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中学・高校受験:学びネット

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2012/5 塾ジャーナルより一部抜粋

ズームアップインタビュー デジタル化そしてグローバル化へ
新たな『教育の学研』への先陣を切る

     

株式会社 学研ホールディングス
代表取締役社長 宮原 博昭 氏

 学研ホールディングスの社長就任から1年余。塾の現場から離れ、経営と運営の要となったことで、塾業界の現状を見据えつつ、学研グループ全体の士気を高めている宮原社長。昨年度は100万部を超えるベストセラー3冊を出版、学習参考書分野でも、大手取次中学学参の単月売り上げベスト20に16冊入るなど、実質24年ぶりの増収・増益へと導いた。塾ジャーナルの2010年11月号では、教育のデジタル化という未来構想を熱く語っていた宮原社長だが、それから約1年半が経過した現在、社長就任前とはどのように意識が変わり、どのように推進してきたのかを単独インタビューで問いかける。

社長就任後に見えた
塾業界の問題と未来

── 学研ホールディングスの代表に就任されて2年目を迎えられましたが、気持ちの上での変化はありましたか。

宮原 学研は上場企業であり出版社である、とつくづく感じています。会う人の数も業種も、非常に幅広く増えました。就任前は塾業界にかかわる仕事についていましたが、今は全体を統括する立場として、現場から一歩離れた状態で見ることができるというのも変化の一つですね。その視点から見ると、1兆8千億円産業と言われる成熟した出版業界と比較して、9千億円産業と言われている塾業界の社会的成長・ステータスの向上を期待したいところです。

── 塾業界の問題点とは何でしょう。

宮原 富の再配分が片寄っている点でしょう。売り上げを見ても、やっていることから考えても、塾業界のステータスはもっと高くていい。そのためには、個々の塾が個人商店ではなく、もっとパブリックな存在にならなくては。出版業界にもオーナー企業は多いですが、自社のことだけでなく、業界全体の利益ということについて、きちんと考えています。塾業界もそうあるべきで、それにより社会的な評価も高まり、存在感が増していくでしょう。そうして、高い社会的ステータスを業界全体で身に付け、各塾の講師が塾で働くことを誇りにできれば、さらに気概を持った指導で実績を出していけるようになる。この好循環を導いていくためにも、パブリック化は必須なのです。

── 確かに、塾は日本の民間教育の大きな柱ですから。

宮原 そうです。戦後、公教育が教育の基礎を作り、私学がトップレベルの生徒を育成し、80年代後半には塾が台頭するという流れで、日本の教育は支えられてきたのですから。しかし現在、日本の教育はアジアやヨーロッパ諸国に抜かれ、さらに南米各国にも追い上げられています。この状態を打破するためにも、公教育だけでなく、民間教育機関の塾も、今よりももっと活気あふれる業界となって、生徒を導く必要があるでしょう。

── 公教育は動き始めていますよね。

宮原 はい。まず、東京大学が世界基準にあわせて、秋の入学制度を検討・導入へ動いています。また、大阪では橋下行政が教育再編を訴え、さまざまな改革案が出されています。こういった時代の流れをフォローする役目として、かつて中堅クラス校の学力向上に大きく貢献した塾が、力を発揮しないといけません。

── 日本の教育は世界的に見て、危機だと思われているということですね。

宮原 世界的な水準だけではありません、国内でも問題は出てきています。教育は本来誰でも平等に受けられるものであり、所得による格差があってはいけないのです。それにもかかわらず、今の日本では大きな格差が出ています。この課題を解決するためにも、業界を牽引してくれるリーダー的存在の登場を期待したいですね。

── それは塾の仕事だとお考えですか。

宮原 はい。公立・私立問わず、学校は教育だけでなく、生活指導面も担わなければならず、ともすると先生方の教務レベルを上げるための時間を十分には割けない現状があります。そうした場合、できるなら塾と学校がタッグを組み、塾の講師が学校で授業を行うことで、子どもたちに「塾の先生の教え方はひと味違う」と認識してもらう。一流の塾講師による教科学習指導は、本当に高い水準にありますからね。そうすれば塾講師の意識も向上し、後に続く若い力のある講師の育成にもつながるでしょう。また、公教育と民間教育が切磋琢磨しながら教えることで、授業の質も上がっていくはずです。

デジタル化だけでなく
家庭から世界まで
グローバルな教育の
学研を目指す

── この春から新しい事業を展開されると聞きましたが。

宮原 昨年11月にNTTドコモさんと業務提携し、企画開発を進めています。現在はシステムの開発待ちの状態です。

── 具体的にはどのような内容の教材なんですか。

宮原 小学生・中学生を対象としたスマートフォンやタブレットでできる新しい教育の提案です。低価格に設定していますので、いつでもどこでも学習できるようになり、所得や地域による教育格差をなくしていけるのではないかと考えています。また、高校はマイガクという紙とネット講座を併用した学習システムを活用することができるので、小・中・高を通じたデジタル教材がそろうことになります。内容はかなりのボリュームですので、すべて選択して学んだ生徒は、確実に実力アップします。まずは家庭でこの効果を理解していただき、塾や学校で導入されるように進めていきたいと考えています。

── これを学校の教材として導入すれば、かなりの効果が得られるでしょうね。

宮原 そう思います。私学の副教材に使っていただけないか、まずは導入いただける学校を探していきたいと思います。
教育出版物は相当な数のものが出版されていますが、時代は紙からネットへと移行する動きが加速しています。ですから、現在開発中のものや既存のデジタル教材をベースに、教育のデジタル化を今後も進めていきたいと考えています。実際、NTTさんなどの通信会社は、オンデマンドで通常の授業を家庭学習としてもできるように、システムを組み始めています。ただし、これに関しては、学校のインフラが追いつかないといけません。公教育に関しては、デジタル教材はいったん火がつくと、ものすごいスピードで走ると思います。

── では、それが次の目標ということですか。

宮原 それも含めて、2013年までの中期計画としては増収・増益は当然ですが、教育ソリューション事業の基盤を整備して、学校・家庭・塾を結ぶ『教育の学研』を再構築したいと考えています。学校教材と学習参考書、そして塾の3つをコンテンツやサービス、人材などでつなぎ、学びの環境を整えていきたい。そのための手段として、デジタル化・教育ICT・グローバル化を掲げています。

── グローバル化というと、やはり海外への進出ですか。

宮原 そうです。社内にグローバル戦略室という部署を設置したほか、中国の北京には合弁会社を、香港にもすでに会社を設立し、今後、上海にも設立していきます。提携している市進さんも日本語教室やウイングネットをアジアで展開するなどしており、海外での展開はそういったところとの協力関係をつなぎながら、進めていくつもりです。また国内で東大や京大などの難関大学を目指す生徒に加え、海外からの留学生も増え、その一方で、進学先の選択肢に海外の大学を含める生徒も増えていくでしょう。そういった生徒たちに助力できるような教材やサービスの開発も考えています。学研グループ全体としての数字は、今期は売り上げ805億円、来期は825億円を計画しており、計画達成に向け、全社員が一丸となって頑張っていきたいと思っています。

── 素晴らしい計画をいろいろと聞かせていただき、ありがとうございました。これからのご活躍を期待しております。

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