理薬・国際に特化した高等学校
昨年1月に新校長に就任した佐藤孝先生は、学園の元・社会科の教師で、進路指導も担当していたため時代のニーズに敏感で、改革すべき点をよく理解していた。校長就任後はすぐに学校改革に着手し、現在は3年後を見据えてスピーディーな改革を推進しているところである。
その第1目標に掲げたのは、基礎学力の充実をはかり、しっかりとした進路を保障していくという点である。現在4年制大学への進学率は70%であるが、80%以上にアップし、しかも薬学部や看護系、バイオサイエンスの学科へ進学させること、または英語力を高めて推薦で難関大学へ進学する力をつけさせよう、という具体的な目標を掲げている。
実は姉妹校の武蔵野大学に2004年薬学部が新設され、千代田学園は5名の指定枠がある。
また2006年には看護学部も新設される予定で、これも5名の指定枠があるのだ。学園で一定以上の成績を修め、外部模試で55以上の偏差値(薬学部のみ、看護学部はなし)があればこれらの学部に進学できるという。
「例えば小学校のときにあまり学習に積極的に取り組まなかった生徒でも、中学・高等学校で伸ばし、無理をしなくても薬学部へ進学できるということです」と佐藤校長は強く語る。
しばらく中高一貫の教育システムのみで教育を行っていたため高等学校からの入学募集は実施していなかったが、高等学校は前述のような進路を目標にした理薬と、英語に特化した学校にしようと改革を行い、今春より生徒募集を再開した。コース制を敷き、特進には「理薬コース」、「国際コース」という2つのクラスを、他にいわゆる一般コースの「文科コース」も設けた。「文科コース」は、クラブ活動と学習を両立しながら、武蔵野大学の文系学部等への進路保障を行う。
中学からの入学者は、高校からの入学者と同様に高校1年次からコースに分かれるが、特に高校からの入学者と分けることはしない。その理由を佐藤校長は次のように話す。
「中学からの入学者がリーダー的存在となって高校からの入学者を引っ張っていってくれたら、と考えているのです。特に千代田の大きな柱である人間教育という点では3年間学んできた中学からの入学者が優っているはずだと自負しています」。
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中学校の理科実験講習
高等学校の理薬コースを新設したことで、中学校もより理数に力を入れようと「理科実験講習」を来年度より実施する。
佐藤校長は、「実験講習で興味を持ち理科が好きになれば、それが数学に波及して数学も好きになっていくはずです」と説明する。
この理科実験講習は、1年間に8回、放課後に実施される。1年次では「植物の蒸散作用を調べよう」など植物の観察が中心となったもの、2年次では「魚の解剖」、「光と色・分光器を作ってみよう」など生命の他自然現象に関する実験、3年次では「ウニの発生実験」、「DNA組み替え実験」など遺伝子に関わるものへと広がる。実験講習会は年に8回で、事前学習や実験後のレポート提出などを行うことで、学習を深める。「最終的にはパソコンでプレゼンテーションをするような授業に高めていきたいですね。学園のホームページに掲載できたら、とも考えています」と佐藤校長は目を輝かす。
人間的成長を図る国際理解教育
同校では中学より英語劇や留学生交流キャンプ、海外語学研修(アメリカ)、7泊8日のニュージーランド研修などを取り入れながら国際理解教育を進めている。ニュージーランド研修では、千代田学園らしく観光はせず、午前は語学研修、午後は老人施設や小学校等でボランティアを行う。国際交流の目的は、一時的な体験にとどまらず、それを原動力として寛容さ、感謝、主体性を養うといった人間的成長にあると考えているからだ。
さて高等学校では「国際コース」でさらに英語力をつけ、グローバルな視点を持てるよう育てる。イングリッシュイマージョン、グローバルイングリッシュ、地球市民講座、英語によるディベート大会等の他、海外研修や1年留学で生きた英語を学ぶ機会も設けている。TOEFLにも挑戦し、進路へとつなげる。1年間の留学経験やTOEFLの点数により上智大、明治大など難関私立大学へ推薦で入学できるからだ。
なお中学〜高等学校まで成績優秀者上位10%の生徒は、特待生として入学金及び授業料が免除される。1年毎に見直しがあるが、うれしい制度である。
教師7名を新採用
コースの新設など次々と改革を進める同校だが、「最も大切なのは、いかに生徒を満足させるような授業を行うことができるか、ということです」と佐藤校長はきっぱり言う。予備校や塾に行かなくても希望大学に合格できる力がつく充実した授業を教師らに求める。そして新しい風を入れようと、改革に伴い即戦力になる7名の教師を採用した。東大卒はじめ、慶応大学大学院卒、お茶の水女子大卒など高い学歴と教育経験のある20代後半〜30代の優秀な人材ばかりだ。
現在、校長自ら新教師らの授業を見て回る。そして疑問をぶつけたり、アドバイスを行って、よりよい授業づくりを共に行っている。
「今後は全教師の授業を見て回る予定です。保護者には毎日の授業を大切にしていく、1日1日生徒を満足させて帰します、と約束しました。全員の教師が日々研鑽し、授業の質をどんどん高めて行くような学校にしたいのです」。
千代田学園の大改革は着々と進んでいる。
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