中高一貫というだけでは
できない支援を実現
広大な自然に恵まれた半田山山頂に岡山理科大学附属中学校はある。隣接する大学の学長自らが1年生を引率し、半田山自然教室を開講できるのも、こうした立地によるものだ。おのずと自然や生物に対する好奇心、探究心が刺激される環境であることはいうまでもない。
中高校棟に向かうと、校舎壁面に大学合格実績が書かれた垂れ幕が目を引く。島根大医学部、岡山大薬学部、香川大医学部、筑波大、広大…等々、国公立と私立難関大の名前がずらりと並ぶ。
同校の新倉正和校長に早速、快挙といえる合格実績の要因について聞く。新倉校長はまず、少人数制と主要教科で習熟度別授業を行っている点を挙げた。例えば、公立の中高一貫校と比べると、1クラス40名で授業が行われる公立に比べ、同校の習熟度別授業では15名程度で行われ、授業時数も格段に多い。
手厚さという点でも、例えば3年生の理科の実験授業では、担当教員の他3名の大学院生が実験助手として指導するという手のかけようだ。たとえ5分の実験を行うにも、その準備には丸1日をかけ、安全面にも十分な配慮が必要となるのが実験だ。効率面からとらえれば、一般の学校で実験回数が減っていく事情がそこにある。同校では大学との緊密な連携により、時間と人手がかかる実験授業が毎週行われている。“理科好き”を育む肥沃な土壌をもっているのだ。
第二の要因は、教員全体で生徒の第一志望をかなえるという意識が共有されている点だと、新倉校長はいう。「附属校ですが、昨年、卒業した中高一貫生は全員が他大学へ進学しましたし、中学3年生でも外部の高校に進学したケースもあります」とも。実際、卒業生は国公立大や私学では慶応、津田塾、関関同立などに進学、中学卒業時に県立朝日高校を志望した3人全員が合格している。
加計学園グループは系列校も多く、さまざまな施設、人的資産を有しており、同校在校生はそれらのメリットを十分に受けながら、希望する進路を自由に選びとっているのだ。
もちろん、系列の岡山理科大に進学を希望する生徒もいる。その多くは同大学の教員採用実績が全国有数であることを知っている。昨年度は106名の学生が、いずれかの自治体で教員として採用されていることは注目すべきだろう。
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問題解決能力を育む
理科教育実践の数々
さて、具体的な受験指導としては毎土曜に開講される河合塾講師による受験講座「加計塾」がある。2次試験対策を中心に昨年から実践され、志望大学合格への実効性を強化している。学園グループ内の他の高等学校と合同で開講される「加計塾」は、東大、京大、国立医学部を目指す生徒を対象にハイレベルな課外授業となっている。
以上は先取り学習により、演習中心の授業にシフトする6年次の課外プログラムだが、最終学年に至るまでは特色ある体験学習もふんだんに取り入れている。夏休みに牛窓ヨットハーバーで催される「段ボールボートづくり」は、理大生とともに中学生が一枚の段ボールからボートを設計、製作し、実際に海に浮かべ競争するイベントだ。
また、「屋久島自然体験実習」では、現地に常駐する大学教員から直接指導を受けるというもの。その実践が評価され今年度文部科学省のサイエンス・パートナーシップ・プロジェクト(SPP=理科への興味、関心と知的探究心を育成し、進路意識の醸成と科学技術関係の人材層形成を目的とした事業)に採択されている。
これらの理科教育への取り組みは、自ら課題を見つけ追究し、知識と試行錯誤によって課題を解決。飽くことなく次なる課題を見つけ、さらに追究を続けるという学習によって、生徒は自ずと問題解決能力をつけていく。現代社会が求める人材づくりに応える教育活動といえるだろう。
理科教育以外の特色教育として、英語のイマージョン教育に触れたい。音楽科の授業を英語だけを使って行うもので、英会話の授業とは別に日常で英語を使う機会を増やしている。3年次にはオーストラリア研修が、現地アデレードの提携する学校で実施されている。ホームステイと農場体験も盛り込まれた8日間の日程だ。
英語を制する者は受験を制すといわれるが、これらのプログラムに併せて今年から英数の主要教科において灘中高の教員から受験指導上のアドバイスを受けるという交流も始まる。
特色ある教育活動について、新倉校長の口から語られる取り組みは実に多種多様。紙幅もあってすべてを紹介しきれないが、最後に今年度から始まった「Human Education(人づくり教育)」講座について記しておく。ひと言でいうなら徳育教育だが、日常の礼儀作法から国際人としての心得、将来の人生設計に至るまで体系化され、人間教育を実践していこうという取り組みだ。知と徳。車の両輪のごとき教育活動が、夢の実現にひたむきな子どもたち、その保護者に広く認知されることを願いたい。
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