生徒の希望する学校と定員割れする学校比較
―― 多くの生徒が進学を希望したり、塾が生徒を進学させようと思う学校と、そうでない学校の差は、どのようなところだと思われますか。
―― 桂馬 学校に通学する生徒の住む地域の実情に合った募集内容になっているかいないかですね。これは大きく3つに分けられると思います。ひとつは、地域でどのようなイメージを持たれて来たか。2つ目は広範囲の地域で対象の学生にどのくらい知られているか。そして3つ目が、地域や教育界全般の最新の情報収集能力にどれだけ力を注いでいるか、ということです。生徒募集で集まらない私学は、この3つのうちの何か、あるいはすべてが欠けているのです。
―― 石田 私学には、教育条件の維持・向上を目的とした助成金が地方公共団体から出ており、その総額は中学校だけで年間250億円を超えます。だが、実際に向上している難関校や人気校は生徒数が多いために助成金の必要はあまりなく、受験生が減ったり定員割れを起こす学校ほど、この助成金に頼って学校を維持しているという状態です。そして、その状態に危機感を持たない学校長や理事長も非常に多く、これには保護者の心象もあまり良いとは言えないようですね。実際に、民間から私学の校長になった人もおり、新しい方針で生徒を導いて、保護者や生徒の信頼を得ている人も多くいます。
―― 秋本 今大体、私学の教員になりたいと願う人は多いんじゃないですか。それなのに、古い考えの教員や制度に阻まれて、なかなか希望が叶えられないというところにも、問題がありますよ。どこかでシステムを活性化しないと、私学教育界全体が何の変化も起こせないでしょう。
―― 石田 そうですね。そのシステムの中で、辞めたいと願っても辞められなくなっている教員も多いと聞きますから。それに、最近は宣伝広報の先生方が学校へ帰ってくるのが夜遅くなるでしょう。ほかの教員は彼らが帰るのを最後まで待っていなければいけないという学校もあるそうです。これでは、いくら意欲があっても、女性教師や年輩の教師は体力などが持ちません。
―― 桂馬 その広報も、もっと学校の個性を上手に表現できれば、宣伝活動の時間が短縮できるんですよ。「ウチの学校へ来れば、こんな資格が取れる」「こういうチャンスに恵まれる」とかね。
―― 川久保 ですよね。でも、多くの広報が、我々の授業中に来て、受付で「授業中」と聞くと、名刺だけ渡して去っていく。これじゃ、結局細かいことは何もわからないままですよ。
―― 秋本 それに、どのような改革を進めても、私学はある程度封建的な閉塞感は残り続けるでしょう。ですから、生徒募集のためになる意見をどれだけ塾側から出しても、メモを取るだけ。それを上に見せても封建主義の名残のために、一向に生かされない場合も多い。
―― 桂馬 結局は校長の姿勢ですよね。そういう意見を吸い上げて、自ら第一線に出て活動する校長のいる学校は、教員全員のやる気が違います。やる気があれば、学校全体のレベルも上がるし、進学実績もUPするのにね。
―― 川久保 でもね、校長だけじゃなく、そういったことを『わずらわしい』と思ってやりたがらない教員も実際にいるんですよ。ですからやはり、新しい風を送り込むことは大切だと思います。
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