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2014/3 塾ジャーナルより一部抜粋

「教材」の重要性
学習塾にとっての「教材」の役割
その重要性を分析する

     

 学習塾にとって「教材」、とりわけ主要5教科の通常授業用の教材は重要です。にもかかわらず、どういう教材をどのような基準で選択し、使っているのか、意外と知識を持ち合わせていないのではないでしょうか。

 講師の仕事は「教材を」教えることであり、学習内容をわかるようになるための手段方法を具体的に伝授することにほかなりません。

塾の教師の仕事は
「教材」を教えること

 学習塾にとって「教材」がどれほど重要な役割を果たしているか、理解できない塾教師はいないでしょう。ずいぶん昔、学校の教師は「教科書で」教えるべきか、「教科書を」教えるべきかという議論が交わされたことがありました。学校の教師の本来の仕事は「教育」ですから、常識論的に考えると、かれらは「教科書で」教えるのが本筋でしょう。が、塾の教師の場合は少しばかり違っています。結果としての例外はいくらでもあるとしても、もともと子どもたちは塾に「教育」を受けにやってくるわけではありません。保護者も「教育」を受けさせるために、子どもを塾に送り出しているわけではありません。かれらは学校で学んでいる「学習内容」を――場合によっては学校で学んでいるより高次の「学習内容」を――理解するために、すなわちちゃんと「わかる」ようになるために、さらには「わかったこと」をいつでもどこでも「できる」ようになるために、塾にやってくる。保護者もそれを望んで子どもたちを塾に送り出している。

 では、その「学習内容」はどこにあるのかと言えば、通常は、学校で使っている教科書を含めた「教材」の中に詰まっています。子どもたちが「わからなければならない学習内容」、「できるところまで持っていきたい学習内容」はすべて、教材の中に陳列されています。とすれば、塾の教師の仕事は「教材を」教えることであり、同時に子どもたちに、教材の中に明示されている「学習内容」を「わかる」ようになるためにはどうすればよいか、「できる」ようになるためにはどうすればよいか、その手段方法を詳細かつ具体的に伝授することにほかなりません。

 言わずもがなのことを申し上げましたが、塾にとって「教材」――とりわけ主要5教科の通常授業用の教材――はそれほどに重要なものです。にもかかわらずわれわれは、自分の塾は別として、ご同業の皆さんがどういう教材をどんな基準でどのように選んで使っているのか等々について、意外と知識を持ち合わせていないのではないでしょうか。そこでここでは、あくまで一般論ということになりますが、教材一般、特に中学生用の通年教材に対する普通の塾の考え方や採択の実態などについてお話ししていきたいと思います。

塾用教材への
アンケート結果を見る

 昨年の12月からこの1月に掛けて、本誌編集部が読者の皆さんを対象に「塾用教材へのアンケート」調査を実施しました。ご記入いただいた用紙が23枚、手許に届いています。別の欄で取り上げられていれば重複することになってしまいますが、まずはこの調査の結果を紹介することにしましょう(いずれも複数回答可)。

【塾用教材を決める時期は?】
1月から3月(52%)、年間通して(39%)、その他(9%)
その他の内訳は「4月から7月」が4.5%、「12月」が4.5%

【塾用教材を決める場所は?】
教材展(34%)、教材会社へ直接(28%)、HP・雑誌など(21%)、その他(17%)
その他の内訳は「カタログ」が10%、「営業マンを通じて」が7%

【塾用教材を決めるポイントは?】
使いやすさ(36%)、内容を重視(47%)、料金をみて(11%)、その他(6%)
その他の内訳は「自塾のシステムとの適否」が3%、「解答の使い勝手」が3%

【塾用教材は毎年替える?】
はい(22%)、いいえ(52%)、その他(26%)
その他の内訳は「必要に応じて」22%、「年度の生徒の学力レベルに応じて」4%

【塾用主要5教科以外の教材も使っている?】
はい(35%)、いいえ(65%)

(はいと答えた方へ)

【どのようなものですか?】
英会話(7%)、能力開発(31%)、速読(25%)、ロボット(6%)、その他(31%)
その他の内訳は「面接」6%、「作文・論文」13%、「副教科」(6%)、「その他」6%

【主要5教科の1冊の金額は?】
500円から1000円(38%)、1000円以上(62%)
【塾生に教材費を請求する?】
する(96%)、しない(4%)

(すると答えた方へ)

【どれくらい?】
実費(48%)、上乗せしている(52%)
上乗せする塾の43%が「1割上乗せ」、14%が「2割上乗せ」、残りの43%は「無回答」

【教材を変えるきっかけは?】
成績が伸びない(20%)、生徒が真剣に取り組まない(12%)、講師の意見(44%)、その他(24%)
その他の内訳は「年度の生徒の学力レベルと合わない」16%、「自分の塾のシステムと合わない」4%、「内容に難」4%

【今の教材に満足している?】
はい(71%)、いいえ(29%)

【自塾で教材作成は?】
している(61%)、していない(39%)

(していると答えた方へ)

【作成の目的は?】
通常の授業用(39%)、定期テスト対策用(39%)、その他(22%)
その他の内訳は「受験対策」16%、短期の講習用6%

【映像教材やPC教材を導入?】
している(48%)、していない(39%)、導入の検討中(13%)

アンケートの項目ごとに分析

 一つひとつ、見ていきましょう。

【塾用教材決定の時期】

 半数の塾が「1月から3月」ということでした。版元の教材会社が制作や改訂を終了するのはたいてい年末ですから、これはまあ、当然のことでしょう。ただし、3月決定では少々遅すぎる気がします。大半の塾は、建前上の年度切り替えが3月1日であるにしても、実質的に年度が切り替わるのは春期講習終了後の4月アタマですから、3月に決定して4月に子どもたちに手渡しすれば授業に支障はないわけですが、集客や特に学年末退会の回避ということを考えると、早めに渡してしまったほうがよいに決まっています。

【決定の場所】

 ここ10年来、1月に各地で塾団体主催の教材展が開催されるようになりました。しかし、残念ながらここに足を運ぶ塾関係者は意外に多くないようです。せいぜいその地域にある塾の半数といったところではないでしょうか。教材展は、主要な教材会社の商品をすべて手にとって眺められる年に一度の機会です。何をおいても参加して、とにもかくにも主な教材を比較しつつ、ご覧になるようお勧めします。新しい発見があるかもしれません。

【決定のポイント】

 「使いやすさ」と「内容を重視」が2大要素のようですが、「使いやすさ」に関しては判型や紙質、厚さなどのハード面と、「解答書き込み欄」の有無や形状、さらには付属の「解答」の充実度などを思い浮かべたのではないでしょうか。また「内容」に関しては、「基礎から発展へ」あるいは「重要事項のまとめから演習問題へ」と進む展開の仕方や演習問題の数、難易度、難問の配列の仕方などを念頭に置いて回答されたものと思われます。これは頷けます。問題数についてだけ私見を申し上げておきますと、わたしは基本的には問題数の多いものをお勧めしています。先生方の中には「教材を使いきってしまわないと保護者からクレームが来ることがある」という理由で、適度な数の教材を選ぶ方もいらっしゃるようです。が、その場合、学力のある生徒にはプリント類や別の教材を準備しなければならなくなってきます。1冊で間に合うようにというのが趣旨です。

【教材の変更】

 毎年替える塾が4分の1、原則的には替えない塾が半数、状況に応じて替える塾が4分の1。率直に言ってこの判断はなかなか難しいと思います。教える側からいえば、長年使用していた教材は慣れているので使いやすい。予習にも時間を要しません。ただ、それが生徒の学力レベルに適合していないとなれば替えるより仕方ないでしょう。大半の塾が使用しているのは教科書準拠の教材でしょうから、そういうことはあまりないだろうとは思いますが…。

【塾用主要5教科以外の教材】

 幼児や小学生対象の教材を含めての回答なのでしょう、思っていた以上に多種多様な教材を使っている様子がうかがわれます。中学生の副教科教材に関していえば、わたしは一応用意しておくことをお勧めしています。もちろん定期テスト対策用です。当たり前のことを申し上げるようですが、われわれが期待されているのは生徒の学校での席次を上げること、内申点を上げること、その結果として生徒・保護者が望んでいる上級校に生徒を合格させることにほかなりません。

 ところで、定期テストで点数を取りやすいのは5教科と副教科のどちらか。言うまでもなく副教科のほうですから、これを定期テスト対策で行わないという手はないのではないでしょうか。

【1冊の金額と教材費】

 大ざっぱにまとめてしまうと、1冊の金額は1,000円強、これを実費請求している塾が半数、残りの半数は1割から2割の手数料を乗せて負担願っているといったところでしょうか。妥当だろうと思います。保護者が塾に支払う費用には入会金、授業料、教材費、テスト代、施設費や冷暖房費や塾保険料等々を含めた年間維持費、定期テスト対策費、春、夏、冬の講習授業料やそれに伴う教材費、合宿費などなどがありますが、このうちおそらく最も納得がいかないのは年間維持費で、次があまりにも高額になってしまったさいの「教材費」でしょう。1冊1,000円強、5冊で7,000円前後の実費に1割強の手数料を上乗せしても1万円以内で収まるのであれば、良心的な塾という評価を得られるのではないでしょうか。

【教材変更のきっかけ】

 理由が分散していますが、一番多いのは「講師の意見」のようです。これはたぶん塾の責任者が、自分の担当外の教材も含めて回答されているせいでしょう。教えている講師から、「これはダメだから替えてください」と言われれば替えざるを得ないというのはよくわかります。ではそうした塾では、しっかりした教材研究やその成果に基づいた講師への指導研修を行っているのでしょうか。どのような教材であっても、その教材にふさわしい、標準的な指導の仕方というものがあるはずです。担当するすべての講師が、そうした指導の仕方を十分認識したうえで授業を進めていかない限り、教材の良さは引き出されません。このあたりはもう一度、じっくりお考えいただきたいと思います。

【満足度と教材の自塾作成】

 満足している塾が7割、にもかかわらず、教材を自塾で作成している塾が6割。うち、通常授業用が4割、定期テスト対策用が4割

調査結果で一番気になる項目

 今回のアンケート結果の中で、一番気になったのがこの項目でした。わたしは例外を除いて、教材の自塾作成には全くの反対という立場をとっています。主な理由は4つあります。

@塾教師の仕事は、先に触れたように「教材」の中身を教えることであり、中身がなんであるかを決めることではない

Aどんな「教材」であれ、それなりの専門家がそれなりに努力して作成している。教材制作に必要なもろもろの専門的知識という点に関しては、塾講師はそうした専門家のレベルに追い付けない。

B教材制作には時間がかかる。コストパフォーマンスの点からいって、得策とは思えない。

C教材の自塾作成といっても、実態をみると切り張りが主体。著作権法に抵触する恐れが多分にある。

 大方のお叱りを承知のうえで乱暴な言い方をしますと、塾講師が時間と労力を掛けて作ったところでロクなものはできやしない、それなら、教材研究や指導研修、あるいは生徒面談や保護者面談をしたほうがはるかに生徒の成績向上に資する。また、ポスティングや校門前配布をしたほうが塾の財政基盤確立に資する、経営者の収入も多くなるし、職員にも高い給料を出せる、とこう考えているわけです。

 通常授業用はそれでよいとして、それじゃあ、定期テスト対策はどうなるのかとおっしゃる方も多いと思われます。昔話になりますが、定期テスト対策用の自塾作成教材は30年近く前、生徒が通っている中学校の過去問と学校教師用の指導書のコピーから始まりました。そのころは学校教師が安易に前年のテスト問題や指導書に記載されている問題例をそのまま出題することが多かったため、的中例も少なくなく、それが評判になって客が集まる塾が続出、他塾もこぞって真似をしたために自塾作成が増えていくことになったというのが経緯です。

 しかし、昨今は「そのまま出題」も少なくなりました。代わりに教科書のここからここまで、サブテキストの何頁から何頁までから出題とハッキリ指定されることが多くなってきています。であるならば、教科書やサブテキストを持ってこさせて丁寧に復習させるほうが高得点を期待できるのではないでしょうか。

 なお、先に「例外を除いて反対」という立場と申し上げました。例外は2つあります。1つはどこを探しても適当な教材が見つからない特殊な学校の受験対策用、もう1つは将来的に他塾へ販売することを意図して実験的に作成している場合。

 いずれにしても、経営という観点からいえば、自塾で実施するテスト類も含めた教材の自塾作成にメリットはほとんどないでしょう。時間のムダ、労力のムダ、おカネのムダ以外のなにものでもありません。職人系の講師のなかには作りたがる方たちも多いかもしれませんが、それを説得して塾講師本来の仕事に向かわせるのが経営者だろうと思います。

【映像教材・PC教材】

 導入している塾が約半数、検討中が1割強。そうしてみるとおそらくは今年中に導入塾は6割を超えるでしょう。6割を超えると一気呵成…。導入塾は、どんな教材を導入してどう使わせるか、その際、講師の役割はどう変わるのか、しっかり考える必要がありそうです。映像教材やPC教材を既製服に、完全アナログを注文服に喩える考え方もあるようですが、映像・PCは既製服ではありません。あえていえばイージーオーダーでしょう。手のかからない既製服と捉えると、導入は塾を壊滅させる引き鉄になってしまうことでしょう。

通年用の教材で
望ましいものは

 以上、読者アンケートを眺めつつ、気づいたことをお話ししてまいりました。最後に1点だけ、わたしが求める教材、特に通年用の教材について申し上げておきたいと思います。わたしは、一つひとつの学習内容(学習項目)に関して、学習者がはっきりと「基礎」が何、「基本」が何、「発展」が何とわかる教材で、なおかつ「基礎」→「基本」→「発展」とスムーズに展開されていく教材が望ましいと考えています。

 基礎・基本と一括りにされることがありますが、ここでいう「基礎」とは有体にいえば「用語の定義」を意味しています。例えば「1+1=2」の「+(足す)」とはどういうことか、「=(は)」とはどういうことか、その意味内容を明示することであり、学習者がそれを理解して記憶することが「わかる」に相当します。

 一方、「基本」とは、そうした定義を理解したうえで「1+1=2」というパターン、シングルイシューに習熟することを意味しています。これは運動、例えばバッティングの練習のようなもので、正しいフォームがわかったところで、何回も繰り返し身体に叩き込まない限り「できる」ところまでいきません。基本とは基本動作であり、繰り返して初めて自家薬籠(やくろう)中のものになるわけです。

 では、「発展」とは何か。これは複数の「基礎」が組み合わされた問題を意味しています。たとえが適当かどうかわかりませんが、例えば、足し算と引き算とが組み合わされたもの、掛け算と割り算が組み合わされたものということになります。

 大きなテーマですので、詳細は述べきれませんが、実はわれわれが知っている主要教材会社の人気教材はたいてい、ここで申し上げたように作られています。異論はおありでしょうが、問題はむしろ教える側にあるのではないか。どの教材を使うにしても、教える側がこうしたことをしっかり認識しつつ授業を進めていけば、生徒の学力はもっともっと効率的に伸びていくのではなかろうかとわたしは考えています。

 

PS・コンサルティング・システム 代表 小林 弘典
PS・コンサルティング・システムの代表を務める学習塾経営コンサルタント。学習塾の個別コンサルティングを主業務とするかたわら、講演・執筆活動の他、塾経営者の勉強会「千樹会」「伍泉会」なども主宰している。塾ジャーナルでは「塾長のマンスリー・スケジュール」を連載中。

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