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2014/7 塾ジャーナルより一部抜粋

関西私塾教育連盟 設立50周年記念講演
「科学への扉」
子どもたちから大人までiPS細胞に注目

  2014年4月29日(火・祝)/大阪市立こども文化センター
主催 関西私塾教育連盟/講師 高橋 和利氏(京都大学iPS細胞研究所講師)
 
     
 関西私塾教育連盟は、4月29日(火)、大阪市立こども文化センターにて、小学生と保護者を対象に「科学への扉」と題したセミナーを行った。昨年からの連盟設立50周年行事の最後として、京都大学iPS細胞研究所で講師を務める高橋和利氏が講演を行った。ノーベル賞を受賞した山中伸弥教授らとグループでiPS細胞の研究を行う同氏は、iPS細胞の人への役立て方や臨床の複雑な面をわかりやすく説明した。子どもたちと保護者のほか、教育関係者も多く駆けつけ、最後尾まで満席。研究生活や子どもの頃のエピソードなど、司会者との軽妙なやりとりを披露、会場の子どもたちからも活発な質問があり、講演者と客席が一体となり、会場を和やかな雰囲気に包み、来場者の興味を引き付けた。

第1部
夢の実現につながる
貴重な今を大切に

 初めに、同連盟の清村善治理事長が「勉強する意義、頑張る心や理科や科学への好奇心を学んでほしい。帰るときには、より積極的に前向きな気持ちを持ってもらえたら嬉しいです」と、子どもたちへメッセージを送った。

 続いて、司会者から紹介があった後、高橋氏が登壇。高橋氏は、高校時代にバイオリンやラグビーが上手な同級生の個性に触発されたことがきっかけで、科学に目覚めた。故郷の広島で、生き物に触れる機会に恵まれたことや、国語が苦手だった分、理科と数学で総合点を上げ、得意科目を磨いたことが、将来、理系に進むことになったと振り返った。

 また、研究の仕事で挫折しそうになることはあるかという会場からの質問に、「10回のうち9回が失敗というのが日常。思い過ごしや間違っていたことがほとんどでも、挑戦し続けることが仕事。新しいことをやり遂げたときの喜びを味わうと、次もまたという思いが湧き上がってくる」と答え、続けてきた研究の成果が、一昨年のノーベル賞の受賞につながったことが、研究への熱意やモチベーションをあげることになったと話した。

第2部

 一昨年、ノーベル生理学・医学賞の受賞で話題になったiPS細胞の研究成果と今後の展望を話した。

iPS細胞の2つの特徴

 足りない細胞を補う医療を再生医療と呼びます。再生医療の難しい点は、貴重な内臓を提供してくれる人が見つからなくて、欲しい人はたくさんいるのに、あげられる人がいない現状です。私たちはドナー不足を解消するための、iPS細胞を開発しました。

 iPS細胞には2つの大きな特徴があって、1つは、バイオ皿の中である刺激を与えると、神経や筋肉になれること。条件次第ではすべての種類の細胞になることができます。

 もう1つの特徴は、バイオ皿の中で上手に培養してやると、1週間で100倍以上に、2週間で何万倍にも増えます。つまり、何にでもなれる細胞をいくらでも増やすことができるということは、欲しい細胞を欲しいだけ手に入れることができるということです。

新薬の開発と
病気の原因の解明

 病気の薬を開発するには、病気のことをよく知らないといけません。病気のことを知るためには、病気の患者さんの細胞を使う必要がありますが、パーキンソン病を例にあげます。パーキンソン病は、比較的、年齢の高い人がおこる病気で、だんだん神経が悪くなって、体が不自由になる病気です。ただ、パーキンソン病を知るために、研究をしたいからといって、患者さんの内臓をくださいとは言えません。このような状況があり、研究が進みませんでした。

 患者さんから、代わりに血液をいただき、たったの5cc程度の血液からiPS細胞を作れるようになりました。iPS細胞が作れれば、神経細胞を作ることができます。iPS細胞や神経細胞は、もともとパーキンソン病の患者さんの血液から作ったものなので、パーキンソン病の神経ということになります。iPS細胞の技術を使うことによって、パーキンソン病の患者さんの神経を手に入れることができました。神経細胞を使って、さまざまな薬の効果を試すことができます。化合物が何万種類もあるので、パーキンソン病の患者さんから作った神経細胞を使って、どの化合物に効果があるかを調べることができるので、病気の理解や新しい薬の開発ができます。

iPS細胞の未来

 人の身体に移植できるレベルのiPS細胞を作ろうと思うと、数千万円から1億円くらいかかりますが、私たちは多くの人が使える方法を考えています。

 移植で最も盛んに行われているのは輸血です。輸血をするための血液は、献血によって賄われています。献血によって得られた血液で輸血をしますが、ほとんど費用がかかりません。4種類の血液があるだけで、国民全員に輸血することができます。

 仮に、A型の血液を準備するのに1億円かかったとしても、数千万人で分け合うことができるので、1人あたりの医療費が安くなります。この考え方は、iPS細胞にあてはめることができます。

 iPS細胞は臓器と同じなので、臓器を移植するには、「白血球の型」が重要になってきます。それを「HLA」と言います。A型の人は「赤血球の型」はAだが、もう一つ別の「HLA」の型を持っていて、すべての人が親から「HLA」を一つずつ受け継いでいるので、合計2つの「HLA」を持っています。

 数万種類に及ぶ「HLA」ですが、私たちは、京大病院やバンクと協力して、2本とも同じ種類を持った人を探してiPS細胞を作り、よりたくさんの人に使ってもらえるように研究を進めています。見つかれば、iPS細胞を研究所で作り、評価や品質管理に合格したiPS細胞を各機関に配布します。そして、各拠点で心臓や内臓が作られて、患者さんに届くという流れになっています。成功すれば、将来、iPS細胞の医療負担が軽く済みます。

 iPS細胞研究所では、パーキンソン病治療のために京大病院、角膜疾患治療のために慶応大学や大阪大学、網膜の変性疾患のために理研と連携しています。

 最後に、高橋氏は、小・中・高時代を「できないことと、できることを知るための修行の場」だったと振り返り、「勉強が得意でなければ、勉強以外のことをやると良い。一つでも、好きなものか嫌いなものを探せば、勉強する意義があると思います」と、試験で満点を取ることだけが大切なのではないと話した。そして、「子どもは、人と同じようなことをすると褒められるんですが、社会に出ると、皆と同じことをやっても褒められることはない。将来、大人になって面白いことをやりたいと思えば、少しでも人と違うことをする勇気を持てれば、大人でいることの楽しさを感じられると思います」と、子どもたちへエールを送った。

 代表の子どもたちから高橋氏へ花束と記念品の贈呈があり、講演は盛況のうちに終了した。

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