医療系学部はやや癖のある大学が多く、情報も少ないため、塾のサービスとして取り入れにくいものだと思います。しかし、昨今の入試データから、受験生の多くが医療系大学に興味を持っていることがうかがわれます。この連載では、医療系学部の市場についてできる限り解説し、先生方の塾に医療系大学のコースを作るための一助となることを目指します。
第一回は、医学部を除く医療系学部、歯学部、薬学部、看護語学部、理学療法・作業療法等(リハビリ)に加えて獣医学部の市場環境と受験者数動向について解説します。
団塊の世代が後期高齢者となる2025年まであと10年となり、医療界はますます改革の速度をあげています。
ご存知のとおり、財政は逼迫しており、これまで通りの福祉財政を維持することは不可能に近い状態です。一部で頼みの綱と言われている個人預金は約1400兆円と言われていますが、それらのほとんどは個人ローン、国債、外債、企業への貸付に使われてしまっており、実態がありません。
このような中、少子高齢化は着実に進んでいて、2013年には2.5人の現役世代(15~64歳)で1人の高齢者(65歳以上)を支えていたものが、2040年には1.5人の現役世代で1人の高齢者を支えることになります。高齢者の実数も増え、2025年には3,657万人に達し、2042年には3,878万人でピークに達すると予想されています。
このような財政破綻状態で生じる超高齢化社会に対処するために行われているのが医療改革です。
高齢者医療は従来の医療とは異なり、機能の完全回復を目指さないという特徴があります。語弊があるようですが、老化現象によって身体の機能が衰えていくため、無理に回復を目指すのは患者にとって不幸な結果になるのです。
しかし、そのような高齢者をどこに収容するのか、また、誰がその面倒を見るのか、という問題が生じます。病床数が限られているため、病院の療養型病棟に、入院期間が長期化する(場合によっては亡くなるまで入院させる必要がある。)高齢者を収容し続けるのは不可能です。
そうすると、特別養護老人ホームや老人健康保険施設などの施設に高齢者を収容することになります。
このような施設は今後多数建設されることが予想されますが、全ての施設に医師を配置するのは、医師数から考えても不可能でしょう。また、コストが高くなりすぎてしまいます。そこで、看護師の数を増やし、さらに特定看護師という制度を作って医療行為の一部を看護師に割り振ることによってこの現状を突破しようとしていると考えられます。
最後は私の予想でしたが、これからは、今以上に多くの看護師が必要であることは間違いなく、看護師を養成する大学の数は年々増加しています。2013年・2014年だけでも20校(定数約1600名)が新設されました。現在も6校の大学が設立認可待ち、あるいは開校準備中です。【表@参照】
受験生の側からも、これから需要が見込める国家資格に興味を持つのは当然であり、多くの学生が医療関係学部を目指しています。
このように、需要と供給がうまく噛み合っているため、少子化で受験生の総数が頭打ちになっているにも関わらず、医療系学部には多くの受験生が集まっているのです。
次は、この3年間の各学部の志願者数変化と倍率、難易度について表にまとめたものですが、どの学部も受験者数が右肩上がりになっていることがわかります。
歯学部の受験者数はこの3年間で1.5倍に増加したものの、大学の数は変化していません。そのため、倍率が徐々に増加し、難易度も上昇しています。私立大学は比較的合格しやすい反面、国立はセンターで80%の得点率が必要な難関大学なのが特徴です。【表A参照】
薬学部は歯学部以上に国立と私立の難易度の差がある学部です。国立のセンター試験得点率は85%が必要で、地方国立大学の医学部よりやや低い程度です。このレベルの試験は、受験者数の変動が少ないという特徴があります。薬剤師になりたいからといって、気楽に受験できる大学ではないのです。逆に、私立は偏差値50台前半と比較的受験しやすいため、受験者数が増加し、倍率が上昇しています。【表B参照】
看護学部は、看護師、理学療法士等のリハビリ職のどちらも同じで、国立、私立とも偏差値50程度と受験しやすいレベルであるため、受験者数が増加しています。しかし、大学の数が増えているため、倍率はほとんど変化していません。【表CD参照】
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