サイト内検索:
 
中学・高校受験:学びネット

 学びネットは、中学、高校受験のための情報ページです。学校紹介や塾経営にお役立て下さい。

今月号の紹介 学校散策 塾長のためのマンスリースケジュール 購読案内 会社案内
特集・スペシャル
   
2005/7 塾ジャーナルより一部抜粋

教育改革シンポジウム 激変する教育
── 中教審答申と教育特区検証 ──

  2005年4月18日(月) 於 衆議院第二議員会館第1会議室
主催 民間教育連盟
 
     
 
学力低下を始めとして不登校・ニートなど数多くの問題を抱え混迷する日本の教育。これに対し文部科学省は学習指導要領の見直しやバウチャー制度の検討を開始。一連の教育改革を急ピッチで進めようとしている。
「民間教育事業者と政治の窓口」として活動する民間教育連盟(森本一会長)は4月18日(月)、「激変する教育」をテーマに教育改革シンポジウムを開催。文部科学大臣政務官の下村博文氏や中央教育審議会委員の梶田叡一氏らを迎え、中教審答申と教育特区に焦点を当てたパネルディスカッションなどを行った。

 今回のシンポジウムは、第1部講演会と第2部パネルディスカッションの2部構成で開催された。

総合司会を務める武田利幸幹事長が開会を宣言した後、森本一会長が会長挨拶に立った。森本会長は「株式会社が学校を設立するなど、数年前には考えられなかったことが実現している。私たちはこれまで以上に民間教育事業者の声を行政に反映させ、民間教育の発展に貢献したい。そのためにもより多くの方々に加盟にしていただきたい」と訴えた。
第1部は「現場からの報告」として、筒井勝美副会長(英進館館長)が「学力低下と理数教育の崩壊実態」と題する講演を行った。筒井氏は学力低下問題が表面化する10年以上前から「ゆとり教育」批判を展開してきた。本誌で好評連載中の「技術立国崩壊の危機」の執筆者でもある。また「月刊現代」(講談社)6月号に「35年で義務教育の学習内容は半減した」のタイトルで、その主張が掲載されている。

 講演のなかで筒井氏は、「学習内容の3割削減は1992年と2002年の2回行われており、現在の学力低下は1992年の1回目の削減に起因している」と、具体的事例を用いて解説。2002年に実施された2度目の3割削減が今後及ぼすであろう影響を危惧した。また「教育の良し悪しの結果が出るには30年かかる。学力低下やニートなどの課題に、付け焼刃的に対応するのではなく、根本的な見直しと学校・家庭・社会での全体的取り組みがなされなければならない」と言葉を結んだ。
この講演を受けて、シンポジウムは第2部「パネルディスカッション」へと進んだ。

第2部 パネルデスカッション 「中教審答申と教育特区検証」

■パネラー(順不同・敬称略)
下村博文(文部科学大臣政務官・衆議院議員)
梶田叡一(中央教育審議会委員・国立大学法人兵庫教育大学学長・学校法人聖ウルスラ学院理事長)
鳥海十児(株式会社朝日学園学園長)
鈴木英敬(経済産業省経済産業政策局産業構造課課長補佐)

■コーディネーター
松田邦道(民間教育連盟副会長)

松田
いま日本の教育が大きく変わろうとしています。本日はその大きな要素である中教審答申と教育特区検証を中心にディスカッションしていただきたいと考えます。まず最初に下村政務官から現状報告をお願いいたします。

下村
現在私が政務官室において文部科学省の若手メンバーと勉強しているテーマが2つあります。その1つが「バウチャー制度」。これは1年ほど前に規制改革・民間開放推進会議から文部科学省に対して問題提起されたものです。
バウチャー制度は、学校ではなく教育を受ける本人に補助金が給付される制度ですので、子どもは経済的ハンディなしに公立・私立の別なく学校を選択できます。私はこれが本来の平等であると考えます。しかし、いま一気にバウチャー制度を全国に導入すると、教育委員会や私学などの反対もあり、混乱が予想されます。そこでまずシミュレーションするために、自治体(都道府県単位)に手を上げてもらい、その自治体の高校での導入を考えています。
勉強会のテーマの2つ目は「義務教育のあり方」です。 昨年、私は党派を超えた国会議員有志とともにイギリスの教育改革の現場を視察して参りました。今年3月に出版された「サッチャー改革に学ぶ教育正常化への道 英国教育調査報告」(PHP研究所)は、その報告をまとめたものです。
イギリスでは義務教育についてのすべての責任を国が負っています。学校はコミュニティスクールを徹底したようなシステムで、経営権・人事権は各校の校長にあり、それを地域がバックアップしています。国が学力基準を設定し、全国学力テストの結果で目標に到達しなかった学校は教育困難校として指導されます。それでも改善されない場合は廃校となります。サッチャー改革以前にはほとんどの学校が学力テストの基準に達していなかったのですが、現在では到達度が7〜8割にも及んでいます。
いま私たちが勉強しているのは、このイギリスの教育制度をわが国に導入するとどうなるかということです。その研究結果をまとめて近々発表いたします。
子どもたちが夢と希望をもって頑張れるように、今後どのように教育を改革していくべきか。それがいま、国の政策として問われています。皆さんからの率直なご意見もお待ちしています。さらに、皆さんには国の改革を待つだけではなく、特区の強みを利用して皆さん自身の手で教育を変えていただきたいと期待しております。

松田:
次に中教審の状況について梶田先生にお伺いしたいと思います。

梶田:
現在中教審の義務教育特別部会では、学習指導要領の見直し、さらに教員免許法改正や義務教育そのもののあり方について連日のように議論が重ねられています。その結果は今秋までに答申としてまとめられる予定です。
2001年にいまの文部科学省が発足して初めての中教審の仕事は、やる気も力量もない先生に教壇からおりてもらうようにしたことでした。実はそのときに私たちは、頑張った先生に対しては待遇を良くできるように制度を変えたいとも考えていました。しかし文部科学省から「実施時期をずらして欲しい」と言われ、未だ実現していません。今回の免許法改正に関連してこの問題も再度討議していく考えです。

松田:
教員の給与に関して。「三位一体改革」に伴う義務教育費国庫負担金の「廃止・縮減」が問題となっています。この点について梶田先生はどのようにお考えでしょうか。

梶田:
公立小中学校の先生方の給与は全部でおよそ6兆円です。現在はそのうちの半分、3兆円を国が負担しています。小泉首相はそれを都道府県に肩代わりしてもらいたいと考えています。その財源として税源委譲、つまり国税として徴収している税金の一部を都道府県の税にする。それで足りない分については地方交付税で手当てするというように説明されています。しかし地方交付税の使途は知事に任されています。たとえ国が先生の給与にいくら使うと通達を出したとしても、その通りに使われる保証はありません。特に財政赤字に苦しむ自治体であれば尚更です。自治体によって、子どもの人数に対する先生の数に大きな差がでてくる恐れがあります。私は、義務教育というものは外交や国防と同様に国が責任を持つべきものと考えています。この問題が今後どのように展開していくか、非常に心配されるところです。

松田:
鳥海先生は昨年4月、教育特区を利用して全国初の株式会社立中学校を開校されました。教育特区の検証という観点から、ご意見をお聞かせください。

鳥海:
私は皆さんにも特区を利用して学校教育に参入していただきたいと考えています。
ただし、株式会社立の学校は学校法人とは異なり、私学助成金がもらえない、税の優遇措置が適用されないなどのデメリットがあります。その一方で教育特区ならではの大きなメリットもあります。
第1に、研究開発推進校として認可されると学習指導要領にとらわれない教育が可能です。私ども朝日塾中学校ではコミュニケーション能力を伸ばす「ディスカッション科」を設け、週に3時間の授業を設定しています。昨年入学した第1期生は、1年間の指導により自分の意見をもち人前で堂々と発表できるまでに成長しました。またカリキュラムでは、主要5教科の授業時間数をかなり多く設定。音楽・美術・体育の授業では英語を使用しています。さらに検定試験にも力を入れています。今年1月には1年生の6割が英検3級に合格しました。漢検・数検においても見事な成績を上げています。いま学力低下が問題となっていますが、取り組み方次第では満足のいく結果を出せるのです。
メリットの第2は、学校法人と違って株式会社立の学校は校地校舎を自己所有しなくとも良いことです。本校は廃校になった小学校を借り受けています。第3は、「設置主体の特例」。すなわち学校の認可権が都道府県ではなく、特区の認定申請をした自治体の長にあることです。したがって、新たな学校設立に関しても認可が下りやすいというメリットがあります。本校の場合はその自治体が岡山県御津町でしたので、今年3月に御津町町長より2007年度の高校開校を認可していただきました。
株式会社立の学校だからこそできることがたくさんあります。もし皆さんのなかで学校を作りたいとお考えの方がいらっしゃいましたら、いつでもご相談に応じさせていただきます。頑張って学校を作りましょう。

松田:
最後に、「特区の営業マン」として全国を行脚されてきた鈴木課長補佐に特区を検証していただきたいと思います。

鈴木:
特区は誰でもどこでも使える制度です。現在全国で549件の特区が誕生しています。そのうち教育関係は、分野として最多の110件です。
なぜ教育関係が一番多いのか。もともと教育に対する規制が厳しかったからとも考えられます。しかし私は一番の理由を、日本中ひとりとして同じ子どもはいないのだから、地域の皆さんが「その子どもやその集団に応じた教育内容があるべき」と考えておられているからだと思います。
私はこれまで全国100ヵ所ほどをまわり、NPOなど自分たちの教育を目指す数多くの方々とお会いするうちに、「思いを実現する三ヵ条」に思い、至りました。
第1条は「人任せにせず、問題意識をもち自ら行動する」。第2条「あきらめない」。第3条「大きなゴールを定め、それ言語化し皆で共有する」です。少しぐらいの寄り道や躓きがあっても、皆でゴールを向いていれば、途中であきらめない限りいつかはゴールに到達することができます。
「教育が問題だ」と言う大人は多くいます。しかし教育イコール学校ではありません。教育は大人すべての責任です。また「官から民へ」とも言われています。私はこれを「官か民か」という二者択一的に捉えてはならないと思います。つまり、まずパブリックという「公」の範囲があり、そのなかでガバメントの占める範囲があります。「官から民へ」というのは、このガバメントの部分を少しずつ民間に移していこうというものです。ですから「公」を「官と民」が協力してやっていくべきだと考えています。
私の仕事のモットーは「共汗」です。子どものために大人たちが力を合わせ共に良い汗をかきましょう。

松田:
日本の子どもたちをどう育てていくのか。教育は国家の基盤を築くものです。いま国家戦略的に教育問題を考える重要な時期に来ているように思われます。本日は改革の中心におられる方々から貴重なご意見をいただきました。ありがとうございました。

特集一覧

 

 
  ページの先頭へ戻る
manavinet」運営 / 「塾ジャーナル」 編集・発行
株式会社ルックデータ出版
TEL: 06-4790-8630 / E-mail:info@manavinet.com
Copyright© 2004-2003 manavinet. all rights reserved.