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2003/07 塾ジャーナルより一部抜粋

私学塾長座談会 「私学・塾長対象の説明会に思う」

平成15年5月25日 / 於:私立共栄学園会議室 / コーディネーター:塾ジャーナル編集部
 教育改革や教科書改訂による公立離れで、少子化とは反対に、年々その希望率が増えているとまで言われる私学受験。しかし、毎年、多くの入学希望者が押し寄せ、高倍率で受験を続けている学校もある一方で、希望者が少なく定員割れを余儀なくされ、学校の存続そのものを危ぶむ声も聞こえてくる私学もある。レベルが同じであれば、その差はどこから出てくるのか。私学受験希望の生徒に最も信頼され、志望校選択の重要な鍵を握ると言われる私塾塾長が一同に集い、私学の塾長対象説明会について熱い討議が交わされた。
 

 毎年、入試情報と共にいくつかの私学の定員割れの話を聞きます。地域的な経済状況や社会全体の不況をその理由に挙げる方は多いのですが、実際に同じレベルでも定員割れを起こしていない私学も多くあるのです。では、いったい何が違うのか。それを各私学が時代や社会背景のせいにすることなく、自己を反省し、前向きに考えていく必要がある時期に来ていると思います。

 私は『七味会』という会を主宰しており、そこでは私学・私塾の代表者が同じ目線で教育について語り合うことができるようになっています。その中でも注目される私学は『心の教育』に重点を置いている学校が多かったように感じます。以下にいくつかの学校が実際に取り組んでいる教育方法を挙げましょう。
 ある学校では、学校・保護者・生徒が同じ目線に立ち、どうすればより良い指導ができるかを話し合って、授業に生かしていくシステムを採り入れました。また、住職を兼任する校長が中学全学年の道徳教育を担当した学校もあります。ここでは、生徒の精神的な発育を促しながら、他教科についてもアンケートをとり、全体の授業そのものを変えていくことで学校改革に成功しました。高校2年から生徒の希望進路に合わせた6コース制を敷き、より細分化した進路指導を行っている学校もあります。ほかにも、塾講師と学校教員が教育についてのサジェッションを行ったり、塾や保護者に対して新3カ年計画を発表することでその実現へ向けて強い意識付けを行うなど、外部へ働きかけることで校内を活性化する学校がある一方、校内に合宿所を設けてそこで勉強することで、生徒への良い刺激を与え、教師との強い信頼関係を築く学校や、生徒にクラス担任を選択させ、人気のない先生に自覚と反省を促すなど、内部への取り組みが行われる学校などもあり、新しい教育への進め方は様々です。
 しかし、どの学校も改革へ向けて教員自身が変わろうとしていることは言えますし、これらの取り組みやその結果を学校説明会で聞くことができれば、塾が興味を持ち、細部まで話を聞きたいとアポイントをとってくるでしょう。

 塾対象学校説明の中にはパーティー形式を取り、多額の費用をかけて塾関係者を招待するところもあります。しかし、塾が本当に求めているのは、過剰なサービスでも校長の理想論の演説でもありません。本当に変化を遂げ、それを報告する私学には塾も注目し、自塾の生徒を送りたいと考えます。そのためにも、まずは学内の改革や教育方針の見直しを図り、良い方向に歩き出すことに時間や力を入れていただきたい。そして、その上で、塾人に対し、『わが校はこのように変わった。このように生徒を導いた』と発表していただくことが、来年度以降の受験者の数を増やす大きな一歩になると私は考えております。

 英進学院 塾長 石田 治正

座談会 列席者
英進学院 塾長
石田 治正
桂馬ゼミナール 塾長
桂馬辰尚
秋本進学塾 塾長
秋本 公一郎
英数義塾 塾長
川久保 博史

今までの塾対象説明会について

―― 私学・塾長対象の説明会について論議していただきたいのですが、まず最初に、今まで出席された説明会ではどのような感想をお持ちになっておられますか。

―― 石田 先ほども述べましたが、毎年良い方向へ変化を遂げている私学にはやはり興味がありますので、話を聞きたいと思いますね。ただ、吹奏楽部に演奏させるといった生徒を使った演出はいただけないと感じます。

―― 川久保 そうですね。それと、今現在変化し切れていなくても、今後の具体的な目標を挙げ、それを達成するためにどのような教育方針をもって導いていくのかが話されていれば、十分興味の対象になります。実際、そんな学校も数校はあるんですが、やはり、校長による学校の沿革とか理念といった同じような話に終始している説明会が多いというのは否めません。
―― では、次に桂馬先生の説明会に対する印象をお伺いします。

―― 桂馬 私は塾対象説明会が広く行われるようになってきたこの十数年間、私学受験に携わってきましたが、今はまず、多くの私学が「なぜ説明会を行うのか」という原点に立ち返る必要があると思います。説明会は生徒募集のため、それは当たり前のことです。そして生徒募集のためには、目標を達成するための教育方針をきちんと説明することが大切です。塾対象募集活動には、説明会のほかに塾を戸別訪問するということも行われていますが、塾長が自ら授業中であれば、私学の広報のほとんどの方が塾の受付にパンフレットを渡すだけで帰ります。もっと細かな情報を相互に交換するためにも、塾対象説明会は必要だと感じています。ただ、その説明会を開催するのも,元はと言えば生徒の払ったお金の一部を使っているのですから、パーティー形式で行うことには異論を唱えたいですね。

―― 秋本先生はいかがですか。

―― 秋本 昨年だけでものべ100校に近い説明会に出席しましたが、話の長さは2極分化してるなと感じます。自校の理念に陶酔してしまっている学校の話は長く、教育に激情を持っている学校は短いですね。私としては、そういった話より、自塾の卒塾生が進学した先でどのような学校生活を送っているのかを実際に聞くことのできる学校に好意を持ちます。説明会では教員の口から良いところばかりを語る傾向にあるので、細かな生きた情報を得るにはそういった生徒と接する時間も必要ですから。

生徒の希望する学校と定員割れする学校比較

―― 多くの生徒が進学を希望したり、塾が生徒を進学させようと思う学校と、そうでない学校の差は、どのようなところだと思われますか。

―― 桂馬 学校に通学する生徒の住む地域の実情に合った募集内容になっているかいないかですね。これは大きく3つに分けられると思います。ひとつは、地域でどのようなイメージを持たれて来たか。2つ目は広範囲の地域で対象の学生にどのくらい知られているか。そして3つ目が、地域や教育界全般の最新の情報収集能力にどれだけ力を注いでいるか、ということです。生徒募集で集まらない私学は、この3つのうちの何か、あるいはすべてが欠けているのです。

―― 石田 私学には、教育条件の維持・向上を目的とした助成金が地方公共団体から出ており、その総額は中学校だけで年間250億円を超えます。だが、実際に向上している難関校や人気校は生徒数が多いために助成金の必要はあまりなく、受験生が減ったり定員割れを起こす学校ほど、この助成金に頼って学校を維持しているという状態です。そして、その状態に危機感を持たない学校長や理事長も非常に多く、これには保護者の心象もあまり良いとは言えないようですね。実際に、民間から私学の校長になった人もおり、新しい方針で生徒を導いて、保護者や生徒の信頼を得ている人も多くいます。

―― 秋本 今大体、私学の教員になりたいと願う人は多いんじゃないですか。それなのに、古い考えの教員や制度に阻まれて、なかなか希望が叶えられないというところにも、問題がありますよ。どこかでシステムを活性化しないと、私学教育界全体が何の変化も起こせないでしょう。

―― 石田 そうですね。そのシステムの中で、辞めたいと願っても辞められなくなっている教員も多いと聞きますから。それに、最近は宣伝広報の先生方が学校へ帰ってくるのが夜遅くなるでしょう。ほかの教員は彼らが帰るのを最後まで待っていなければいけないという学校もあるそうです。これでは、いくら意欲があっても、女性教師や年輩の教師は体力などが持ちません。

―― 桂馬 その広報も、もっと学校の個性を上手に表現できれば、宣伝活動の時間が短縮できるんですよ。「ウチの学校へ来れば、こんな資格が取れる」「こういうチャンスに恵まれる」とかね。

―― 川久保 ですよね。でも、多くの広報が、我々の授業中に来て、受付で「授業中」と聞くと、名刺だけ渡して去っていく。これじゃ、結局細かいことは何もわからないままですよ。

―― 秋本 それに、どのような改革を進めても、私学はある程度封建的な閉塞感は残り続けるでしょう。ですから、生徒募集のためになる意見をどれだけ塾側から出しても、メモを取るだけ。それを上に見せても封建主義の名残のために、一向に生かされない場合も多い。

―― 桂馬 結局は校長の姿勢ですよね。そういう意見を吸い上げて、自ら第一線に出て活動する校長のいる学校は、教員全員のやる気が違います。やる気があれば、学校全体のレベルも上がるし、進学実績もUPするのにね。

―― 川久保 でもね、校長だけじゃなく、そういったことを『わずらわしい』と思ってやりたがらない教員も実際にいるんですよ。ですからやはり、新しい風を送り込むことは大切だと思います。

多くの学校が取り組む新しい様々な改革

―― 学校改革の話は先に石田先生も述べて下さいましたが、皆さんのご存じの私学は、具体的にはどのような形で努力されていますか。

―― 桂馬 大学合格実績を上げるために、上位校への進学を希望する生徒に対し、併願受験校として指定してもらえるよう、各塾に広報に回る、学校設備を整える、制服を替える、国際知識の増強、少人数制授業…などを行っていますね。しかし、こういった方法はどこも同じなので、人数が劇的に増えることはないですね。そこで、募集人員の増加を狙い、共学化した女子校や男子校も少なくありません。

―― 川久保 私の知っているのはある女子校ですが、夕方の6時になると、ほとんどの教員が仕事を切り上げて帰宅するという状況が何年も続いていたそうです。しかし、それで本当に良い教育ができるのかと案じた教員が校長へ直に提案し、その意見が学校全体の意識を変化させました。今では夜10時過ぎまで複数の教員が残り、授業研究や指導に熱心に取り組んでいるそうです。また、広報も積極的に行われており、現在、進学希望者は増えています。

―― 秋本 私のところにも、幾つかの私学が「どうすれば良い変化が起こせるか」と意見を求めてきています。そのような場合、特待生制度をもっと重視するように話しています。

―― 特待生制度を重視するとは、どのようなことですか。

―― 秋本 どんなに私学指向が強まったと言っても、やはり不況による公立への進学状況は多いのです。経済的にはそう裕福でもないが、勉強では実力のある生徒が、あえて私学への進学を選ぶには、それなりの理由がなくてはなりません。それが、特待生制度です。学費がそんなにかからず、公立よりも伸ばしてくれるのであれば、彼らは私学へ進学するでしょう。そうすれば、数年後の実績は上がり、私学の評価も高まります。
 このほかにも、服装の規定を見直したりすることで、親の負担を減らすといったホスピタリティを持つことが、生徒や保護者を引きつける特色のひとつになると思われます。

―― 石田 塾側にPRのためだけでなく、私学自体の悩みなどもぶつけ、サジェッションを行うことで相互理解を得る方法は、説明パーティーよりもよい学校の詳細を知る方法だと思いますね。

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