キーワードは、自己成長と社会貢献
株式会社ウイザス(第一ゼミナール・第一高等学院)
代表 堀川一晃 氏
創立30年を迎えて改革を推進
株式会社ウィザスは創立して30年が経ちました。再度見直す時期に来たのではと考え、改革を推進しているところです。まずは、柱となる「コーポレートビジョン」、並びに「運営の基本的な視点」についてお話ししようと思います。
コーポレートビジョンは、「"社会で活躍できる人づくり"を実現できる最高の教育期間を目指すこと」です。これは生徒ばかりでなく、600人の社員が自己成長を行い、さらに活躍できることを目指しています。
次に、運営の基本的な視点として三つありますが、一つ目は、「称賛の教育・称賛の運営」です。これはよくやっている、がんばっていると思えば、どんどん言葉にしようということであり、生徒ばかりでなく社員同士でも褒め合おう、という考えです。日本人は褒めるのが苦手で特に大人になって身近な相手を褒めることは少ないと思います。しかし、褒めることでやる気が出たり、成長を促すことにもなるので、非常に大切に考えています。第二に、行動指針として、「積極性(ポジティブ)・信頼・素直・考え抜く・感謝・尽力」を掲げています。「信頼」は、人から信頼してもらうためには、まず自分から信頼していこう、という意味を含んでいます。また、「考え抜く」は、ベストを超えるためにはどうすればいいか、考え抜く、ということです。例えば100mを12秒で走ることができたとして、ベストを尽くす、とは12秒でOK、ということです。我々はそれをいかに11.5秒にするのか、ベストを超えられるのか、に挑むべきであり、そのためにはどうすればいいか、常に考えよう、ということです。最後の「尽力」とは、自分だけのための「努力」ではなくて、人と自分のために力を尽くせ、という意味です。
三番目ですが、本年度の全社テーマとして「人間力の発揮」(能力の発揮+人間性の発揮)を掲げています。人は、心が動かなければ、行動しません。私はよく社員に「職責は何ですか?」と聞きます。職責は、人を心から動かすことです。当社では社員研修をよく実施ますが、単なる研修ではなく、一人ひとりの社員が、自己成長し、自分が変わり、人の心を動かせるような人になるための研修を心掛けています。なお、経営の細かい点については「30のセオリー」としてまとめています。
1/168の追求
私は26歳の時、あるきっかけで市会議員になりました。当時公立の小中学校へ何度か行く機会があったのですが、私は生徒の様子を見て、「こんな状態では、日本の未来はどうなるんだ!」と思いました。それで、何かしなければと思い、市会議員は1期でやめ、開塾したわけです。生活のためにやったわけではなく、何か子どもたちのためにしなければならないという思いだけでした。学習指導の経験も塾経営のノウハウもありませんでしたから、3年で5教室出していましたが、赤字続き、5年で10教室になって、やっと黒字になりました。しかし、その5年間というものは、借金が膨大にふくれ上っていました。黒字になってほっとしましたが、あの5年の日々以上にスリリングなものはないと今でも思っています。
さて、当初から私には仕事をする上で、ひとつのテーマがありました。それは「1/168の追求」です。168は、24時間×7日、つまり生徒の1週間の生活時間のことで、1/168とは、私たちがかかわる時間です。1/168をどのような時間にするのか、その限界を超えるにはどうすればいいのか、考えながらやってきました。もちろん最初は、学習指導を充実させることばかりを考えていて、数年経って意欲や能力開発に対する視点を持つようになってきました。能力開発としては、7年前、速読に取り組みました。学習指導のほかに意欲や能力開発の視点を持つことで、1/168の限界を超え、167/168に影響を与えることができるようになってきたのではないかと思っています。
現在の事業ですが、進学塾の第一ゼミナール、個別指導のファロス、高卒認定予備校の第一高等学院、幼児英語のブルードルフィンズの4つを主に展開しています。第一ゼミナールは120校あり、第一高等学院は、広域通信制高校のウィザス高等学校を含みますが、生徒は3,000名になりました。個別指導のファロスは、最初の導入部分に能力開発として速読を10分間取り入れるとともに、先生に頼りすぎるというデメリットを解消するシステムで、非常に好評です。
将来設計教育の事業化
近未来については、「将来設計教育の事業化」を考えています。現在ニートが85万人、フリーターが300万人おり、大きな社会問題になっています。当社でも、通信制高校に入学する生徒は、多くは引きこもりや不登校児です。ニートは引きこもりの人が多いのですが、そういう状態で大人になると、社会復帰するには大変困難です。この事業は、NPOを事業主体として、指導員を研修・認定し、派遣するものです。生徒に「将来は何になりたいか?」ということを常に考えさせ、前向きに将来を見ることで今、そのためにはどのような勉強をしなければならないか、勉強の動機付けにつなげていきます。
そのほか「高卒認定資格」に関連し、10月の「第1回全国統一学力判定試験」実施に向けて準備を進めています。
最後に、以前、塾は「必要悪」と言われたことがありました。我々はあえてその中に飛び込んだ同志でもあります。競争し合うことが常ですが、時には経営者が集まり、情報交換をすることで、成長のためのヒントが見つかったり、マーケット自体を拡げるきっかけにもなるのではないかと考えております。今回のように交流する機会が増えることを願っています。 |