学入試の流れを変えようとしている。不確かな世を迎えて、教育への期待値が従来とは違ったものになりつつあると思う。「御三家(麻布・武蔵・開成・桜蔭・女子学院・雙葉)神話からの解放」、「脱偏差値」と言ってもいいような学校選択が始まっているのである。

 大学受験でも、中学受験でも、必ずしもトップ校を狙わずとも、卒業後に有意義な人生が送れるような素養と生活力を備えてくれる学校を選択しようとしてきているのではないかと思われる。偏差値が受験生の能力のうち、わずか30%しか評価していないとも言われている。

 余談になるが、埼玉のトップ校の中学入試の例では、入学試験の上位で合格・入学してくる、ある特定の塾の生徒グループが、中学1年生の終了時には2番手以下にランクされてしまうような状況があると聞いている。極端な入試対策・偏差値対策に専念し過ぎたために、伸び悩んでしまっているといえる。

 今回の文部科学省による改革は、このような知識偏重の受験対策を優先する教育を排除しようとしていると考えられる。

 中学入試では、志望校の大学実績が大事な要素であることは従来通りであるが、その大学実績が必ずしもトップ大学が多くなくてもよいと考えているようである。例えば、MARCH(明治・青山・立教・中央・法政)レベルへの実績が確認できれば、中学受験ランクが中堅でも、その教育環境に満足できて、21世紀を乗り切る力を備えてくれそうな中学校であれば、入学するという受験者層が現れてきた。

 下表の通り、公立高校より私立高校のほうがMARCHへの進学実績が高いことも、中学入試の人気になっている要素とみてよい。さらに、私立高校からは早慶上理(早稲田・慶応・上智・東京理科大)の合格実績を加えると、50%を超えていることもわかる【表1参照】。

 今春、都内の高校や中等教育学校から、「早慶上理」や「GMARCH」「日東駒専」に合格した件数を学校ごとにまとめ、各校の卒業生数で割って求めた平均占有率。これらの大学に1件以上合格のあった学校は、全部で380校。

中学入試最新情報

 2016年の中学入試の動向が刻々と明らかになってきた。

 男子の台風の目は、2月2日に桐朋中が2回目を新規に実施するということだ。そのため、2日の男子校で合格ラインのダウンが予測されている主な中学校は城北A、本郷A、攻玉社A、世田谷A、明大明治@(男子)などである。ただ、今後の志望動向次第で変わる可能性がある。

 女子校の入試日程が、昨年のサンデーショック入試のゆり戻し(今春、例年の2月1日を2日に移動した中学校、例えば、女子学院、立教女学院・東洋英和などが1日に戻る)になるため、全く新たな入試地図になるので、今後の志望動向を注視したい。また、伝統校の人気復活が注目されている。今春、昨年までとは逆の志望動向がみられ、話題になった。それは、例えば、田園調布学園、三輪田学園、佼成学園女子などのように一見地味な伝統校の人気が復活してきている。

 一方、中学入試の多様化にはすさまじいものがある。適性検査入試、英語で受験できる入試、面接・作文入試などと従来の4教科(国語・算数・社会・理科)または2教科(国語・算数)入試が定番だった入試が様変わりしてきている。

 適正検査入試は、これまで都立一貫校との併願者層を狙っていたが、最近は素質があり、伸びる要素のある生徒確保が主流になりつつある。

 そして、最も深化しているといえるのが、光塩女子学院、来年から実施される品川女子学院、共立女子、十文字などの「総合型入試」で、記述型入試になる。

 グローバル時代に、英語が文部科学省でも小学校の教科になるということなどを受けて、中学入試でも英語を入試科目に導入する中学校が増えている。東京都市大付属、山脇学園、大妻中野などの多くが実施する。

 そして、中村中のポテンシャル入試が話題だ。潜在的な能力を評価しようと、従来の中学受験生とは違った活動をしてきた、スポーツや習い事にいそしんできた生徒を受け入れようとする入試である。遅い時期に、中学受験を思い立った生徒にも受験機会を与えようとする動きで、今後も増えると予測されている。

 海城中のように、21世紀の教育を標榜し、着々と成果を上げている中学校があると同時に、国際バカロレアのプログラムの導入を計画している開智日本橋学園、昌平中学校、鶴見大学附属などで、一挙に国際化が進められそうである。文化学園大学杉並中学は、日本で唯一、カナダの州と提携して、日本と海外両方の卒業資格が得られる「ダブルディプロマ」コースが設定される。欧州、カナダ、米国、日本の大学受験が望める、非常に進んだ形態の学校の誕生である。

 最後に、来年の入試で、最も話題になる中学校の一つに、清宮幸太郎選手が高1に在籍している早稲田実業中等部になる可能性が大である。

 教育の流れの変化を迎えて、中学入試が今までの価値観では判断できない様相を帯びてくると考えられる。このような時には、適格な情報をもとに、むしろ大きく構えて地道な努力の積み重ねが実を結ぶと思う。より良い選択と受験を祈念する。

樋口義人氏プロフィール

1942年生まれ。
未来教育研究機構(NPO法人申請中) 理事長
潟\ニー・グローバルエデュケーション シニアアドバイザー。
中学受験界でのキャリアは40余年にわたり、私立中学受験の大衆化に尽力した業界の“重鎮”である。「日能研」退社後は「首都圏中学模試センター」代表取締役などを経て、現職に。この度、「アクティブラーニング」などの研究、教育現場への提言などを行う機構を設立した。
長年の経験と実践に裏打ちされた厳しい提言は、中学受験界の“良心”として多くの支持と信頼を得ている。
著書は『中学受験の常識・非常識』(角川oneテーマ21)、ドラッカーに学ぶ受験マネジメント『がんばれ、さくら!』(遊行社)など。

[連絡先]
未来教育研究機構 理事長 樋口義人
〒169-0075 東京都新宿区神田神保町高田馬場3-25-3
http://feblab.com
e-mail:yoshitov@polka.ocn.ne.jp

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