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2011/9塾ジャーナルより一部抜粋

緊急取材 業界初、ISO29990認証を取得
質の保証がもたらす実利と可能性

  スフィンクス株式会社・伸栄学習会 塾長 青沼 隆さん  
     

 教育分野におけるサービスの世界規格ISO29990が発行されて1年。国内初の認証を取得した伸栄学習会は、千葉県浦安市と市川市で3教室(塾部門)を展開する生徒数約100人の塾だ。認証を得るにはマネジメントシステムを文書化し、厳格な審査にパスしなければならない。高いハードルに費やすエネルギーと費用。それに見合う効果のほどは。学生アルバイトも混在する業界で、サービスの均質化を目指した学習塾の、取得後の効用と可能性に注目する。

※ISO29990の規格適用対象は学習塾、語学教室、民間職業訓練機関、企業内研修機関など非公式教育分野の組織に限られる。学校教育法に基づく学校は適用対象外(アイソス 2011.7月号より引用)。

授業の均質化図りつつ
カウンセリングを充実

 伸栄学習会は塾長の青沼隆さんが30年以上前に開塾した。初めの10年はいわゆる「一人塾長時代」で、授業の質をいかに高めるかに専念。その他の宣伝広告などには一切関心がなかったという。やがて一人で手が回らなくなると、アルバイト学生を講師に採用したが、指導力に「当たり外れ」があることを認めざるを得なかった。

 では、ベテラン講師なら問題がないかといえば、そうとも言いきれない。職人気質ともいえる緻密な授業を行う一方で、保護者への対応がおざなりだったり、提出課題のチェックが大雑把だったり、バランスを欠いたベテラン講師も珍しくない。わかりやすい授業をし、相談にも的確なアドバイスができ、保護者への対応も十分、さらに提出課題のチェックも万全で…と、高度な要求を一人の人間が満たすことに限界を感じた。

 悩んだ末、出した結論は映像授業の導入だった。約10年前、当時としてはまだ珍しく、ソフトは自分で作成し、授業の均質化を実現しようとした。青沼さんは「塾はプレゼンテーション(授業)とカウンセリングで成立する」が持論で、プレゼンテーションは一方向からの知識の伝達であると割り切っている。

 一方、カウンセリングは親身になって、相談者の悩みや迷いを生身の講師が受けとめなければ解決できない。つまるところ、「わかりやすい映像授業ソフトがあれば、授業が下手でもカウンセリング技術があれば、講師として通用する」という。授業の均質化は教務上の問題というより、マネジメントの問題と青沼さんは見ているのだ。

 現在、伸栄学習会では、青沼さんが映像ビデオの制作を引き受け、カウンセリングを専門に行う講師と宿題やノートの取り方をチェックする講師が各1人、合計3人でサービスを分化させている。生徒の側からすると、自分1人に3人の先生がかかわる「逆1対3型」の指導形態といえる。サービスの均質化を求めて生まれた新発想だ。

認証申請は「普段」を
文書化することから

 指導水準が一定以上を保つようになれば、クオリティは保証されるべきと考えるのは当然で、昨年8月に発行された国際規格ISO29990の認証取得に、伸栄学習会は挑戦した。

 認証までの手順について、同会で統括を務める松元秀文さんは、まずは学習サービスマネジメントシステムを確立することから始まるという。事業者が管理すべき業務、提供サービス全般、サービスに対する顧客の満足度などをISO29990の要求事項に従って文書化し、一次書面審査を受けるのである。

 したがって、審査対象となる文書はISOの理念に合致したものでなければならず、事業者におけるトップダウンによるマネジメントでは通用せず、雛型もない。伸栄学習会では基金訓練事業部が文書の作成を担当。「いつもやっていることでも、文書にするのには苦労した」と事業部の泉沢賢司さんは振り返る。学習塾の場合、ISOの要求事項には次のような項目(一部抜粋)がある。

  1. 学習サービスマネジメントシステム
    目標管理、資源の管理、従業員の力量管理、文書・記録の管理など
  2. 学習サービスの提供
    サービスの概要、補修業務、サービスの管理、サービスの評価など
  3. 学習サービスマネジメントシステムの改善
    今後の改善に向けた目標、顧客からの意見への対応、内部監査、マネジメントレビュー、是正、および予防処置など

 これら項目に十分応え、一次審査にパスすれば、文書に記載された内容が実態と合致しているかを現場でチェックする二次審査が待っている。

管理に具体性と実効性
差別化で営業も有利に

 伸栄学習会に、ISOの認証サービスを行うBSIグループジャパンから審査員が派遣されてきたのは、今春。地元浦安市に震災の影響が少なからず残っていた頃である。松元統括は審査当日の模様を次のように話した。

 電話がかかってきて応対すると、その内容とメモを残したかどうか。残したのならどのような内容で、顧客は満足そうだったかなど、すべて受け応えの言葉からチェックされる。

 授業はその日行われるすべての授業が対象で、一部ではなく、最初から最後まで1時間すべてを審査する。講師の授業手法は当然のこと、よく理解できていなさそうな生徒がいれば、その生徒への講師の対応の頻度もチェックポイント。配布物の内容、配布する意味といったことまで、評価はあらゆるところに及んだ。途中、余震に見舞われたが、その対応も然り。

 予想以上の厳しい審査に、従業員は緊張したというが、二次審査に合格した喜びは大きく、認証取得後、予想以上のメリットを感じているという。

 そのひとつは、何と言ってもボトムアップ体制が確立されたこと、および学習サービスマネジメントシステムを文書化したことで、あらゆる管理に具体性、実効性が出たことである。

 また、他塾との差別化を図れる点で営業的利点もあり、ISOへの認識を持った顧客層の獲得に結びついている。また、公的機関では認証の重要性を十分認識していることから、折衝の際など信頼を得やすいという点も見逃せない。

認証後も
サービス向上が使命

 認証後、ISO29990の要求事項は、PDCA(Plan Do Check Act)サイクルによって運用されるため、認証を受けたらそれで終わりというわけではない。毎年、新たな現状改善目標を設定し、達成していかなければならない。審査のグレードは年々高まっていくのだ。

 したがって、認証年度から経年している事業者はより高い質のサービスを保持しているといえる。青沼さんは「学習塾もサービスの品質が生命線」として、今後も日本初のISO29990認証事業者として、さらなるサービスの向上に努めてゆく考えだ。

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