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2010/3 塾ジャーナルより一部抜粋

広告宣伝の主戦部隊 折り込みチラシの相対性を極める

  PS・コンサルティング・システム代表 小林 弘典  
     

 2月初旬あるいは、地域によっては1月中旬から始まった新年度生の募集が、最盛期を迎えています。中学受験が盛んな地域では、新規生の7割、そうでないところでも5割強が3月末までに入塾してくると言われています。学習塾にとって、これから先の1ヵ月がいかに重要か申し上げるまでもありません。皆さんには、それこそ必死になって、募集戦線に立ち向かっていただきたいと思います。

 さて、塾の生徒募集と言えば新聞の「折り込みチラシ」ですが、最近とみに折り込みを軽視する傾向が出てきたようです。環境要因の変化によって、広告効果が低下したせいでしょう。同じように折り込んでも以前に比べ、半分しか集客できない、だから枚数や回数を減らすという話もよく聞かれます。

 しかし、それでよいのでしょうか。

 塾は他のどんなビジネスよりも限定された地域に立脚して成り立つ会員制ビジネスです。地域外からやってくる振りの客はほとんど存在しません。であるならば、広告宣伝の正攻法はミニコミであり、したがって、その主戦部隊は折り込みチラシのはずです。

 ならば、どうすればもっと主戦部隊の戦果を上げることができるのか。

 方法はいくつもあるでしょうが、ここではそのうちの一つ、「折り込みチラシの相対性を極める」について皆さんと一緒に考えていきたいと思います。

 なお、後半部分に批評付きで、全国の12の塾から提供していただいた折り込みチラシを載せておきました。12枚はそれぞれかなり広告効果のあったチラシと聞いています。が、褒めるだけでは批評になりません。ないものねだりを承知の上で、苦言を呈している場合が少なからずあることを、あらかじめお伝えしておくことにします。

■ホームページと折り込みチラシ

 「折り込みチラシの相対性」についてがテーマですから、直ちにこの問題に入っていくのがスジでしょうが、その前に1点だけ注意を促しておきたいことがあります。

「ホームページを立ち上げたんですよ」
「反応はどうですか」
「それが、かなりなもので…」
「よかったですねえ」
「で、チラシを半分にして、こっちにもっと力を入れようかと……」
「……」

 周知のようにここ数年、インターネット上にホームページを開設する塾が増えてきました。すでに8割以上の塾が、何らかの形で自身のHPを持っていると思われます。勢いこんな話も聞かれるようになりました。

 言うまでもなく、HPは立派な広告媒体です。HP経由で入塾してくるお子さん方も少なくありません。とはいえ、一般の塾がチラシを減らすというところまでいくと、いかがなものか…。

 インターネットの世帯普及率が、どの程度かご存じでしょうか。

 総務省が行っている「家計消費状況調査」にIT関連の普及状況を調べる「付帯調査」というのがあります。その2009年第V四半期(7月〜9月)時点の調査結果によれば、パソコンを保有している世帯(二人以上世帯)は全国平均で66.7%、インターネットを利用している世帯は61.5%でした。6割に過ぎません。

 一方、新聞はというと、日本新聞協会のデータをもとに計算すると、同年10月時点で、81.8%との結果が出てきます(一般紙の戸別配達)。

 現時点では、まだ新聞のほうが20ポイントも高いわけです。さらに、ネット利用世帯が、比較的子どものいない若年層に偏っていること、新聞世帯がその反対であることを考慮すると、ターゲット層での差は30ポイントに広がるのではないでしょうか。

 もちろん、HPなど駄目だと否定するつもりは全くありません。高学歴・高収入世帯ほど、ネット利用率が高くなることは証明されています。特殊な専門塾や、一般的な塾であっても成績優秀者を集めたい場合には、HPが極めて有効な宣伝広告の手段であることは間違いありません。加えて言えば、ネットが使える家庭ではほぼ100%、塾に電話をかける前にHPを眺めているはずです。

 問題はHPをどう捉えるか、ではないでしょうか。

「地域の評判を聞く」→「折り込みを見る」→「電話する」→「面談・見学・体験」→「入塾」

数年前までは、これが入塾に至る一般的な流れでした。

「地域の評判を聞く」→「折り込みを見る」→「HPで調べる」→「電話をする」
「地域の評判を聞く」→「HPで調べる」→「電話をする」
「HPで調べる」→「電話をする」

その他にこんなルートも出てきた、こう捉えておくほうが現実的だと思われます。

 そこで結論です。少なくとも一般的な塾では、現時点ではHPを単独の広告媒体と考えるより、折り込みチラシの広告効果を高めるうえでの補助的な媒体、すなわち両者相まって、大きな相乗効果が出てくる媒体と考えるほうが無難である、ということにしておきましょう。そのおつもりで、それに相応しいHPを作っていくことをお勧めしておきたいと思います。

■宣伝広告の相対性

 「折り込みチラシの相対性を極める」に移りましょう。「相対性」などと大袈裟な言葉を使っていますが、難しいことを申し上げるつもりはありません。

 先に、塾は「限定された地域に立脚して成り立つ会員制ビジネス」と書きました。皆さんもよくご存じの通り、塾ビジネスは地理的空間的に利用者が限定されている継続的サービス事業です。まれに、あそこの塾には新幹線で通って来る生徒がいるとか、飛行機で来る子がいるそうだという噂が聞こえてくることもありますが、ほとんどが全くの例外。一般的な塾では塾生の8割が、自家用車か公共交通機関か自転車か徒歩かは別にして、時間にして15分以内に、また9割9分が30分以内に住んでいます。塾には時間距離15分以内に見込客の8割がいるということです。

 逆に、これを消費者の立場から見たらどうなるでしょう。かれらの立場で言うと、自宅から15分以内に通塾可能な塾が複数あり、その複数の塾を比較較量して、通塾先を決定しているということになります。

 ここでもっとも注意しなければならないのは、われわれが「比較較量」されているという事実、かれらがあれやこれや「比べて」塾を選んでいるという事実でしょう。

「あっちの塾よりもこっちの塾のほうがいい」
「いや、こっちよりもそっちの塾のほうがいい」

消費者の塾選びは、現実にはこうした形で行われています。他と比較して、すなわち「相対的によりよい塾」を選んでいるわけです。にもかかわらず、皆さんが折り込むチラシを拝見していると、こうした視点がなかなか見えてきません。

 わが国ではいわゆる比較広告は、ある種のタブーとされてきました。同業者の商品やサービスをあげつらわないことが商道徳上の美徳と見なされてきたと言ってよいでしょう。

 しかし、それで効率的な宣伝広告が可能でしょうか。

 のみならず、人口の密集する大都市では、この季節、少なくとも30を超える塾からの折り込みチラシが家庭に届きます。中都市でも10塾、小都市でも5塾の折り込みがあるでしょう。消費者はそこから一つを選ばなければなりません。選ぶ上での材料を提供しないということは、消費者に対して不親切ということでもあります。

 消費者は比較較量して塾を選んでいる、ならばわれわれはしっかりと判断材料を提供しよう。ここで申し上げたい「相対性を極める」とはこういう意味です。今までよりもエゲツナイ折り込みになるかもしれませんが、そうでもしないと宣伝広告をする意味が半減することも確かです。ここは思い切って、これまでのカラを破ってみる勇気が必要なのではないでしょうか。

■まずは外観で「違い」を出す

 では、極力、「相対性」を意識して折り込みチラシを作るとして、どんな点に留意したらよいのでしょう。二つあります。一つは外観、もう一つは内容。まずは外観から見ていきましょう。

 紙型、紙質、配色、レイアウト、写真、字体、文字の大きさ、こうしたオモテに現れるものすべてを他のチラシ、とりわけ他塾のチラシと似たようなものにしない──原則はこれだとお考えください。

 折り込みチラシというツールで一番大切なことが何かは、すでに皆さんよくおわかりでしょう。消費者が手に取ってくれることです。見てもらえなければどうにもなりません。

 毎日毎日、新聞には多くのチラシが折り込まれてきます。週末などには20枚、30枚入っていることも珍しくないのではないでしょうか。御社のチラシもそうした多数の中の一枚です。他と違っていなければ気付いてもらえません。

 外観で違いを出すというと大変そうに思われますが、実はちょっとした工夫でなんとかなるものです。例えばその一つに、紙質を変えるというのがあります。

 折り込みには普通、60kg前後の薄いコート紙が使われています。他の業種を含めて7割、塾のチラシの場合は8割以上がこのタイプでしょう。そこで、例えば100kg以上の厚紙を使ったらどうなるか。間違いなく目立ちます。それでいて、費用増はおそらくB4判1枚数十銭程度。1万枚刷っても、数千円の追加で済むはずです。多少負担は増しますが、わずかでも広告効果が上がれば、十分元は取れるのではないでしょうか。

 念のために申し添えておきますが、いかに他のチラシとの相違が欲しいといっても、他のチラシ、とりわけ他塾のチラシより明らかに劣るという相違ではいけません。もちろん、これにも例外があり、すでに何回か立派なチラシを出したうえで、もう一回という場合や、地域の誰もが知っている立派な塾舎を構えている塾が、ささやかなイベント告知をする場合などは別ですが…。

■価値を提示してアピール

 外観上の「相対性」について、これ以上の多言は不要でしょう。常に他の折り込みチラシ、少なくとも他塾のチラシより目立つチラシを作るということを意識していただければ結構です。

 次にもう一つの、内容面での相対性です。

 折り込みの紙面は通常、「キャッチコピー」「写真」「商品とその説明」「アピール(売り文句)」「塾名・地図・連絡先」の5つのブロックで構成されています。この「キャッチ」と「アピール」の部分に何を書けばよいのか。塾の折り込みチラシの良否はここで決まってきます。

「あっちの塾よりもこっちの塾のほうがいい」
「いや、こっちよりもそっちの塾のほうがいい」

繰り返しになりますが、消費者の塾選びは、現実にはこうした形で行われています。子どもであれ保護者であれ消費者は、通塾可能な塾の中からこのようにして「相対的によりよい塾」を選んでいるわけです。

 では、何を基準に「よりよい」を決めているのか。どんなものさしを使っているのか。

 塾は本音ビジネス、実利ビジネスですから、第一義的には「学校成績の向上度」と「上級校への合格学力」でしょう。通塾の容易さ(近いか遠いか、交通機関は?)というのがその前にあるはずですが、ここでは省きます。

 一義的には、こうした究極的な「価値」が優先されるはずですが、意外に、それを手に入れるための手段のほうを重く見る消費者も多いかもしれません。「授業が楽しい」「厳しい」「成績のいい子が通っている」「有名大学卒の講師が多い」「大きい」「たくさんの学力別編成クラスがある」「教材や設備がよい」「指導時間が長い」。いずれも言うまでもなくそのあとに、「だから、成績が上がるのではないか」や「だから、いい学校に合格できるに違いない」という確信のような観測が付属しています。

 また、これとは別に、近頃ではコストパフォーマンスに価値を置く消費者も多くなりました。「さほど内容は変わらないはずだから、安いほうが…」という考え方です。

 申し上げたいことはもうおわかりでしょう。広告効果のある折り込みを作るためには、こちらでなんらかの価値基準=ものさしを提示し、そのうえで「わが塾は地域の他のどの塾よりもこの点で優れている」とアピールしなければなりません。

 その際のアピールの仕方には、明示的な載せ方、すなわち具体的な塾名(あるいはA塾、B塾、C塾としてもよい)をあげるやり方と暗示的な載せ方、すなわち「地域で一番」「学区で一番」という二つの手法がありますが、いずれにしても「他よりも…」が絶対的に必要なことは同じです。

 「そんなこと言ったって、ウチは小規模だから、何もないんじゃないか」と心配される方もいらっしゃることでしょう。

 そんなことはありません。少数であれなんであれ、現にあなたの塾には子どもが通ってきています。他と比較して、あなたの塾を選んできてくれているわけです。ご自分で見当がつかなければ、子どもたちに聞けばいい。必ず何か光るものがあるはずです。それを意識して磨けば、もっともっと光っていくのではないでしょうか。

 以上、簡単に「折り込みチラシの相対性」について見てきました。くどいようですが、お客様は折り込みチラシを見比べて、塾を選んでいます。ならば、この点なら地域でウチが一番という点を全面に打ち出して、そこを徹底的にアピールするのがもっとも効果的ということになります。まだまだ募集戦は続きます。これをヒントに、広告効果がもっとも大きい折り込みチラシをお考えいただければ幸甚です。

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