河野(以下──) 早速ですが、ここ福山で英語専門塾として独立した経緯からお伺い出来ますか?
高橋 福山出身ではないですが、某大手塾での最後の勤務が、この福山だったということですね。地元に帰ると、人口の問題や、知識が生かせるような生徒が少ないということもあります。また、広大付属があるということも大きいですね。大学進学熱も高く、総合的判断でこの福山を選びました。
── やはり広大付属があるということは、大きいですか?
高橋 そうですね。意識が高いということで、塾選びがある意味、都会的ですね。例えば、英語なら高橋ゼミ、数学なら近くの○○塾という風に、科目により塾を使い分けています。普通は、1つの塾で複数の科目を習うことが多いので大手有利になりますが、このような場所ですと、個人の高い技量で、十分、大手に対抗出来ます。
── 先生の塾は、難関大中心ですが、何か他と比べた大きな特徴はありますか?
高橋 基本的に私1人で教えてますので、映像などを多用し、全て自作です。また大学受験が中心ですので、中間・期末などの定期テスト対策は、まったく行っていません。
── 映像だけでなく、音声授業も、かなり早い時期から始めてましたよね?
高橋 音声CDは、もう5年以上前から始めています。テキストに沿って、現在35枚のCDがありそれで一通りのカリキュラムが終了するようになっています。
── 高校生のカリキュラムが35枚というのは、1年で高校生の内容をやってしまうということですか?(通常、年間カリキュラムは、1年間35週として考える)
高橋 それはたまたまですね。(笑)CDでは、文法を中心に授業しています。一方、クラス授業では、長文解釈を中心に行っています。CDは、貸し出すことも出来ますので、途中入塾した生徒も一気に穴を埋めることが出来ます。
音声の方が使いやすいですし、生徒の集中度が、まったく違いますね。映像だと、見ることは見ますが、内容を覚えていないことが多い気がします。
── 最近は、個人塾でも映像を使っているところが多くなってきましたが、どうもあまりうまく行ってない気がします。高橋ゼミは、そこをうまくやってる気がするのですが。
高橋 最大の特徴は、全て「自作」ということです。他社のものは、一切使ってません。一般受けする「当たり前」の映像になってますので、私の塾のように特徴というか、クセの強い塾には、まったく合わないのです。また他社の映像を使用する場合、その使い方が問題になりますが、それを考えるくらいなら、自分で作った方が早いと思ったのですね。今では、映像・音声をフル活用して、かなりゆったりと100名を超える生徒を自分1人で回せるシステムが出来上がってます。
── やることが決ってることと、大学受験に「特化」していることで、システム化しやすかったということがあるかも知れませんね。
高橋 そうかも知れません。ただカリキュラムが目に見えるという意味では、非常にやりやすいですね。
── 映像は、非常に懐疑的というか、今の流れのままではない気がするんですね。
高橋 まず大切なことは、塾の役割のどこの部分を映像にやらせるのか?ということをはっきりさせないとダメということです。私の塾では、まさに塾の背骨というか、カリキュラムをそのまま映像・音声にしてます。チェックは、一斉授業で直接、私が行います。そのルーチンが出来ているので、非常にやりやすいです。大事なことは、自塾のカリキュラムや、やりたい事が映像になっていることです。他社のものを使うと、他社のカリキュラムを自塾で使うことになりますので、自塾なりにはならないと思うんですね。
── 実は、そこが非常に問題なんですね。今、個人塾でも映像を作っている会社が多く出ていますが、そのほとんどは、ダメになって、それよりも各個人塾が映像技術を持って、自社のためだけの映像を作り、使用するという流れになると思うんですね。自社で「塾長自らが出ている」映像を使うということが主流になるでしょうね。
高橋 自分の塾で作った映像しか私の塾では使えません。一方、映像を一度作っておくと、カリキュラムが決ってますので、ずっと使えます。
また、自分の時間を「新しい知識を教える」という部分に使うことがないので、各生徒のチェックのみに使え、生徒一人一人を今まで以上に、個別に見れることになります。効果と効率の二兎を追う形ですが、これも100%自塾用の映像だから出来ることです。
── つまり、映像を「使って」というよりも、各塾で「作る」ことが基本になっていく時代ということですね。私も同感です。
高校生は映像が基本になっていくとは思いますが、先生が「いないから」映像で・・というのは、失敗の元です。
教えられる先生がいるから、映像が生きるわけですね。そうでなければ、フルラインナップが揃い、カリキュラムが多様な東進など大手衛星予備校に負けてしまいます。先生が、これだけは他に負けないという部分を特化してそれをうまくシステム化した方が得策と思いますね。
※映像授業は、現在30社以上がしのぎ合う非常に厳しい業界になっています。コンピュータの発展に伴い、安い価格で映像が作れるようになったことで、個人塾での参入も見受けられます。しかし、まだまだ「出来ていない」。しかも作り手側の甘えが見受けられる商品が多いものです。自塾の生徒に何がベストなのか?それを考えていくと、映像の使い方も大きく変わるはずです。
── CDでの授業の様子はどうですか?
高橋 集中度が高いですね。それと、生徒は結局、テキストで学習します。
生徒は授業を見たいわけでなく、成績を上げたいわけですので、先にテキストで今日すべき課題や内容を見て、その上で分からない部分を映像で確認とする方が合理的です。映像だと、1度見ると終わりかもしれませんが、音声は、何度も手軽に聞けるということも強みですね。
── 今後も、このようなスタイルでやっていくわけですか?
高橋 そうですね。私の塾は、スタイルが決っているので、基本的にこのままです。
英語に特化した個人塾ですね。音声・映像の使い方も、今までとそう変わらないと思います。基本的に様々なツールは、指導時間の時短のためです。そして浮いた時間を、生徒の指導やチェックの時間に振り分ける。全ては、生徒との時間を密にするためですね。
── 毎年、難関大に合格出来ている理由は、その辺りにもあるのでしょうか?
高橋 個人塾の場合、塾長のパワーをどこまで生徒に使えるか?ということが勝負になりますのでそういう意味では、様々なツールを使うことで、私の時間をより多く生徒に使えることになったのは事実です。
── それで二次試験前になると全部リアルに切り替えてるわけですね。
年間を通してのツールの役割も、きちんとしているということですね。
高橋 現実として入試は、非常に「個人的」なものですので、ここはどうしても人が当たらざるを得ません。
そのため基礎的な部分はツールで、最後の仕上げは、人。これは譲れませんね。
※高橋ゼミは、ツールを使いながらも、難関大に多数合格させている稀有な塾と思います。その秘密の一端が見えたのではないか?と思います。映像を使う側の心理として、どうしても映像を使うことで楽をしたいと考えてしまいますが、映像の効果を決めるのも実は、塾長の技量1つです。
また映像作成会社も、安かろう悪かろうの映像では、もう誰も振り向きません。安価で自塾で映像が作成出来るようになった現在、さらに良い物をどう作るか?そして、塾長が本当に望んでいるもの、生徒が望んでいるものは何なのか?と考え作っていくべきでしょう。私は、今年は映像そのものが大きく変わる年だろうと考えています。
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