就職率、志願者数ともに上昇中
九産大は、2016年の日経BP社による大学ブランド力調査において、九州・沖縄・山口の国公私立大55大学のなかで5位にランクインした。前年の12位から大躍進である。
山本盤男学長は、「教育改革の成果は様々な形で表れ始めています」と話す。
教育改革に着手したのは開学50周年を迎えた2010年。社会的評価とブランド力の向上を目指し、「社会のニーズへ対応した人材育成」「教育力と研究力の向上」「地域社会への貢献」を課題とした。
カリキュラムなど教育内容では、2010年の全学共通英語教育に始まり、翌年には独自のキャリア教育を導入。これは平成26年度厚生労働省委託事業の「キャリア教育プログラム開発事業」に九州で初めて採択された。
2013年は、社会での実践力を鍛えるアクティブラーニング型の「KSUプロジェクト型教育」がスタート。学生が企業や行政と連携してプロジェクトを組み、地域の活性化や製品の開発などに積極的に取り組んでいる。
そして2014年には「KSU基盤教育」を開始。これは全学生が2年間、社会人として求められる基礎力を養うというもの。全学共通の「教養科目」「英語を中心とする外国語科目」「専門基礎科目」で構成される。
こうした改革の成果は、就職率の5年連続上昇や志願者数増という具体的な形となって示されている。
九州を基盤とした
「地域密着型大学」へ
教育内容の改革と並行して進めてきたのが学部再編構想である。
山本学長は、「『産学一如』という創設者の想いを継承し、実践的で地域に貢献する『地域密着型大学』を目指し、新たな体制づくりを開始しました」と説明する。
学部再編構想に基づき、昨年には芸術領域、今年は理工学領域の学部・学科の再編を実現した。そして来年度は、九産大で最大の学生数を擁する文系領域が、右図に示すように大きく生まれ変わる。
経済学部は従来通り経済学科を維持するが、夜間主コースを廃止し、新たな構想でカリキュラムを改正する。同様に国際文化学部もカリキュラムを改正し、臨床心理学科は新設の人間科学部に移行する。
また、これまで「商学部と経営学部の違いが分かりにくい」という声があったことを受けて商学部と経営学部を融合する。名称は本学創設以来の商学部だが内容は全く新しい。
大きな特徴は、全員が約30日程度の長期インターンシップを履修することと、九州・アジアに特化した九州ビジネス科目の開設。さらに多様な学び方をサポートする副専攻制の導入である。
設置する学科は経営・流通学科のみだが、学系は経営管理学系と流通マーケティング学系に分かれ、それぞれ3コースを設ける。流通マーケティング学系の社会情報コースは、SNSコンテンツ制作とビジネス展開、ビッグデータ分析・活用を実践的に学ぶ九州初のコースだ。
山本学長は、「これまで経営学部と商学部に分かれていた各専門分野の専門家が集結することで教育内容が充実します」と期待する。
「人を支える人」を育てる
人間科学部
新設の地域共創学部は、地方創生を担う人材を育成する。観光学科と地域づくり学科を設置し、それぞれ3コースを展開。
「地域づくり学科の地域政策・行政コースには本学の法律・行政関係の教員を集めていますので、公務員志望の学生をしっかり指導できます」 |
また、地域づくり学科には、多様なライフスタイルに対応できる昼夜開講制を導入する。1限目から7限目まで開講し、夜間特別枠で入学した学生は6・7限目と土曜日の授業だけで卒業できるカリキュラムを組む。授業料も通常の半額程度に設定する。社会人やシニアの学び直しに好都合だ。
同じく新設の人間科学部(設置認可申請中)は、臨床心理学科・子ども教育学科・スポーツ健康科学科を設置し、「こころ」「からだ」「こども」を支える人材を育成する。ちなみに、この3学科で構成される学部は、九産大の他には全国で1大学のみである。
3学科のうち臨床心理学科は国際文化学部から移行した学科。公認心理師、精神保健福祉士などの専門職を養成する。
スポーツ健康科学科は保健体育の教員や健康運動指導士、子ども教育学科は保育士、幼稚園教諭、特別支援学校教諭などを養成する。
子ども教育学科に関して山本学長は、「福岡市内の保育園や幼稚園から『4年制大学でしっかり教育を受けた人が欲しい』と、大きな期待を寄せられています。ぜひ多くの女子学生に入学していただきたい」とアピールする。
九産大としても人間科学部にかける意気込みは大きい。8階建て新棟を建築し、子育て支援室、ピアノレッスン室、調理実習室、運動生理学実験実習室など最適な教育環境を整える。子育て支援室は地域の母親などが子ども連れで気軽に立ち寄れる施設。キャンパス内に子どもの声が聞こえ、遊ぶ姿が見られるようになる。
教育改革の第2ステージが始まる
九産大は、2015年から開学60周年を迎える2020年までの5年間を「第2の創生期」と位置づけて教育改革を推進している。今回の学部再編をもって、その第1ステージが完了する。
山本学長は、「これから本学の真価が問われる第2ステージへ進みます」と語る。
すなわち、教育力、教育支援力、研究力のさらなる向上と強化。教員と職員との教職協働体制の構築。学部再編に基づく大学院の改革など、課題は多い。
また、2018年1月竣工予定の人間科学部棟を始めとする施設整備計画も継続中だ。生命科学部・食品科学コースの食品加工プラントと食品開発ラボは2018年9月完成予定。60周年記念アリーナ(仮称)は2020年完成を予定している。
山本学長は、「全学的にカリキュラムを見直したり、KSU基盤教育やKSUプロジェクト型教育のブラッシュアップ、新たな留学支援制度など、2020年までにまだまだ改革を進めていきます。もう一歩進化した九産大をお見せしたい」と教育改革にかける決意と自信を示した。
|