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中学・高校受験:学びネット

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2013/11 塾ジャーナルより一部抜粋

ズームアップインタビュー この人に聞く112
経営品質の向上を目指して革新を続ける
「塾生数北関東一」「教え方日本一」を目指す

     

株式会社 開倫塾
代表取締役社長 林 明夫さん

 2013年10月、創立34周年を迎える開倫塾(栃木県足利市)は塾生7,000人の地域密着の進学塾だ。2002年に「栃木県経営品質賞知事賞」を受賞。2009年には「ハイ・サービス日本300選」を受賞するなど、経営品質の高さにも定評のある企業でもある。塾長の林明夫氏は、上場企業(製造業)の社外取締役や栃木県教育委員会の社会教育委員会委員、宇都宮大学大学院の客員教授も務めるなど多方面で活躍。現在も経済同友会など経済団体や多くの学会に入会し、経営の研究を続け、塾運営において、さまざまな手法を導入している。常にイノベーションを続ける開倫塾の取り組みを取材した。
(2013年8月19日 関西生産性本部 経営革新部による「経営品質研究会」開倫塾視察の内容から採録)

ミッションは「成功の実現」と
「社会づくりへの貢献」

── 開倫塾について教えてください。

 創業は1979年。29歳までは慶應義塾大学の司法研究室の研究生でした。株式会社にしたのは1984年。現在の教室数は62校で社員数は約400人です。塾生は小学生から高校生。科目は英、数、国、理、社の5教科ですが、定期テスト前には9科目対応することもあります。最近は個別指導も始めました。

── 開倫塾として掲げている社会的使命(mission)があるそうですが。

 「成功の実現」と「正常に機能する社会の形成」の2つです。学力があれば人生の選択肢が広がり、成功を手にするチャンスも増えると考えています。

 「正常に機能する社会の形成」というのは、あらゆる人の学力を向上させることで地域の担い手となる人を育て、持続可能な社会づくりに貢献することです。フィンランドでは「一人の落ちこぼれもつくらない」をスローガンに、一人ひとりの学力を上げ、全員が社会のために働いてほしいという方針を立てています。それと同じ主旨のもと、開倫塾では社会的使命に基づいた経営「Mission Based Management」を目指しているのです。

大学での教育に
耐えうる基礎学力を

── 具体的にはどんなことをされているのでしょうか。

 開倫塾では経営の基本理念を4つ挙げています。「顧客本位」「独自能力」「社員重視」「社会との調和」です。

 先ほどお話した「成功の実現」とは顧客の成功の実現に他なりません。しかも私たちは顧客を「塾生」「保護者」「地域社会」と定義しています。

 では、顧客のために何をするかというと、「学校教育で不足する教育」の提供です。開倫塾の塾生の9割以上が大学、短期大学等の高等教育機関に進みますが、そこでの勉強に耐えられる基礎学力は著しく欠如しています。

 ですので、学習サービスの目標を「大学など高等教育機関での教育や研究に耐えられる基礎学力、基本的能力の育成」においています。そのために「読書」や「NIE(Newspaper In Education)」、「食育」、「5S」等も取り入れています。

── 「独自能力」とはどういうものでしょうか。

 私たちは常にイノベーションを行うことによって、顧客の価値の創造と最大化を目指したいと考えています。そのための前提として「観察」「分析」「判断」の3段階を行います。

 「観察」とは何が本当の問題なのか「問題点の発見」をすることです。次に「分析」として根本的な原因は何か「原因の推定」を行います。原因がどこにあるのか推測したら、問題の解決方法を「判断」します。

 解決方法として「ベストプラクティスのベストベンチマーキング」=優良事例を分析して取り入れる作業を、3つの方法を組み合わせながら、戦略的に行います。

 1つは社内における「ベストプラクティスのベストベンチマーキング」です。62教室の中で生徒の継続率が高いなど、優秀な教室の例を分析します。

 2つ目は同業他社のベンチマーキング。学習塾業界は仲が良く、活発に情報交換できる業界ですので、良い方法を教えていただくことも多いですね。

 3つ目は異業種企業のベンチマーキング。例えば、セブンイレブンの優れたノウハウを学習塾運営に取り入れることができるかどうか検討します。

 私は経済同友会の会員になり、そこで数多くの異業種の方々と知り合うことができました。それが塾経営にも役立っています。

 ベンチマーキングで一番重要なのは「テーマ決め」ではないでしょうか。原則、塾長直結の部長会でテーマ設定をし、担当者を決めて行っています。ベンチマーキング後はどのような解決方法が適切か、仮説を立て実験、PDCAサイクルを繰り返し、標準化を図るようにしています。

辞めても戻ってこられる塾
85歳過ぎまで働ける職場に

── 「社員重視」について教えてください。

 開倫塾では社員が自らの力で自分の可能性を発見し、育てられる企業を目指しています。そのためのキーワードは「empowerment」。この言葉には「権限を与えること」と「能力をつけること」の2つの意味がありますが、高い能力の社員に権限を委譲する仕組みをつくっていきたいと考えています。

 「耳に痛いことを言う人は尊い」というのが、開倫塾の方針です。社員が上司に何か意見を言うとき、辞表をポケットに入れて言わせるようなことをしてはいけません。自律ある人材が自律ある考えに基づき、自律ある行動をする企業を目指したいと思っていますので、自由に発言してもらっています。

 あと、開倫塾は「出入り自由」なんです。独立のために辞めた人や、介護等の事情で離職した人でも採用基準を満たしていれば戻ることができます。

── 定年はありますか。

 ありますが、「85歳過ぎまで働ける職場づくり」も目指しています。開倫塾の教育相談室の室長である岡田忠治先生は私の中学時代の恩師でもあり、77歳になります。定年後は、各人の働ける範囲で仕事をしてもらいたいと考えています。

── 最後の「社会との調和」としてされていることは。

 まずは「法令順守」。次に「セクシズム(男女差別)」「エイジズム(年齢差別)」「レイシズム(出身差別)」をなくす努力ですね。レイシズムには出身大学による差別も含みます。

 あとは「夜11時以降の勤務の禁止」。社会貢献活動も推進していきたいと考えています。

── 開倫ユネスコ協会もありますね。

 はい。世界中のすべての人が教育を受けられるよう、書き損じのはがきを集めて募金に充てる「世界寺子屋運動」のほか、毎年8月15日に平和への祈りを込めて一斉に鐘を鳴らす「平和の鐘を鳴らそう運動」などにも参加しています。教育相談室や栃木刑務所の女子受刑者への教科指導も社会貢献だと捉えています。

アフリカに教育を
インドの
低価格私立学校に注目

── 開倫塾には教育目標がありますね。

 開倫塾の教育目標は「高い倫理」「高い学力」「高い国際理解」そして、「自己学習能力の育成」です。この自己学習能力とは「学習の仕方を学習する能力」のことです。その能力を身に付けるための理論が、私が30年以上かけてまとめた「学習の3段階理論」です。

── それはどういったものですか。

 勉強には3つのステップがあり、それぞれの段階にあった勉強方法をすることで、成績を上げるものです。

 ステップ1は「理解」。これは学んだことが「うん、なるほど」と腑に落ちる段階です。大切なのは予習で、学校や塾の授業を受ける前にわからないところをはっきりさせてから授業に臨むこと。意味のわからない語句があれば、教科書や用語集で調べて、その意味を身に付けることがポイントです。

 ステップ2は「定着」。理解したことを「スミからスミまで」正確に「身に付ける」ことです。そのためには「音読練習」「書き取り練習」「計算・問題練習」がとても大事です。私はこれを「定着のための3大練習」と名付けました。手が痛くなるほど書き取り練習をすると、一生忘れません。

 ステップ3は「応用」。これは「理解」「定着」したことを用いて、「テストで良い点が取る」「社会で役に立てる」ことを目指します。得点力を上げるためには、過去問や予想問題を5年分、同じ問題を5〜6回繰り返すようにするといいと思います。

── 今後の展望を教えてください。

 「教え方日本一」を目指しています。開倫塾では毎回の授業はレッスンプランで「授業の設計図」を描いてから行っています。

 成績を上げるための要因は「本人の自覚」と「先生の力量」。この生徒自身のやる気を引き出すのも先生の力量のうちです。そのため、先生には授業の中で自覚を促す「武者語り」を3分以上行うことを義務付けています。「あなたは何のために勉強をするのですか」といったことを生徒に語りかけるのです。どんな話をしたらよいかは開倫塾のHPの「林明夫のページ」に書いていますので、それを参考にしてもらっています。

 他にも現在の62教室から100教室に増やしたいと思っています。目指すのは「塾生数北関東一」。それには比較的学習塾の少ない地域に進出し、「インクブロット出店」(インクが染みわたるように出店すること)を進めていきたいですね。海外展開も視野に入れています。

── 海外はどの地域を。

 今最も教育を必要としている地域はアフリカだと思います。あと注目しているのはインドの「Low Cost Private School(低価格私立学校)」の動向です。インドの公立学校ではヒンディー語などの現地の言葉で授業が行われていますが、都市部では月謝300ルピー(約500円)で小〜高校まで、英語ですべての教科を教える私立学校に通っている生徒が多いようです。多い地域では約8割の子どもが通っているといいます。

 こうした形式の低価格私立学校は、西アジアを中心に、アフリカ大陸でも急速な広がりをみせているようです。残念ながらインドでは日本の学習塾ではなく、学校法人に進出してほしいと考えているようですが(笑)。

 学校経営や大学経営をされている方には、日本でも一日でも早く多くの教科の授業を英語で行ってほしい。小・中・高・大と連結したカリキュラムを組み、日本キャンパスとインドキャンパスをつくって、生徒や教師を交流させたらよいと私は考えています。

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