国公立大合格に大躍進
「特進」現役合格100%
学問の神様として名高い太宰府天満宮。その近くに立地する筑紫台高等学校が、まるでその恩恵を受けたかのように、今春、記録的な大学合格実績を上げ、話題を呼んでいる。普通科109名の卒業生のうち、17名が九州大学、熊本大学をはじめとする国公立大学に合格。福岡、西南学院、法政、立命館などの難関私大にも延べ156名が合格を果たした。全員が現役合格であることは言うまでもないが、「特進」コースに限れば、100%現役合格、「進学」コースでも8割が指定校推薦などで合格を手にしている。
今年、創立50周年を迎える同校は、「特進」「進学」コースからなる普通科、興味関心のある科目、分野を選択して学ぶ総合学科、コンピュータ技術・商業を専門に学ぶコンピュータビジネス科、工業分野の各種専門技術を身につける工業科からなる総合型の高等学校である。広大な敷地に贅沢に配置された校舎で、生徒はのびやかに、明確な目的意識を持って学んでいる。
今回紹介する普通科は、14年前に「特進」コースを設置してから、地元難関の九州大学への合格を目標に、教員集団が一丸となって進学指導に力を注いできた。その努力が初めて実ったのが、5年前。九大へ1名の合格者を出した。これを機に、学習塾関係者が同校の教育方針に注目し始め、それまで生徒数20名(1クラス)だった「特進」コースが、翌年から一挙に60名(3クラス)にまで増えた。
受験生が増えると、入学時の学力レベルが上がるのは当然で、地元関係者の間ではますます期待が高まる中、その期待を裏切らないようにと、九大への連続合格を目指す。5年連続九大合格者を出してきたところに同校の指導体制の安定した確実性がうかがえる。
入学生徒の学力レベルが上がったと言っても、あくまで以前に比べてということで、入学時の偏差値は52〜53程度の生徒がほとんど。その生徒たちを卒業時点で、平均60以上に引き上げている。わずか3年間で大きく伸ばす指導力とは――。
名物「放課後個別指導」
卒業生も活躍
筑紫台普通科の授業は少人数制で行われる。20名前後で1クラスを構成し、生徒が“乗ってくる”授業を展開している。「特進」コースの英語科を担当する吉村直樹教諭は「授業で生徒を当てて、この問題ができれば佐賀大は合格圏。九大ならもう少しレベルアップを」という具合に、授業で常に大学名を出して生徒に刺激を与えるという。生徒は具体的に目標を意識することによって、授業に乗ってくるというわけだ。
無論、こうした密度の高い授業を行うためには、教諭側が大学ごとの出題傾向や、生徒の志望をよく知っていることが前提である。また、普通科専用棟の教室は、一般の教室よりもやや小さめに設計されているが、このことも集中力を高めるのに一役買っているようだ。
そして、同校が学力アップのコアな要因と自負するのが、通常、8コマの授業が終えた午後4時半ごろから7時まで行われる放課後の個別指導である。図書室を開放し、1〜3年生までの特進コースの生徒を中心に、進学コースの生徒も自由に参加でき、図書室は毎日、ほぼ満員状態。生徒の意欲は高い。
個別指導は教諭のほかに、スクール・サポーターと呼ばれる同校出身の大学生が、質問に答えたり勉強法の相談に乗るなどして好評を得ている。サポーターは現在9名で、九大、佐賀大、福岡大、福岡女子大、西南学院大に在籍中の“先輩”たちだ。「特進」コースの太田黒聡之教諭は「教員だけでは質問を待つ生徒に対応しきれないこともある。スクール・サポーターは生徒と年齢も近く、目標とする大学に実際に合格した先輩であることが、良い刺激にもなっている」と話す。
学年が進むにつれ、個別指導ではより専門的な“作戦”が立てられるようになるという。たとえば、今春、九大工学部に合格した生徒は物理、数学、化学には強かったが、英語が苦手。この生徒を合格させるためには、得意の理数系をさらに伸ばしながら、英語は他の受験生に引き離されないレベルに到達させる――と、生徒の特徴を知り尽くした各教科の連携指導が行われる。まさに面倒見の良さが伝わってくる。
一般に、受験勉強といえば、どことなく暗くてつらいイメージがつきまとうが、ここ筑紫台での個別指導に関しては、「ひとりで苦しむ受験勉強」というスタイルではないようだ。こうしたスタイルを確立するまで、教員チームにはさまざまな模索があったと思われるが、公立高校で30年以上の経験を有する隈本豊校長は「生徒の意欲を引き出すのが上手い先生方に感心している。非常に熱心」と、教員に全幅の信頼を置いている。
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熱い指導力が生むアドバンスクラス
さらに、面倒見の良さが分かるエピソードを紹介したい。
2年前、事情があって私大を志望せず、九大に懸けていた生徒がいた。センター試験の出来は合格ラインに達し、本番では苦手なはずの数学ができた。ところが、このことが生徒に「合格」を強く意識させ、緊張したのか得意科目で予想外の敗北をきたしてしまう。それでも、なんとか合格圏内か・・・発表当日、吉村教諭は生徒に付き添ったが、実は、他に何人かの教員も物影に隠れ、見守っていたという。結果は残念ながら不合格。一浪する間、同校の図書室での個別指導に通いながら受験勉強を続け、生徒は翌年、佐賀大に合格した。
受験会場でも、休憩時間に励ました方がいい生徒、厳しく接した方がいい生徒、おだてると力を発揮する生徒と様々である。一人ひとりの性格を分析して声をかけるという徹底ぶりは、少人数制で個々の生徒に目を凝らしてこそ可能なことかもしれない。
来年の目標は九大に5名と京大にもねらいをつける。「京大を目指すとなると、教員チームも勉強をし直さなければならないが、それがまた刺激的」と、新たな目標に向け、教員のモチベーションも十分だ。
13年前、校名を変更し、総合学園構想を打ちたてた際、「特進」コースを設置した。当時、他校ですでに先行していた「特進」を今さら、という声もあった。その「特進」で安定した実績が残せたことで、来春には、「特進」コースに、よりハイレベルな英数授業を行う「アドバンス」クラスを設置する。
まさに、“進化する筑紫台”であるが、隈本校長は、普通科だけでなく、4学科17コース全体に、この「進化」の跡が見られるよう続けて学校改革に臨む考えを示した。筑紫台の新たな今後が注目される。



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