医療現場で嘱望される専門家を育成
学生一人に5件の求人も
医療学部医療工学科。ここに設置されている「救急救命コース」は、中国・四国・九州の四年制大学では唯一、救急救命士(国家資格)の受験資格を取得できるカリキュラムを備え、公務員上級試験の受験も可能。医師不足が深刻化する医療現場では、救急救命士の専門能力が嘱望されており、さらに必要性が高まることは間違いない。
医療学部で教鞭をとる中田敬司准教授は、JICA国際緊急援助隊のメンバーとしても活躍、この分野における我が国の第一人者だ。東日本大震災の発生時には、いち早く現地へ駆けつけ救援の司令塔となった。他にも救急医学、蘇生学、病理学など、スペシャリスト揃いの教員の指導により、全国で活躍する救急救命士を輩出している。
「臨床工学コース」は、病院や医療機器メーカーで活躍する臨床工学技士(国家資格)の養成を行う。現代医療には不可欠となった医療機器の専門資格だけに、こちらも嘱望されている職業だが、日本には養成機関がまだ少ないこともあり、学生への注目度は高い。両コースとも就職率は、ほぼ100%。2011年度は、1人の学生に対して5件以上の求人が寄せられたという。就職難が叫ばれる時代に、うらやましいかぎりの実績だ。
「いのちと健康の総合大学」をモットーとする同大学。この数年、実学教育の強化を図るため、学部の再編成を行ってきた。そのプロジェクトが平成24年度をもって一段落した。
「本学は、“他人のために汗を流し、一つの技術を身につける”を建学の理念にしている。いま、子供たちのモチベーションクライシスが社会問題になっているが、役立つ技術の習得という目標を持つことで、若い世代にがんばってもらいたい。日本のどこでも通用する国家資格は、目標の最たるものだと思う。」と、櫛田宏治学長は新たなフェーズへの意気込みを語ってくれた。
健康科学分野の実績が評価され
この春、新たなコースが誕生
2012年4月に誕生したのが、人間科学部スポーツ健康学科「柔道整復コース」。柔道整復術は日本古来の伝統医療で、柔道整復師は保険治療が可能な国家資格である。他大学では通常、医療系に置かれる養成コースを、東亜大学ではあえてスポーツ系学科に新設した。それは「新しいスポーツトレーナー」の育成を目標としているからだ。
今春から中学の保健体育で武道が必修になり、武道は再び脚光を浴びている。しかし、専門技術を有し、かつ健康科学全般の知識を有するプロは、圧倒的に不足しているのが現状。こういった時代のニーズに即し、高度な専門的知識を併せ持つ柔道整復師を養成していくのが目的だ。前例のないコース新設ではあったが、これまでに健康科学の分野で実績をあげてきた同大学の歴史が評価され、文部科学省の認可を受けることになったという。保健体育教諭免許(中学・高校)も取得出来る。
「日本古来の技術をベースに、スポーツトレーナーとしても活躍する専門家を育成したいのです」と櫛田学長はスポーツと医療科学の融合というビジョンを語る。
同大学は、硬式野球部、男子バレーボール部が全国トップレベルの成績をあげるなどクラブ活動も盛んだが、コース新設に伴い、柔道部、剣道部を強化クラブにする予定だ。学生剣道界の顔として知られる右田幸次郎氏らが指導に当たる。
他にも、臨床心理士(大学院進学)、保育士、幼稚園・小学校教諭、管理栄養士、美容師など、資格や免許取得を念頭に置いた養成コースは多岐に渡っている。難関の国家資格が多いため、1年次から担任制を敷き、授業は少人数制。また、国家試験のみならず、公務員試験対策の講座にも力を注ぐなど、キャリア教育も万全の体制をとっている。今年度からは、文章・表現力の授業を1年次の必須科目とした。文章表現やプレゼンテーションのスキルがどんな分野においても問われる時代、早い段階から徹底したトレーニングを行い、社会で通用する戦力を醸成していく方針だ。 |
東アジアの要所となる地で
グローバル社会への門を開く
古来より大陸からの玄関口であった下関市。そこに根差す東亜大学は、「地域に生き、グローバルに考える」というスローガンも掲げている。国際化プロジェクトの一環として、2011年12月に「東アジア文化研究所」を開設。これは東アジア圏の文化・社会学の研究成果を公開するラボで、学術資料を収蔵したライブラリーもあり、広く一般に公開されている。
また、11月には「子どもみらい塾」がスタート。地域の小学生に勉強やスポーツを教えるワークショップだ。月2回の開催で、学生自らプログラムを考案している。保幼小中高すべての教育課程を持つ同大学では、こういった活動を通して、座学だけでは身につけつることができない、より実践的な能力を培っている。
医療学部を筆頭に地域との連携活動も多い。救急救命コースの学生は、市内の学校や施設を訪問し、救命措置の講習会や講義を頻繁に行っている。学生でありながら、早くも指導者として活躍している。昨年の学園祭では、災害復興をテーマに近隣住民と連携。募金活動や自衛隊を招いての災害シンポジウムも実施した。まさに「技術を身につけ」「地域に生きる」を体現している東亜大学。新たなフェーズに入った2012年度、その動きが大いに期待される。
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