今回のテーマはチラシ。
まず最初に、小林氏から、「ターゲットを絞って作ったチラシでも、その狙いが適切でなかったり、的が外れたりしていると集客は望めない。昨今の経済状況下では、こうした的外れなチラシで生徒募集のキッカケを失うことが致命傷になりかねない。自社のチラシが意図に反していないか、整合性はあるのかどうかを議論しあうのが今回の目的だ」との話があった。それを受けて、先行きの見えない現状を打破するにはどのような手段が有効なのか。辛口な指摘も飛び交う真剣な議論がなされた。
参加したのは28塾、44人(オブザーバー含)。参加者は、まず専修学院・藤代校に集合。同校を見学した後、勉強会の会場となる専修学院・龍ヶ崎本部校に移動した。
最初に、専修学院・庭野至学院長より挨拶と塾の紹介があり、その後勉強会がスタート。勉強会は、参加者が指名順にチラシ(原案)を提示し、このチラシの狙いを説明。それに対して、質問やアドバイスをする形式で進められた。
以下、その中でも興味深かった質疑応答を紹介する。
秀峰スクール
(静岡県富士市)金原 伸充氏
1月末にまく中学生の定期試験対策に特化したチラシ。2月初旬には、年中から小学4年までの「実感算数クラス」と、新中学1年を狙ったカラーチラシをまく予定。新1年生を狙うのは、中学3年生からの入塾が少ないため。2月には、塾全体を紹介する手書きチラシも配布する。
●評価と質疑応答
実感算数の効果についての質問があり、金原氏は「年中でも2桁の計算ができる子どもがいる。レベルは上がってきたと思う」と話す。このクラスを終了した子どもたちが通常のクラスに移行することもあり、システムとしては理想的。こうしたクラスに通わせる教育熱心な保護者とのネットワークができるのも有意義だ、という声も。
また、実感算数のチラシは学ぶ子どもの顔が大きく出ており、リアル感があるのもよい(秀峰スクールの場合、身内の子どもの写真を使用)。「地域密着型の塾では、地元の子どもたちの顔が出ていることが大きな宣伝効果を生む」との河野氏。特に、地域中学トップクラスの男子生徒を並べると、一番反響があるとの意見も出された。チラシに載ると子どもたちは喜び、そのチラシを保管してくれるほどだが、事前に保護者に確認をすることが重要。初めての試みという手書きのチラシは費用対効果があるか微妙という指摘もあった。
奨学HIKARI塾 優
(滋賀県東近江市)大塚 裕亮氏
中間から上位層の生徒を狙ったチラシ。テストの点を打ち出すと下位層の生徒が集まるので、特待生制度をうたい、上位層の集客を図りたい。自塾は「とことん徹底指導」を目指し、授業後も残って勉強する生徒も多い。12時を過ぎて、日付が変わっても、授業料は追加しない。居残りをしない優秀な生徒から不満が出るので、特待生制度として月謝を割引している。チラシ(原案)では「??」になっている塾内平均点は、これから入れる予定。
●評価と質疑応答
「塾内平均点」がわかりにくいという指摘が多くあった。この平均点で、塾のレベルを示すことができるのか疑問。塾で一番人数が多い学校の定期テストの平均と塾生の平均を比較するのが、わかりやすく効果的という意見が出された。
河野氏曰く「『補習塾』のイメージを強く出してしまうと、下位層の生徒が多いと思われてしまう。成績のいい生徒の顔や名前ならベストだが、上位の生徒がいない場合はやっても効果は期待できない」とのこと。その場合は、どのくらい順位が上がったかを示す方法が有効。
りんご塾
(滋賀県彦根市)田邉 亨氏
1月下旬に初めて、彦根市全戸に配布されるフリーペーパーに広告を出す。「中1の1学期の中間または期末テストで5教科400点以上保証」を打ち出し、できなければ2学期以降の授業料をできるまで無料にする。以前成績保証をしたとき、生徒が増えたので、今回もそれを狙う。具体的な「トップ何人がいる」は競合塾がやっているので、あえて避けた。同時に自著「算数パズルで難関中学の入試問題がスラスラ解ける」(エール出版)を紹介し、フリーペーパーにクーポン、本のプレゼントも付ける。
また、定期的に保護者にメルマガを送付し、塾が一生懸命取り組んでいることをアピールしている。
●評価と質疑応答
5教科400点以上保証は、意味がないのでやめたほうがよい。すでに大手の競合塾が同じ方法を打ち出しているので勝てない。小林氏から、りんご塾は特化している「算数パズル」をもっと活かすべき。代表「田邉亨」の直接指導を売りにし、競合塾の生徒もこのクラスを受けにくるようなブランドに育てれば、反響があるはず。フリーペーパーはチラシと違い、冊子として残るので、賞味期限が長いのが魅力。しかし、飲食店の広告が多いフリーペーパーへの掲載はイメージダウンになりかねないので、考慮が必要。
地方のものは広告料が低価で、比較的出しやすいが、都市部のフリーペーパーは高額で手が出せないといった意見もあった。
関西の個別指導塾
冬期講習の募集のチラシ。前回「崖っぷち大歓迎」としたところ、本当に下位層しかこなかったので、今回のキャッチコピーは「鬼に金棒」にした。また裏面に、各学校の有名な生徒の写真を入れたら、その生徒の紹介で入塾が増えた。これまで片面はキャッチコピーだけだったが、今年は軽めのイラストにし、さまざまな集団指導の塾を見学した後、やはり個別の「個別指導塾」がよい、という流れに持っていきたい。
●評価と質疑応答
チラシ全体のイメージはよい。「個別授業」というのが、他塾との差異化を図れるポイントなので、それをもっと説明っぽくなく、目立つようにしたらよい。これでは「指導」と読めてしまうという意見が。また「先生1人生徒1人」のキャッチコピーなら、写真に写っている空きイスはいらない。個別授業の写真を大きく載せるだけでもイメージは膨らむ。またイラストも集団塾の違いが、わかりやすく伝わってくる。芽育学院のチラシは、新しいヒッカケが入っていて、いつもうまいと思う、という感想も寄せられた。
育伸ゼミナール
(香川県さぬき市)蓮池 嘉昭氏
生徒数を伸ばしたく、2009年の新年度生募集をうたったチラシ。前面は大きく合格実績を掲載し、裏面ではその秘訣を細かく説明した。生徒一人ひとりにオーダーメードのプリントを作ることで、弱点を克服させることをうたっている。
●評価と質疑応答
シンプルに合格実績を載せているのは、斬新かつ保護者にわかりやすくてよい。しかし、各大学の合格人数がないのは不親切。たとえ1名ずつであっても、「小さな教場から〜」というフレーズを入れれば売りにつながる。
一番上の「新年度生募集」のキャッチは違うものに変えたほうが良いのでは? というアドバイスも。また、ある塾長からは「問い合わせ先が携帯番号になっているのは常識外れ。これでは保護者が電話しづらい。固定電話から転送する方法に切り替えるべき」との辛口の意見もなされた。
総合学習室アビリティ
(福島県福島市)佐藤 朋幸氏
冬期重点プレミアム講座のチラシ。前面に各中学校のテスト実績を掲載した。チラシの役割は、塾に興味を持ってもらうことであり、詳細はHPへと誘導。その後、説明会への問い合わせにつなげるものと位置づけている。折り込みはリビング新聞に入れ、春先に2回。もっと回数を増やすべきか検討中。幼児部から高校部まであるが、小学部は紙面を分ける必要があるか考えている。
●評価と質疑応答
ハイグレードな塾のイメージに、紺と金の色使いがマッチしている。また、厚めの紙が一層高級感を出しているのが他塾との差別化になる、と評価された。HPへ誘導するのであれば、WEBも同様の高級感を出す必要があり、かつHPは他塾との比較されやすい媒体なので、それを意識した作りにすることが重要とも。「授業やシステムについては、あらかじめHPで確認してもらい、面談では塾の説明を省き、子どもの話をメインに聞ければなお良いのでは」という河野氏。惜しいのは、テスト実績で、アップ後の順位しか掲載されていないこと。どのレベルからアップしたのが伝わらないのと、単調に同じ矢印が並んでいるのは気になるという声も上がった。
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