≪法則1≫
一番賢い子と一番成績が伸びない子、問題の解き方だけは同じに見える
例えば中1の数学で、(‐3)2と‐32を計算する問題。
一番賢い子は、瞬時に(‐3)2=9、‐32=‐9と解答する。一番成績が伸びない子も、さっと(‐3)2=9、‐32=‐9と書く。中間層の真面目な子だけが、(‐3)2=(‐3)×(‐3)=9、‐32=‐3×3=‐9と、途中式を丁寧に書く。
塾では、(‐3)2の場合、2は( )についた指数であり、( )を2回かけるという意味だから(‐3)×(‐3)=9、‐32のときは、指数の2は数字の3だけを2乗するという意味だから‐3×3=‐9と、まず理由を教えて、さらに理解を定着させるために最初は途中の式も書かせる。
賢い子は、「なぜそうなるのか」を理解できたら、途中式は時間の無駄と判断して書かなくなる。
伸びない子は、( )があれば+、( )がなければ‐と、感覚的にわかった気になっているだけで、途中式を書けといっても最初から書かない。それで、例えば(‐32)と出題されると、( )があるから+9とやって間違えるし、なぜ間違えたのかを反省することもない。
いずれにしても、解いている経過だけを見たら、賢い子も伸びない子も同じように解いているようにしか見えない。しかし、頭の使い方と理解度は、天と地ほども違う。
中間層は、ずっと丁寧に途中式を書き続ける。ゆっくりと伸びてはいくが、多少は融通を利かせたらいいのにという不満は残る。教える立場からすると「言うことをよく聞く」かわいい子どもたちだが、応用力に欠けるので一発勝負の入試には弱い。
≪法則2≫
教科間の比較で、家庭での勉強量がわかる
私の塾では、年間2回、定期的に保護者と個人懇談を行っている。入塾時からの成績カルテをはさんで、保護者の方と向かい合う形式だ。
懇談で、同じような点数でも、A君のお母様には「テスト前、ご家庭で勉強をあまりされていませんね。」と口火を切り、Bさんのお母様には「テスト前、家でも相当頑張っておられますね。」と話しかけると、どちらの場合も、「そうなんです、家での勉強の様子までわかりますか?」と驚かれることがよくある。
種明かしをすると、中学生の場合、5教科の科目間の点数を比較したら、家庭での勉強量はほぼ見当がつく。
国語の点は、テスト前の勉強量では左右されない。その子の現時点でのありのままの学力を示している。
数学と英語の点数は、テスト1週間前にはもう決まっている。普段の勉強に対する取り組みで決まり、一夜漬けは効かない。
逆に、理科と社会は試験直前の勉強量に大きく左右される。直前に頑張れば、相当の上乗せを期待できる。
だから、国語や数学、英語の点数のほうが理科、社会の点数より高目な子は、塾で勉強しているからと自分に言い訳をして家ではテスト前にあまり勉強をしていない、反対に、国語、数学、英語の成績より理科と社会の成績のほうがよい子は、いわゆる「努力家」で、試験が近づくと家庭でも必死にテスト勉強をしていると推測できる。
数字は正直であり、テスト前の努力の量は、ほぼそのまま試験の点数に表われる。
≪法則3≫
学力の到達度は、7つに類型化できる
どの塾でも、例えば模擬テストでどのくらいの偏差値であればどの学校に合格可能かを示す一覧表を用意しておられるはずだ。そして、その表は、ある偏差値だとこの学校というふうに、偏差値の数字と受験校が1:1で対応している形式ではないだろうか。
私の塾では、この1:1の対応表を、今年からやめた。
大阪府の場合、学区が撤廃されたので、受験できる高校は通学可能な範囲だけでも50校を超える。そうすると、現実には、子どもたちは1校に絞ってという選択法をしていない。「自分の成績だとこのあたりだから、偏差値の近い5〜10校のうち、自分に相性のよさそうなここを受験しよう」という選択をしている。
そこで、高校群を7つのグループに分け、塾のアドバイスも「あなたの今の成績はこのグループに該当する。ここから選ぶか、それとも一つ上のグループの実力をつけて、その群の高校に挑戦しようか?」という形態に改めたのだ。
おかげで、塾生にアドバイスするときも、保護者と相談するときも、随分スムーズに話が進むようになった。
具体的には、例えば第1群は、定期テストは5科で490点前後、実力テストは460点以上、模擬テストの偏差値72以上のグループだ。
大阪府だと、北野・天王寺・三国丘などの文理学科に確実に合格する層であり、中学生でこのグループに到達していたら、3年後、相当の確率で東大か京大、阪大に現役で合格する。
別の例だと、7グループのうち真ん中の第4群は、偏差値50前後の層。せめてこれくらいの学校には行ってほしいと多くの親が希望する高校が受験校となる。
総体的に子どもは真面目で、周囲からはそこそこできると評価されているが、応用問題を解く学力には届いていない子が多い。
高校進学後は、そこでも真面目に過ごして中堅の大学や看護学校などに進学する子と、アルバイトやバンド活動、ダンスなどに熱中して就職したり専門学校に進んだりする子の、両極二手に分かれる。
このように、グループごとに、そこに含まれる子どもたちは同じような気質をもち、よく似た勉強の仕方をして、似かよった成績傾向を示す。
現時点での学習到達度を類型化しておくと、受験勉強の目標は向上心を持って一段上の勉強法ができるように自分を改造することだということになり、何をすればよいかが明瞭になる。塾としても、すぐ役に立つ具体的なアドバイスをしやすい。
高校入試の得点も予測できる。
大阪府の公立高校入試だと、第1・2群は理科・社会はほぼ満点近く得点するし、そうでないと合格はおぼつかない。
第3・4群は、理科・社会は8割前後の得点、しかし、難しい数学の得点力が大きく低下し、特に第4群は、英語の得点力も大幅にダウンする。
第5・6群は何か1教科、強い教科があると合格できる。
第7群は、入学試験ではほとんど差がつかないので、内申書で合否が決まる。
≪法則4≫
成績と学習時の姿勢は相関する
私のブログで一番批判のコメントが殺到したのは、『成績のよい子は勉強をするときの姿勢がちがう』という記事を書いたときだ。「自分は、姿勢は悪いが成績はよい」という反論が多くて苦笑を禁じえなかったが、異論が多いと自分のほうが間違えているのではないかという不安も出てくる。
先日、ある公立高校で授業参観をする機会があった。そこは特進科と普通科がある。入学時の成績にほとんど差はないはずなのに、一目で違いが目についたのは姿勢だった。特進科の生徒は、目の色、真剣さが違う。
別の日に、進学実績が急伸している近所の私立高校でも授業を見学した。宿題が多くて生徒は毎日大変だという評判の学校で、あまりいい印象を持っていなかったのだが、授業態度を見て大いに認識を改めた。
クラス全員が前のめりになって黒板に集中し、手元では必死に鉛筆を動かしている。
この学校の急伸の理由は、毎日の小テストでも補講でも膨大な宿題でもない、学校をあげてこの姿勢の徹底に取り組んでいるからだということが一目で見てとれた。
やはり、成績を決めるのは勉強をするときの姿勢であると、持論に自信が持てた瞬間だった。 |