社員からの発案で
学習塾事業をスタート
IT企業のイーブレインが学習塾事業をスタートさせたのは2002年。きっかけは学習塾経験のある社員からの申し出。「自分の考えている教育を実現するため、再度、学習塾事業にチャレンジしたい」と発案したのは、現在『個別指導のone塾』塾頭・武藤宏明先生だ。
「当社の経営理念は『社会の発展に貢献できる仕事を通して利益を追求し、社員一人ひとりの自己実現のために最大の努力をすること』。社員の夢の実現を応援することを宣言しています。『じゃあ、君の夢を叶えるために協力しよう』というのが始まりでした」とイーブレイン代表取締役の川名一弘氏。
社員の力を最大限に引き出す方針は、one塾の教育理念にも共通している。
同塾では「自ら学ぶ力の育成」を最も重視。「子どもたちの学ぶ力を引き出すのが私たちの仕事であり、テストの点数を上げることだけが目的ではありません。限界を決めず、困難を乗り越えられる子どもを育てたい。学習塾ではありますが、あえて教えすぎないようにしています」と川名氏は語る。
同塾のコンセプトは「公立高校受験の専門塾」。アルバイト講師はおらず、すべて正社員のプロ講師であることが大きな特徴だ。1教室1人の講師が担任として教室を運営。講師1人に対し1コマ最大6人までの個別指導のスタイルで、定員制をとっている。
実は入塾を希望してもすぐには入れない。無料の体験授業を3回受けないと入塾許可を出さないのだ。塾側はこの間に生徒の習熟度を把握。その生徒に合ったカリキュラムを作成し、さらに生徒とその教室の講師と合うかもチェック。1教室1人の担任制のため、合わないからといって、講師をチェンジすることはできないからだ。
「入塾をお断りすることもありますが、それは学力ではなく、当塾の方針に合うか合わないかという基準です。一斉授業に向いている生徒であれば、そちらをお薦めしています」
●運営のポイント
社員の自己実現を応援する経営理念のもと、情熱あふれる社員からの「学習塾をやりたい」という申し出を快諾
自ら社員が行動する社風をつくりあげ、やる気と能力を最大限に引き出す
不合格なら入学金を支払う
「公立高校合格保証」
同塾では教科書準拠のテキストの他、「oneトレ」という苦手克服トレーニングプリント(吉備学習システムの「メビウス」)を使い、わかるまで何度でも復習させる。
また、「ノートの取り方」や「学習方法」についても指導。勉強法を教えることで、通塾は週1回でも家庭学習を増やし、成績アップにつなげている。さらにティエラコムの「BIT CAMPUS」を導入。「WEBテスト」機能を使い、家庭でもドリルに取り組めるようにした。加えて、定期テスト前には学校別の無料対策も実施。公立志望校合格に向けて万全の準備をしていく。
同塾のプロ意識の高さは、前代未聞とも言える「公立高校合格保証」に現れている。万が一、公立志望校に落ちた場合、私立の入学金を全額支払うというもの(学力に見合った学校等の条件あり)だ。こうした真摯な姿勢は保護者にも伝わり、たとえ落ちてしまっても「この塾で良かった」という声が多く寄せられている。その評判は口コミとなって広がり、集客に大きな力を発揮している。
●指導のポイント
ノートの取り方やテスト前の勉強方法など、学習の仕方を一から指導
繰り返し演習のできる吉備学習システムのプリントやWEB授業を駆使し、学力を確実に定着させる
●運営のポイント
「公立高校合格保証」で高いプロ意識を維持
人を育てて財に変える
私たちは人財育成会社
川名氏は「教育の源は、人間性の育成だと考えています。生徒の人間性を育むことは、高い人間性を持った講師でないとできません」と断言。「私たちは自分の会社のことを『人財育成会社』と呼んでいます。人を育てて財に変える会社を目指しています」。
同社では多種多様な方法の人財育成教育を行っている。入社希望者は必ずインターンシップを受けることになっている。さらにインターンシップ中の様子からも、塾に向いているかどうかチェック。最初のハードルを高くしているため、内定辞退率は非常に低く、会社の理念に共鳴できる意識の高い人財の確保に成功している。
入社後の研修ではOJTを通して、レポート提出など、さまざまな課題が課される。その成績は点数化され、一定のポイントに達しないと講師になれない。研修修了まで早くて3ヵ月、最長6ヵ月。最後に決意表明を役員の前で行ってから、やっと教室に立てる。
「こんなに人財育成にお金をかける個別指導塾はほとんどないと思うのですが、ここまでやったからこそ、安心して生徒の前に立たせることができます。たとえ利益は薄くても、アルバイトの塾講師を使い回すような考えは変えていかなければならないと思っています」
社員が社員を評価する社内顕彰制度「アワード」も設けている。売り上げに貢献した人が表彰されるのが一般的だが、「生徒への暑中見舞いハガキの人気投票」等、ユニークな切り口で、さまざまな場面で頑張る社員を表彰している。賞品も現金や金券ではなく、特注のトロフィーやチャンピオンベルトを進呈。社員同士の連帯感アップや離職率低下につなげている。
震災の影響もあり、福島県内では一部撤退を余儀なくされたが、現在、福島以外の地域では開校攻勢をかけ、現在35教室。2020年には100校達成を目指す。
「震災時、避難してきた子どもたちがどれだけ勉強に不安を抱き、親御さんはお子さんの将来を心配していたか。その時、私たちはいかに重要な仕事をしているか、改めて認識しました。私たちが信じている教育理念を全国、そして世界の子どもたちに伝えたい。サービス業としての日本の教育は世界最高水準です。世界進出にも積極的に取り組んでいきたいですね」
●運営のポイント
社員有志による「アワード委員会」を設置し、社員同士で讃え合う社内顕彰制度で、連帯感を生み出している
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