Subject1.「2006年度/関西地区私立中学校の入試展望」
―入試日程の新たな展開と志願者動向―
株式会社受験情報システム
代表取締役 高橋 伸和 氏
2006年度入試の全体像
5月の近畿私立中学校高等学校連合会代表者会議で、「2006年度は近畿地区統一入試を実施、1月14日を開始日とする」と決定された。その結果、従来「事前入試」として捉えられてきた、奈良・和歌山・滋賀地区入試と、京都・大阪・兵庫地区入試が"バッティング"し、新たな入試構造を創出することになった。
長らく関西は事前入試のある併願受験の恩恵を享受し、受験した子どもは必ずどこかの私学へ進学できるという構造をつくってきた。しかし、「統一開始日」によりそれは崩壊し、未体験の入試が実施されることになる。また、これらを受けて多くの私学が「入試制度改革」に取り組んでおり、志望者動向や、各私学の難易度に変化が見られるのは確実の状況となった。
2006年度は事前入試については、唯一岡山県下校が候補にあげられるが、遠方で通学しにくいこと、1/7に岡山・東大コース、1/8に岡山白陵と連日日程となり、1泊受験は体力的にきついため、受験者数は、増加傾向にはあるものの、大幅増は見込めないと思われる。しかし注目すべきは大阪桐蔭の岡山会場における「ユニーク入試」である。これは業界に大きな波紋を投げかけているが、まだ大阪私学連合会でも協議されており、実施については今後注目していかねばならない。
さて、各地域ごとの入試制度の全体像を見てみよう。まず、和歌山は近畿大学附属和歌山が1クラス分の定員増を実施し、これを受けて開智は後期入試を設けたが、志願者は近畿大学附属和歌山に流れるだろう。女子校の和歌山信愛女子短期大学附属は、防御として1/13に入試を実施するが、翌日は大阪の本命校の入試となり、受験者増は考えにくく、デメリットのみの防御と考える。開智はレベルダウンし、信愛とともに繰り上げ合格を出さねばならない状況になるかもしれない。
京都は前倒し傾向が多く、洛南の共学化など新設入試も多い。大阪の高槻は、前倒し
になり、六甲との併願受験が可能となった。大阪の女子校は22,2%が先送り入試であ
るが、先送り入試を実施している学校は、生徒募集に苦労している学校であるこ
とがよくわかる。共学校でも21日以降に実施する学校は同様のことが言える。兵庫は
大きな動きはあまりない。
併願受験の新しい潮流と新展開
併願受験の新しい潮流については、次のようになると予想する。
まず、難関上位校・男子予想併願パターンは、「入試教科取捨選択型受験」となる。
最難関校は、初日の1/14〜1/16に集中しており、この3日間は、後期日程という概念は一切入らず、従来のように科目数が異なる学校を受験することもない。そして17日以降は、これらの合否結果により受験する学校を選択するため、併願校となる私学のレベルが昨年と変化する可能性がある。六甲は、これを想定し、3教科型に変えている。
入試科目が3教科の男子トップ校では、1/14に灘・甲陽学院、1/16は西大和学園・洛南高等学校附属のいずれかを受験する「フラット志向型受験」になる。同じ1/16の東大寺学園は4教科入試であるため、灘あるいは甲陽学院の併願校とはなりにくく、志望者は減少するだろう。
一方、4教科型では、1/14に大阪星光学院、1/15に西大和学園、1/16に東大寺学園と「右肩上がりの受験」となることが予想される。3教科・4教科ともに受験できる西大和学園は、1/14の受験校を考えれば、4教科で受験する方が歩止まりは良いだろう。また、奈良の奈良学園、帝塚山(英数)は今後は大阪から受験しないため、志願者は激減、いかに地元の生徒を集められるかが、ポイントになってくる。
次に、難関上位校・女子予想併願パターンは、「本命ブランド重視型併願受験」になる。第1志望は老舗ブランド校であり、同志社・立命館系列校VS難関進学校の対比構造は深化する。また押さえ校(併願校)は、定番の併願校VS期待の新進勢力(大阪学芸、大阪桐蔭、須磨学園など)の対決になるだろう。特に京都では、ブランド志向が根強く、偏差値60以上は、同志社、60に届かない場合は同志社女子を選択するほどである。さらに同志社・立命館が小学校を開校したことで、人気はより高まっている。来春には洛南高等学校附属は共学になるが、ブランド校重視傾向が強いため、女子はあまり受験しないのではないか、と予想している。なお、同志社は来春1クラス40名から36名の少人数制クラスにするため、定員を32名減らす。必ず難易度が上がるので、注意したい。また京都女子も10年一貫のコース(30名定員)を新設する。募集人員は変わらないため、UL、USコースは難易度が上がると思われる。
ところで、中堅上位校・男子予想併願パターンは、「開始日(本命校)重視チャレンジ型受験」である。開始日重視で、合格すれば2校めは第一志望と同等レベル、もしくは高レベル、17日以降の後期日程は、完全なチャレンジ志向型受験になるだろう。
最後に中堅上位校・女子予想併願パターンは、「本命校重視短期集束型受験」になる。女子校は入りやすいため、開始日重視の強気の受験で、合格すれば次の試験は受けないという短期収束型になりそうだ。よって、17日以降の後期日程は、「定員充足入試」になると考えている。 |