1900年創立の女子校を前身とする岩田中学校・高等学校は、県内私立高校としては有数の歴史と知名度を誇る。
さらに岩田といえば「個性を尊重」し、「生徒の自主性を育てる」など、自由で大らかな校風も魅力で、職員も生徒も多様な個性を謳歌してきたといえる。
むろん学力面でも1学年100名程の少人数教育で、国立最難関大学、国立大医学部、国立大薬学部だけで計22名(06年度)の合格者を輩出するなど高い進学実績で定評ある同校だが、新校長安藤昌広氏は、現状に甘んじることなく改善点をピックアップ。4年間の教頭職時代の経験をもとに、独自に考案した「岩田ニューディールプラン」(岩田中学校・高等学校スクールプラン)を発表して果敢に改革を実行している。
進学実績のさらなる向上を目指す
06年度入試でも東大に5名の合格者を出している同校だが、実は東大受験をするような学力上位者と、それにはとても及ばない下位者との学力差が決して小さくないという悩みを抱えている。そこで手始めに、昨年度から習熟度別授業(英語・数学)を実施していたが、今年度からは、学力アップのための大胆な変革を断行した。
その取り組みは実に多彩である。まず隔週6日制を全面週6日制にして授業時間を大幅に増やした。通常授業は中学が7時間授業を週2回、高1・2年は週3回。水曜日・金曜日の放課後には全校一斉の補習授業(英・数)がある。これは学力下位者対策で、水曜日は英語下位約30名、金曜日は数学下位約30名を指名で参加させるというもの。高3については7時間授業週4回と補習1回となっており、結果、学年別週時間割は中1〜中3で実質週36時間、高1・高2で同37時間、高3で同38時間となった。
また月曜は「全校一斉学習の日」とし、部活動は中学校、高等学校ともすべて停止となる。
さらには夜の講座として、時間帯は午後6時から8時まで、英・数が週に3講座、国語1講座が開かれる。対象は中3以上の生徒で、学年を取り払って希望者は誰でも参加できる仕組みだ。中3でも上級の高2の講座を受けられる「飛び級」システムを取り入れる一方、逆に高2の生徒でも、中3の数学をやり直すこともできるため、自分の学力に合った講座が受けられるようになっている。
「去年の3学期に試験的に実施したのですが大変好評だったので、4月から本格的に導入しました。中3から高校2年まで、3学年で300名近くの生徒のうちのべ216名が参加しています」。
「授業内容の充実も重要」と言う安藤校長は、2名の教頭とともにすべての授業を参観して見回っている。この「授業観察」は、事前に指定した授業を、最初から最後まで参観するもの。
「私自身が管理職として、授業内容を知っていることはとても大事なこと。どういう授業がいいのか、どこに問題があるのかなど、気がついたことはすぐに教員にアドバイスします」。
若い先生の授業から順に見回り、現在、教師が50名のうち40名近くの授業を参観したという。
また、自習の習慣づけのため寮生が午後6時〜8時まで自習ができる学習室を通学生にも開放。常に教員が付き添い、放課後に自習できる環境を提供している。朝の登校直後の時間にも全校生徒に自習が促されている。
「まあこれだけやっていくと、正直、生徒もキツイし先生もキツイ。これまでの大らかな校風を思えば不満を持つ生徒がいてもやむを得ません。でも学力向上に向けての努力はすべてやる。まだまだ工夫の余地がたくさん残されていると考えています。」とさらなる改革への意欲をのぞかせる安藤校長。
21世紀の有為な人材を育成する
設立当初から自主性を重んじ、自分の言葉で語れる生徒に、そして品性を保つということを大切にしてきた同校。それは言い換えれば、今、文部科学省が謳っている“生きる力“を養うことでもある。が、具体的に自主性とは何か、自分の言葉とはどんな言葉なのかが不明確であるため、自由や自主性をはき違える生徒も出てくる、と安藤校長は指摘する。
「ですから私は、具体的にどんな人間に育てるのがウチの目標なのかを明言化しました。それが“21世紀の社会に有為な人材を育成する“であり、そのために何をすべきかを具体化させたのが、先の取り組みでもあるわけです」。
社会に有為たる人材とは公平、正義、思いやりの心を持った人。そして社会に貢献し、他人のために何かできることを自分の喜びとするような人間だと定義する安藤校長は、まだ記憶に新しいインサイダー取引などで世間を騒がした事件を引き合いに出しながら、高
学歴、高学力だけではなく、人間的な部分をどう鍛えていくかが目標であるという。
だが、そのためには保護者との協力、連携が不可欠。従って「岩田ニューディールプラン」では、「社会や保護者からの要望にも的確に応えていく」ことにも重点を置いている。 |
生徒・保護者と共に考える生活指導
「服装などについても、心、あるいは自主性の問題だから、外見だけ強制しても意味がないというような議論が昔からあります。でも心の問題は簡単に解決できない。時にはまず形から入ることも必要です。自主性とは何かを考えさせるためには、教師がカベになって立ちはだかり、そこでなぜかを考える、あるいは説明する、そして気づく、納得するという過程を体験させる生徒指導が大事なんです。それには保護者の理解と連携も重要です。
朝、送り出す保護者が10分ぐらい遅れてもいいというのでは遅刻はなおらない。生活全般についてこまごまとしたことまでは言えませんが、ひとつのきっかけから、それこそ自主性をもって自分の生活態度を振りかってもらえるようになってもらいたい」と安藤校長。
創立以来、全校朝礼がなかった同校だが、今は2週間に1回ずつ実施。校長自ら生徒指導主任、生徒会長などとともに生徒に呼びかけ、さらに担任にも一人ひとりの服装などについて日ごろから注意を払うよう促している。
まだ始まったばかりの「岩田ニューディールプラン」。2学期には保護者、生徒両方にアンケートを実施して、率直に反省点を探り、実践指導面につなげていきたいと意欲的である。
改革の真価が問われる6年後、変革一期生卒業時までその変化と進化に期待したい。



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