グローバルな大学との附属化で
今までになかった教育を増やす
創立1941年。74年の伝統と歴史に培われた女子教育を続けながら、広島修道大学附属校として再スタートを切った鈴峯女子中学校・高等学校。広島修道大学は現在、5学部9学科(2016年度より1学科・2017年度よりさらに1学部増設)を内包し、多数の留学生を迎え入れているグローバルな大学である。その広島修道大学と、中高6年間を通じて提携授業や各種交流を実践することで、英語能力だけでなく、世界を視野に入れた人間教育を行えるようになった。
「高校1年からキャンパス見学や、広島修道大学に在籍する海外留学生を招いての異文化交流と生きた外国語会話実践、大学教授による研究授業など、大学附属になって学習の幅がかなり広がっています」と折田大輔企画広報部長は語る。
中学から大学へ直結する道がはっきりとしたことで、高校受験生だけでなく中学受験を考えている小学生の保護者からも注目度は高まり、2015年度の受験生の成績レベルは例年より向上した。しかし、良い方向に進んでいるからと言って、いきなりすべてをグローバル化するのではなく、日本の良いところを学び、女性としての生き方や精神的な成長を促すという今までの教育を継承しつつ、少しずつグローバルな教育を取り込んでいくというのが広島修道大学附属鈴峯女子の教育方針である。
「校名が変わったことで、変えるべきものと変えてはならないものを見極めつつ、その中で英語を中心として、これからのグローバル社会で活躍できるような人材を育成していきたいと考えています」
大学との相互理解を深める中で、広島修道大学附属鈴峯女子中学校・高等学校の教育をどのように活性化させるかが、今後の課題となる。
新コース編成で
選択肢が広がるカリキュラム
広島修道大学附属鈴峯女子中学校・高等学校の教育は広島修道大学附属となったことで、2015年度より改訂が加えられ、中高6年間を通じ、グローバル教育・伝統文化・キャリア学習の3つの教育を融合させる内容でカリキュラムが一新された。
中学校の3年間では、英語と数学において習熟度別授業を行い、他教科でも幅広い学習が行われ、高校進学時に特進コースと進学コースを選択することになる。
高校の特進コースでは国公立大学・難関私立大学を含めたより高いレベルでの進路実現を志す生徒を育成するため、少人数指導や週2回の7時間授業を実施。また、放課後には高校の教員だけでなく外部の予備校などの講師を招聘しての補習も行っている。特進コース独自のイベントでは、海外研修として1年次の終わりに英国を含む2か国の海外研修を実施。外国の文化を知り、他国の人と触れ合うことで、人間的な成長を促すのだ。また、英語スピーチコンテストや論文コンテストなどにも、この経験を活かして入賞実績を上げる生徒も少なくない。2年になれば文系と理系に分かれ、先取り学習で受験に必要な学習をほぼ終了させる。3年からは徹底した受験対策で志望大学に的を絞った本格的な受験モードへとシフトすることになる。
進学コースでは2年次より文系・理系・グローバルの3つの選択肢から自分の志望進路につながるものを選択する。文系選択・理系選択は新カリキュラムから英語を重視し、大学受験に必要な科目だけでなく進路実現の土台となる確かな学力の定着を図っている。日々の授業はもちろんのこと、放課後や長期休業中の補習授業にも積極的に参加して、自分の進路希望の実現に向けて頑張っている。また、グローバル選択は、2015年度入学生からはじまる新しい選択分野で、6科目(保育、生活デザイン、健康スポーツ実践、音楽習得法、ビジュアルデザイン、マルチメディア活用)の中から4科目を選択して履修する。たとえば、保育では保育園・幼稚園での実習、交流会を通じ、保育分野についての視野を広げている。
「保育実習は高校2・3年生で行われ、小さい子との触れ合いを実際に体験させています。そこでは子どもたちの興味関心を持てるストーリーを考え、紙芝居にして園児たちに発表しています。また、文系選択・理系選択についても新カリキュラムから英語を重視し、大学受験に必要な科目だけでなく進路実現の土台となる確かな学力の定着を図っています。日々の授業はもちろんのこと、放課後や長期休業中の補習授業にも積極的に参加して、自分の進路希望の実現に向けて頑張っています」 |
日本のことばと女性の心
大切なものを見失わない教育を
グローバルな力を養うには、日本語教育を大切にする必要がある、との考え方から、言語能力の向上も広島修道大学附属鈴峯女子中学校・高等学校では重視している。特に毎年年末に開かれる弁論大会は、戦後の混乱が続く昭和24年から続けられている伝統行事。生徒全員が参加する。中学校においては2014年度には2年生の代表が優勝した。また、各学年の最優秀弁士は、全校生徒の前で発表している。
また、中学・高校ともにカリキュラムに組み込まれているのが、美しいものを美しいと感じ、美しい植物を支える見えない根の部分も思いやる心を育てる園芸の授業と、日本の伝統を通じて「一期一会」の大切さを体得し、「もてなしの心」を養う茶道の授業である。どちらも必修の授業で、心身共に美しい女性を育成する広島修道大学附属鈴峯女子中学校・高等学校の教育の根幹の一端を担っている。
74年に及ぶ長い期間、この広島で子どもたちを育成してきた広島修道大学附属鈴峯女子中学校・高等学校では、地域貢献に対する思いも強い。学校近くを流れる八幡川のクリーンキャンペーンには、生徒自治会が呼びかけ、生徒自身が参加を決めて清掃ボランティアを行っている。また、地域の「敬老会」へ代表者が参加して生徒手作りのプレゼントも贈る。文化祭では、講堂のロビーが地元住民の作品参加ギャラリーとなったりもしている。
「地域と共に」をモットーにした広島修道大学附属鈴峯女子中学校・高等学校のこういった活動は、社会を支える一員としての自覚を生徒たちに根付かせている。
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