目指すのは「自らを高める人材」
来年は全学年にタブレット
「心を育て 学力を伸ばす」。これは二松學舍大学附属高等学校の今年から新しくなったキャッチフレーズだ。「伝統の論語教育に基づく、道徳心のある人間を育てること。そして、真の学力を身に付けて世の中に役に立つ人間を育てること。この2つをキャッチフレーズに集約しました」と本城学校長。卒業時、どんな人物になっていたいか、目指す生徒像も明確に定義した。
目指すのは「自らを高めようとする人材」だ。「自らを律する」「自分で考えて行動する」「粘り強く取り組む」の3つが実践できるよう指導していく。
「本校の生徒は真面目で素直ですが、積極性に欠けるところがあると感じていました。それを打破し、勉強や部活動、生徒会活動などに対し、自分からアクティブになれる生徒を育てたいですね」
さらに「学び合う教員集団づくりプロジェクト」も発足させた。今年度からすべての教員が研究授業を行い、互いの授業を見合って検討。指導力の向上を図っている。すでにペアワークやグループワークを取り入れた授業が増えるなど、大きな変化が起きている。
4月からは2年生全員にタブレットを配布。クラウドサービスの「Classi」を導入し、生徒と教員のコミュニケーションツールや授業にも活用している。すでに反転授業にチャレンジしている教員もおり、来年度からは全学年にタブレットを配布する。
「この1年で有効な使い方を探り、来年からは一気に活用の幅を広げたい」と本城校長は意欲を見せている。
歩いて国会議事堂へ
九段フィールドワーク
学校改革はこれだけにとどまらない。英語の4技能対策として、今年は2年生に「GTEC for STUDENTS」の全員受験を試行実施。来年度には全生徒が受験する予定で、希望制の英検受検者を増やすとともに、英語の外部試験の導入が進む大学入試に備えていく。英語を集中的に学べる語学ルームの設置も計画中だ。
また、読解力や表現力を高めようと、土曜日の朝読書の時間に、全国紙のコラムを読んで自分の考えをまとめる「読解力・表現力育成プログラム」も始まった。3つの学年全員が同じコラムを読み、漢字書き取りや感じたこと、考えたことを短い言葉でまとめていく。今年の問題は本城校長が自ら作成しているが、今後は全教科の教員が担当する予定だ。
「まずは、書くことが苦にならないようにすること。数学の先生も担当することで、計算問題が入っても楽しいかもしれませんね」
同校ならではの立地を活かした「九段フィールドワーク」もスタート。皇居や日本銀行、東京国立近代美術館などの日本の政治や経済、芸術の中心的な施設に徒歩で行ける恵まれた環境を活かし、それらを訪れて実施調査を行うアクティブラーニングだ。生徒からは「学校の近くにこんな場所があるなんて知らなかった」という声も聞かれ、同校の新たな魅力の掘り起こしにもつながっている。
同校の教育の柱でもある「論語学習」。生徒は3年間を通して「論語」を週1回学んでいる。その集大成となる選集「私の論語」を昨年の3年生が初めて製作。論語の中から好きな章句を選び、その理由や今後の人生にどう活かしていきたいかを綴った。
「論語は総合学習として行っているので、点数や評価がつかないのですが、授業を重ねるうちに論語の素晴らしさに気付いたと書いてくれた生徒もいました。そうした先輩の言葉を下級生が読むことで、論語を学ぼうという意欲が高まってくれると期待しています」
初年度の今年は選集という形になったが、次からは全員の文章を冊子にまとめることを目指している。 |
人間性評価で「相談できる入試」へ
奨学金制度も拡充
「人間性を見て、相談できる入試にする。出願基準にわずかに満たない受験生でも相談できる入試にしていきたいと考えました」。本城校長は入試制度の変更理由をそう説明する。
来年度からはA推薦・B推薦・併願優遇の出願基準を変更。これまで1〜3年次すべての学年で見ていた出席基準(欠席数10日以内)を3年次のみに変え、生徒会役員や部活の部長、委員会の委員長も加点項目として追加した。
また、進学コースにおいてはA推薦・B推薦・併願優遇問わず、基準がわずかに届かない生徒でも中学の先生と相談し、人間性を評価して判断する。
「中1のときに欠席が多くても、その後、努力して登校できるようになった生徒もいます。中学の先生が人物を証明することで、立ち直ろうとする生徒の相談に乗れる入試にしたいと思っています」と本城校長は語る。
奨学金制度も手厚くする。B推薦と併願優遇において入試時の成績最上位者(1位)に1年次の授業料相当額を給付。2位以下でも最大9位まで(出願の種類によって違いあり)授業料の半額相当額を給付する。
就学支援金や東京都の授業料軽減助成金で、私学の授業料負担は軽減されているが、施設費などは必要になる。奨学金が受けられれば、それに充填することができるので、経済的な理由で同校への進学を諦めていた生徒にも門戸が開く。
さらにWeb出願も導入し、「受験生や保護者の出願の負担を軽くしていきたい」と本城校長。
「進学実績も年々向上しています。附属高校の強みとして親大学へ内部進学するもよし。本校でさらに上の大学を目指すもよし、です。学力を伸ばす取り組みは十分用意しています」と生徒の積極性に期待を寄せる。
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