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中学・高校受験:学びネット

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2014/5 塾ジャーナルより一部抜粋

最強の勉強法を求めて 〜永遠に未完の塾学〜

第1回

俊英塾 代表 鳥枝 義則(とりえだ よしのり)
1953年生まれ、山口県出身。
京都大学法学部卒業後、俊英塾(大阪府柏原市)創設。公益社団法人全国学習塾協会常任理事、全国読書作文コンクール委員長等歴任。関西私塾教育連盟所属。
塾の学習指導を公開したサイト『働きアリ』(10,000PV/日)には、多くの受験生
や保護者から「ありがとう」のコメントが。
成りたい人格は「謙虚」「感謝」「報恩」…。

 編集部から、30年以上指導してきた経験の中で発見した『最強の勉強法』を書いてみないかとの依頼をいただいた。生来軽率な私は「はい、喜んで」と即答した。

 ところが原稿用紙を開くと、一字も書けない。

 最強の勉強法を発見した者が、入試結果発表の続く時期になると連日悪夢にうなされるだろうか?今日もうまく教えられなかったと毎夜うなだれて家路をたどるだろうか?年齢を重ねれば重ねるほど悩みや迷いは深まるばかりで、忸怩たる思いだけが積み重なっていく。

 ずるい私は、そこでうまい手を思いついた。自分の未熟な指導論を語って恥をさらせばよいのだ。それを私よりずっと賢い塾の人に読んでもらって、修正してもらえばよい。

 というわけで全国の賢明な塾の諸氏よ、永遠の二流塾長が語る「最強の勉強法」、とくとご笑覧あれ。

人を勉強に向かわせるものは何か

 自分から進んで勉強がきちんとできる人は、なぜそうできるのだろうか。

 私は、勉強を進んでできる人とは、勉強に関してプライドを持った人なのではないかと思っている。

 サッカーや野球の上手な子が負けたくないからさらに練習に励むように、ゲームで一目置かれている子がさらに攻略法の探求に励むように、「あの子は勉強がよくできる、偉い」と周りから評価されている子どもは、私たち大人が何の苦労をしなくても進んで勉強をしてくれる。勉強に対してプライドを持たない子ども、持てないままの子どもは、どう策をめぐらそうと決して勉強に目を向けることはない。

 そう考えると、大人の役目とは、勉強ができるというプライドを子どもたちに持たせることに尽きるということになる。

最初からプライドを持っている子

 塾には、幼少時から家庭で上手に育てられて、勉強がよくできる子の地位を築いた後で入塾してくる子も多い。遺伝ではなくて、親が勉強の価値を知っている家庭の子どもは、勉強ができる、最初からプライドを持っている。

 こういう子どもに対しての塾の役割は、その才能の芽を摘まないで伸びるに任せることだ。教材や学習内容で塾が勝手に枠をはめてしまって、本来持っていた大きな器を棄損してはならない。

 大器の芽を摘む塾は、レベルの低いところに学習内容を限定してしまう。学校の定期テストレベルの基本問題を大量にやらせて時間を奪う。講師は教科書に書いてあるレベルの常識を滔々としゃべって教えたような気になっている。答えを教えることが学習指導だと思っている。

 逆に、飛び抜けてよくできる子が多く集まり進学実績でも他を凌駕する塾は、傍目からは何もしていないように見えることが多い。そんな塾はおしなべて学習内容に対する講師の見識が高い。賢い子が特別に難しい問題の解法を尋ねたときに即答できる技能を鍛錬している。しかし、その解き方を丁寧に教えることはしない。学問の方法、勉強の仕方を語る以外は子どもが疑問点を聞くまで待っている。だから、大器がさらに伸びる。

最初は勉強にプライドを持っていない子

 私の塾だと、もとからよくできて最初からプライドを持って入塾してくる子はそう多くはいない。だから、まず勉強に自信を持たせ、自分でもできると自覚させることで初めて子どもたちは自分自身にプライドを持つようになる。

 塾の役割は、勉強で大器にも勝てるのだという道具を修得させて、プライドを持たせることだということになる。織田信長が長篠の戦いで、弱小と侮られていた尾張軍の鉄砲隊を訓練して猛将揃いの武田軍を打ち破ったように、これを持てば勉強で勝てるという道具・武器を子どもたち自身の手で身につけてもらうのが塾の使命である。

勉強の道具・武器とは

 まず、勉強にふさわしい姿勢、態度を身につけることだ。どこの塾でも、受験学年とそうでない学年とでは机に向かう姿勢が全く違う。逆も真なりで、姿勢を正すと勉強もできるようになる。成績のよい子で、忘れ物をしたり、かばんの中が乱雑であったりする子はまずいない。

 次に、精神論ではなくて、速く正確に問題を解くための具体的な道具、方策を科目ごとに明示して身につけさせることだ。算数・数学だと、計算問題以外は必ず先に式を書く癖をつける、途中式を省略しない、関数の問題ではグラフと座標をまず書き込んでから考えるなど。国語だと、問いの文の重要語をあらかじめ囲む、本文中の解答に使える場所には傍線を引いておくなど。英語だと、英文の基本構造である主語・動詞を常に意識した読解や英作文を心がける、単語だけで満足しないで基本文をできるだけ多く暗記するなど。これらを身につけると強い道具・武器となる。

 こうした勉強で使う道具を修得させることで、子どもたちは自分自身の力で問題が解けるようになり、成績を上げて自信がもてるようになる。やがて自信がプライドに転化し、脅したりすかしたり、無理に褒めたりおだてたりしなくても、自分で進んで勉強をするようになる。

 学ぶ者すべての成績を伸ばし、唯一、効果を永続的に保証する方策は、「勉強で使える道具を修得する」、これしかない。さらに言えば、「勉強で使う道具」は、勉強をすればするほどシンプルに、単純なものに、集約されていく。

 長野県に城内先生(うろこ先生)という素晴らしい塾の先生がおられた。私が勝手に尊敬し、師事していた方だが、その先生の文章中に一節、「方程式はつまるところ等式だ」という言葉があった。私は心の底から驚愕し、初めて方程式がわかったような気がした。

 私を含めて中途半端な塾講師は、「食塩水の問題はこうしたら解ける」、「速さの問題はこれを覚えろ」という教え方をして何か教えたような気分にひたっている。しかし、これらのことは導入部、端緒に過ぎない。

 アインシュタインの相対性理論がE = mc2の式に集約されるように、方程式の計算の仕方、食塩水の問題、速さの問題などの勉強を通して、子どもたちに「結局、方程式とは等式だ、それがわかればすべての方程式は解ける」ことを理解させて初めて、私たち大人は「勉強を教えた」と言えるのではないだろうか。

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