戦後、高等教育機関の整備が立ち遅れていた中、「良質な女子高等教育を」と、福岡の地で始められたのが純真女子高等学校と純真女子短期大学。(創設したのは、ヒスタミンの研究で26才という最年少で医学博士を取得していた福田昌子氏)この、純真女子高等学校が現在の純真高等学校の前身である。現在、同校を導く目野惣一校長は、県立高校をはじめ様々な教育機関に携わってきた実力者。
「看護5年一貫コースや、大学受験に向けた学習教育はもちろんのこと、職業観育成を目的としたCATなどの講座を開き、それぞれの個性に対応しながらも、人間教育を重視した生徒の育成を行っています。」と語る目野校長。来年度は4年制の純真学園大学が開校予定であり、高大連携の強いラインが整うことになる。
将来の目標決定に大きく助力
CATで専門講師に学ぶ知恵と技術
国公立大学・難関私立大学への進学を目指す普通科特進コースや、看護師国家資格を目指す看護科看護5年一貫コースなどは、高校入学時には、すでにその先の目標を持っていて、それに向かって邁進している生徒がほとんどである。しかし、普通科普通コースに入学した生徒は、『将来の夢は高校に進学してから考える』という生徒も数多い。そしてその多くはまだ自分の資質や適性を見定めている途中である。この普通コースの生徒に純真独自の職業観育成プログラムとして今年度の一年生より実践されているのが、CAT(Career Advance Time)だ。
受講する講座は、キャビンアテンダントやゲームクリエイター、自動車整備士、救急救命士、声優、パティシエ、保育士、理学療法士といった講座、またはベーシックな国・数・英の標準講座と多岐にわたる約25講座で、科目に合わせて短期大学や専門学校と連携し、講義と体験実習で知識と実践力の双方を学ぶ。ほぼすべてが、専門的知識を必要とする講座であり、ほとんどの講座がプロの外部講師を招聘しているため、生徒の関心も高い。
国・数・英の標準講座以外は、1コマ90分で、学年を前期・後期に分けて開講する。
生徒は希望する講義を、前期と後期それぞれあらかじめ選択しておく。2期の講座は全てが選択制で、2年次と3年次で総計6講座とることになるため、様々な職種に触れることで、新たな興味が芽生え、自分の将来の道を模索することができるのだ。
CATを統括する延憲治郎教務部長は「どんな生徒にとっても自分に合った職業を見極めることは困難なことです。CATは、全ての生徒に職業観を育成することが目的ですが、中には、確固とした目的意識を持っている生徒もいます。実際、卒業生の3分の1は専門学校へ入学しますが、その他は、短大や大学の進学者です。それらの生徒のために、3年になればCATの科目として大学入試対策講座も取り入れる予定です」と語る。
45年の看護教育ノウハウを結集
最短5年で看護師(国家資格)の受験資格を取得
平成14年に設置された看護科・看護専攻科(看護5年一貫コース)は、昭和40年に衛生看護科として、全国2番目に開設した准看護師養成課程を看護師養成課程に発展させたもの。同コースは、衛生看護科開設から約45年間もの蓄積された看護教育ノウハウをベースに高校入学後、5年間の一貫教育で看護師の国家試験受験資格が得られる課程である。看護師養成機関が、大学での教育に移行していく中、本校でも一旦は募集を停止していたが、「5年という最短で看護師資格が得られる5年一貫コースを再開して欲しい。」という、卒業生をはじめ、近隣中学からの強い要請があり、昨年度より募集を再開している。
「5年一貫コースの生徒は中学卒業時に進路を決定し入学して来ます。この頃は、人間形成において多感な成長発達過程にあります。私たちは、生徒の特に精神面でのフォローの必要性を感じています。また、5年間を通して入学時のモチベーションを維持し、人の命を守り健康を守る看護師として知識や技術、倫理観を培い、感性豊かな人として育ってほしいと願っています。」と語るのは、安部康子看護科・看護専攻科統括。
特筆すべきは、看護教育にとって重要な臨地実習である。かなりの学校が、実習病院としての受け入れ先に苦慮する中、同校では、長年近郊の総合病院が中心となって実習を受け入れてくれている。その他施設や保育園など幅広い受け入れ先をもつ。これもまた、45年という実績からくるものであろう。また、近頃は、男性の看護師も現場の需要が高く、男女共学という点も魅力の一つだ。
看護科2年次には、校内の試験に合格するとナースキャップを授与される戴帽式が行われ、本格的な病院実習が始まる。看護科3年次、専攻科1年・2年次と領域別に実習を行い、国家試験に向けて学習していく。看護師国家試験の合格率は96%、就職内定率は100%であり、5年一貫教育で身に付けられる実力の高さを現しているといえる。 |
人間教育やコミュニケーション育成も
クラブ活動で心身を鍛える
体力づくりにも熱心な純真高等学校では、クラブ活動にも力を入れている。強化クラブのひとつである女子バレーボール部は、特進・看護科を含む部員48人全員が顧問の熊本利秀教諭のもと、勉強との両立に成功した状態でチームを作っている。同じく強化クラブの剣道部は男女合わせて32人、段位を持つ生徒も多い。部員30人を抱える陸上部も強化クラブのひとつで、長距離・短距離などのトラック競技だけでなく、槍投げ・円盤投げ・ハンマー投げといったフィールド競技にも力を入れており、高い実力を誇っている。また、ボクシング部は、顧問歴35年のベテラン宮崎高実教諭が指導。ボクシングは高校から始めた生徒ばかりで、全員がゼロからのスタートになるため、皆実力アップに余念がない。本年度は、インターハイでベスト8になるなど、指導力の高さも人気の秘密だ。
いずれのクラブも、『部活は教育の一環である』として、競技力と同等に人間形成にも力を入れており、生徒の統率力が非常に良く取れている。生徒のコミュニケーション力も高く、卒業後にもその人間力が強い力となって生徒の背を押すことになるだろう。
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