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中学・高校受験:学びネット

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2009/3 塾ジャーナルより一部抜粋

全国学力テストの結果からみる学びの動機付けの重要性

  学研教室主催  
     
 2008年12月14日(日)、学研教室富山事務局の主催で教育評論家・小宮山博仁氏の講演が行われた。富山県内の教育関係者や親が60人ほど集まり、北日本新聞の取材も入るなど、大変な盛況だった。

  この日の小宮山氏の講演の概要は以下の通り。参加者はみな熱心に聞き入っていた。

(1)2008年全国学力テストと東京小6生の学力

(1) 学力低下は公教育だけの問題ではない。

  公教育(公立学校)だけではなく、塾や地域社会、社会にも責任があり、公教育バッシングだけでは学力の向上は望めない。
  親子のコミュニケーションが、きちんとした会話で行われる家庭環境で育った子どもの学力は高い。また、家庭の本棚に本がたくさんあったり、家族で博物館や美術館、音楽会などに行く機会が多い、といった、文化資本が豊かな家庭の子どもは学力が高い傾向にあるが、同じことが地域社会にも言える。

(2) 秋田と東京の小6生の全国学力テストを検証

  A問題:知識の多寡を確かめるテスト
  B問題:PISA型問題。

読解力、記述力を問うテスト→知識を活用して、自分の考えを表明する能力を計る。→この能力が高いと、労働効率がよく、企業社会への貢献が大きい。
  一般的に、A問題よりB問題のほうが平均点が下がっていたが、秋田はA、Bとも東京を上回り、富山、福井なども東京よりは上だった。
  また、文科省が全国学力テストと並行して行った家庭環境調査では、東京都の小学生の進学塾への通塾率は34.2%となっている。
  現在の中学受験では、公立小学校の教科書の5〜10倍の時間が必要となる。また、子ども1人当たりの教育費も、東京は秋田の12倍かかっているが、全国学力テストの結果に結びついていないことから、「学びの動機付け」の重要性が注目されてきている。
  東京と秋田を比べた場合、文化資本は東京のほうが豊かであり、平均所得も東京のほうが上回っている。条件面では、東京のほうが有利なはずでありながら、このような結果になった原因は、「進学塾の学びの動機付け」にあったのではないかと考えられる。

(3) なぜ、今までの大手進学塾では、一部の子どもしか伸びないのか。

  通塾をしている東京の小学生の多くは、中学入試のために勉強をしている。中学受験をしない小学生よりはるかに高いレベルの勉強を東京の小学生はやっている。
  学習内容が公立の小学校よりも多いため、必然的にカリキュラムは早くなり、本来小学生では理解することの難しい抽象度の高い内容(「速さ」「割合」「比」など)にも小学4年生、5年生で取り組むことになる。
  しかし、多くの子どもにとって「早すぎる先取り学習」はダメージが大きく、意味がわからないままどんどん先に進む学習方法では、一部の子どもしか伸ばすことができない。
  また、進学塾では、テストの成績によって、クラスや席順まで決まるといった方法で過度の競争意識を持たせるところもあるが、この競争意識が子どもをダメにする場合が多い。

(2)2つの学びの動機付けの違い

(1) 内発的動機付けとは…主に学校の学び方

  「学ぶことに意義を持たせれば、子どもは自ら勉強する」というのが内発的動機付けの定義ではあるが、それだけでは内容が定着しにくいというデメリットがある。

(2)外発的動機付けとは…主に進学塾の学び方

  豊かな社会における外発的動機付けには、「受験」「仕事」「プライド」の3つがあるが、「仕事」は生涯続くものであり、「こういう仕事に就きたいから、勉強を頑張る」というような外発的動機付けは悪いことではない。しかし、希望校に合格するためだけの勉強の場合は、合格すれば勉強をやめてしまう。また、プライドのための勉強、競争のための勉強では精神的に疲れてしまい、学ぶこと自体に意義を感じることはできない。

(3)学校のメリット、塾のメリット

  学校では、基本的に内発的動機付けの勉強を実践しているので、学ぶ面白さを知ることができるというメリットがある。一方、塾には、学校教育だけでは不足しがちなトレーニングができるというメリットがある。

(3)学力低下と学びの動機付けの関係

 学校教育では内発的動機付けを実践してきたが、「面白い授業」をやりっぱなしでは学力を伸ばすことはできなかった。1990年からは、「意欲・関心・態度」という評価が重視されるようになり、本来、学習内容を定着させ、活用するためには必要であったトレーニング的なものに対して、「詰め込み教育」だという批判が出るようになり、子どもの学力低下を助長する結果につながった面もあった。

(4)内発的動機付けには2つある

(1) 他律的内発的動機付け

  「先生に面白い授業をやってもらいたい」という受け身の姿勢になってしまうのが他律的内発的動機付けであり、大人に教えてもらうことに慣れてしまう。これでは自ら学ぶという姿勢は育たない。

(2)自律的内発的動機付け

  面白い授業を通して新しい知識を得た後に必ず練習、トレーニングをして問題が解けるようにする。「わかった」→「トレーニング」→「できた」という流れの勉強は、子どもに達成感を与え、それが自信につながり、自ら学び続けるようになる。これを自律的内発的動機付けという。

(5)スポーツ選手はどのようにして技を向上させるか。

 スポーツでは、コーチからテニスの技術を教えてもらったら、練習を繰り返してこそ、ラリーが続けられるようになる。すると面白くなって「また次にチャレンジしたい」と思うようになる。同じことが勉強でも言える。

(6)学力向上のための家庭の役割

(1)大人が子どもの学力を低下させることがある。

  家で親子学習をするときに、子どもを追い詰めるのは逆効果になる。子どもに限らず、人間はストレスの多い環境では、能力を十分には発揮できない。親子げんかになりそうなときは、塾に通っているならば、塾の先生に任せてしまう。そのほうが子どもと親のストレスはずっと軽くなる。

(2)遊び・習い事をうまく活用し、学習環境を向上させる。

  家庭に本棚を置く、部屋に日本地図や世界地図を貼っておく、地球儀を置くなど、普段の生活の中でさまざまなものに関心を持ちやすい環境を作る。図書館、美術館、博物館などにも連れて行く機会を作り、いろいろなものを見せるようにする。
  さらに、食事のときはテレビを消して、子どもとのコミュニケーションをしっかりとる。「今日は、なにやったの?」といった何気ない会話は、言語能力の発達させる効果もある。
  塾と習い事で1週間のスケジュールが全部埋まってしまうことは避け、適度に遊びの時間を確保することが必要。遊びの中で、さまざまな工夫をすることを子どもは覚えていき、それは学力向上にもつながっていく。子ども同士で大人を介在させずに遊ぶ時間や空間が、子どもには必要である。
  ひたすら勉強だけをしてきた人よりも、子どもの頃は適度に遊びも体験しているような人のほうが、いざ社会に出た場合、仕事もできることが多い。

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