留学生教育のノウハウで自信
中退生の進路保障に乗り出す
日章学園九州国際高等学校は、1995年に中途退学者に再学習の機会を提供し、単位制による高卒資格取得をサポートする目的で設立された。だが、ここ数年、全国に単位制、通信制の高等学校が増え、少子化の影響も重なって、入学者数は減少している。馬籠勝典校長は「中退生の受け入れプラスアルファが問われる時代になった」として、生徒への進路保障を充実させる方針を打ち出した。
そもそも同校は学校法人日章学園として、鹿児島、宮崎両県を中心に中学校、高等学校、短期大学校、各種専門学校を展開、60年の歴史を刻む総合学園である。近年は、中国吉林省長春市に長春日章学園高中(高等学校)を設立し、日本の大学への進学意欲を持った生徒を受け入れ、日本語をはじめ受験に必要な教科の再教育を行っている。
留学生のモチベーションは高く、卒業後は横浜国立大、千葉大、広島大などの国立大学をはじめとし、早稲田、東京理科、立命館など難関私大へも次々合格している。こうした実績を反映し、受け入れ数は年々増加傾向で、現在67人を数える留学生も、来年には100人、再来年には200人を予定している。
留学生に対する高い受験ノウハウを中途退学者にも活用したいという思いが、今回の「進路保障の充実」という方向を打ち出させた。単位制高校は今や、中途退学者に高卒資格取得を支援する時代から、進学意欲を掘り起こし、高等教育へのアプローチを積極支援する時代へと変わろうとしている。
さて、全国に単位制高校は増えたものの、全寮制を採用している高校はその一部に限られる。同校では全寮制のメリットを生かした個別指導が週に3〜4日、寮の食堂で夜10時半ごろまで実施されており、この効果が前述の合格実績に少なからず反映されている。開校以来、教諭として、また寮監として生徒とかかわってきた田村亮企画広報部長は、「私たちは24時間勤務みたいなものですから、生徒に意欲さえあれば、手厚い受験指導の環境はすでにある」と話す。
寮はすべて個室で、日本全国から入学してくる中途退学者と、中国からの留学生向けに現在、寮の整備が進められている。


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生徒の前にではなく横に立つ教職員
中途退学生の選考は、これまで面接と作文だけで行われてきたが、今年から学科試験も実施されるようになった。入学後は以前に通っていた学校で取得した単位数と入学後に取得した単位数の合計が74単位以上あれば卒業できる。中には、同校で意欲的になり100単位以上とる生徒も珍しくない。単位制であるため無学年制だが、基本的に4月入学、3月卒業となっており、1年で卒業する生徒、3〜4年かけて卒業する生徒とさまざまだ。入学は年度途中でも可能。
一般的な生徒像としては、「いじめや不登校による中途退学、また、進学校での詰め込みによってつぶれてしまった生徒がいるが、ここでは互いにつらい経験を共有していることもあってか、生徒同士気遣い合っているよう」と田村広報部長。馬籠校長も「いろいろなタイプの生徒と接してきたが、生徒と相対する姿勢ではなく、生徒の横に立って話を聞く姿勢をどの教職員も持っている」と話す。
生徒が抱くわだかまりを解き、心を開き、授業に参加できるようになれば、その後の学校生活はスムーズに滑り出すという。そのために生徒と呼吸を合わせるコツが、生徒の前にではなく、寄り添うように横に立った指導なのだろう。入学当初は進学を考えていなかった生徒も、こうした環境で進学意欲に目覚め、大学へ進んだ生徒も少なくなく、アメリカやカナダへ短期留学する生徒もいるという。
授業選択は、進学希望を考慮して、有利な時間割づくりを教諭がアドバイスし、一人ひとりに適ったカリキュラムづくりが柔軟に行われる。ただし、「特進クラス」の生徒に対しては、センター試験に対応させるなど、カリキュラム編成に一定の制約はある。「特進クラス」は決してハードな課程ではなく、緩やかな指導と少人数制を基本に充実した受験対策を行うというもの。
単位認定でユニークな点は、各種資格検定を受験し、合格すると、その水準に応じて教科の単位として認められる点である。例えば、英検2級合格なら英語で3単位、漢検2級合格なら国語で2単位が認定される。カラーコーディネータ―検定合格で、家庭科の単位認定や、危険物取扱責任者の資格を取れば、理科の単位認定といった同校ならではの工夫も見られる。
新しい自分を見つける環境
学校は宮崎県えびの市の緑あふれる高台に立地。日本全国から集まった中途退学の経験を持つ生徒と祖国を離れた留学生が学ぶ学校では、放課後の体育館で、バスケットボールでともに汗を流す姿が見られる。
不登校、いじめに心痛める生徒にとっては、環境の変化が思わぬ心境の変化を導くことがある。豊かな自然と、寄り添う指導、自立心を後押しする寮生活に異文化圏の同世代。今ある環境に悩む生徒には、一考の価値がある学校といえる。

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