基調講演「埼玉県立高校入試制度改革」
講師 小北斗代表 岩佐桂一氏
埼玉県では平成15年から、毎年のように入試制度の改善が実施されてきました。その成果として、入試制度の自由化が実現されましたが、課題もいくつか残りました。今回の公立高校の入試制度改革は、学力低下を食い止める、中学校の勉強を高等学校につなげていくということを最大の目的として提示されました。入試日程を遅くして3学期の授業時間を確保する、前期試験で5教科の学力検査を実施するという点が大きく変わります。実施は、平成21年度の予定です。以下、骨子案を順に見ていきます。
1.入学者選抜の日程を変更
埼玉県は、入試日程が他府県に比べると非常に早く、平成20年度までは前期募集の面接等実施日は2月1日、2日、入学許可候補者発表は2月8日です。後期募集の学力検査実施日は2月26日、27日、入学許可候補者発表は3月6日です。これを次のように変革します。
前期学力検査等実施日 2月中・下旬
入学許可候補者発表日 2月下旬
後期学力検査等実施日 3月上旬
入学許可候補者発表日 3月中旬
2.前期募集で5教科の学力検査を実施
これまで前期募集の選抜方法は、面接(必須)、調査書(必須)、総合問題や作文、適性検査(選択実施)などによるものでした。5教科入試を受験している生徒は全体の5割で、これが埼玉県の学力低下につながっているのではないかという懸念がありました。平成21年度からは、募集人員の多い前期募集で5教科の学力検査を実施し、調査書(必須)、面接・作文・適性検査など(選択実施)と合わせて選抜します。また、各高校の選抜基準を事前に公表します。
3.前期募集の募集人員を増やす
前期募集では従来、総募集人員の約40%しか合格できず、高すぎる倍率が問題となっていました。平成21年度からは、募集人員が総募集人員の80〜90%となるように範囲を設定します。
4.後期募集の学力検査は3教科
前期募集で5教科の学力検査を実施するのに伴い、志願者の負担軽減のため、後期募集の学力検査は3教科にします。また各高校の選抜基準は、前期募集と同じく事前に公表されます。平成20年度までは後期の募集人員は総募集人員の約60%ですが、平成21年度より10〜20%になるよう範囲を設定します。
入試日程においては、いくつか考案されていますが、現在有力な案は、2月19日、20日が前期試験、合格発表は27日、後期試験入試日程は3月6日、合格発表は3月13日です。この入試日程に変更になると、併願の私学は、後期募集の合格発表後、3月16日の中学校卒業式よりも後に手続き日を設定せざるを得ず、果たして2週間で受け入れ準備が整うのかどうか、混乱が予想されます。また、私学のトップ校は影響はないでしょうが、中堅校は、前期試験で多数の生徒の進路が決まってしまうので、大きな打撃を受けることになるでしょう。 |