これは当たり前ではない!
元男子校校長が驚いた女子の力
「とにかくしっかりしていて、素直に話を聞き、何事もひたむきに取り組む。こんなにも女子は男子と違うのかと本当に驚きました」
開口一番、そう話すのは今年、京華女子中学・高等学校の校長に就任した塩谷耕校長だ。一昨年まで男子校である京華中学・高等学校の校長を6年間務め、昨年、京華女子に副校長として赴任。この1年、数学の授業を担当し、行事にも参加していく中で、京華女子では当たり前と思われていたことが、元・男子校校長の目から見ると驚愕の連続だったと語る。
まず驚いたのが、提出物の出し方だ。男子の場合、強く指導しないと集まらないが、塩谷校長が受け持ったクラスでは、生徒たちが番号順に集め、きれいに束ねてから提出してくれた。問題集は言われなくても繰り返して解き、何回も見直す。実際のテストでは、塩谷校長が想定していた平均点より10点以上も高かった。
「京華女子では普通のことかもしれませんが、生徒たちは本当に頑張り屋さんで、しっかりしています。女子は学習プランを示し、課題を与えれば、その分だけ伸びていくのだと実感しました。生徒の力を引き出せるようにしっかり指導していきたいですね」
塩谷校長が気付いた魅力はまだまだたくさんある。まず、1つは京華女子独自のプログラム「EHD(Education for Human Development)」だ。これは人間力と生きる力を育むプログラムで、中1では日本の伝統文化である箏曲を学び、中2、中3では茶道・華道・伝統文化(礼法、着付け、日本舞踊)、書道等の各講座から興味があるものを選んで受講する。
「日本の伝統を専門家の方から学べる機会があることは本当に貴重です。カナダ修学旅行(中3)やオーストラリア夏季海外研修(希望者)のときにも役に立つでしょう」と塩谷校長。
さらに中学では第二外国語として、フランス語もしくは中国語をネイティブ講師から学ぶ。中国料理を作りながらの授業もあり、文化にも触れられるようにしている。
また、卒業生がアフリカのニジェールの支援活動をしているつながりから、ニジェールの子どもたちとフランス語で文通もしている。こうした活動から、世界に向けて視野が広がることを期待している。
充実の大学受験講座
独自の学費減免制度で
「私学の学費は高くない」
今年、東大現役合格者が出たことで、大学進学への期待が高まっている京華女子。大学受験に向けて手厚いフォローアップ体制を整えている。
中3までに英検準2級取得を目指し、英検講習はほぼ毎週開講。さらに夏期・冬期講習に加え、高校では外部講師を招いて、京華学園進学講習を放課後に開講している。他にもセンター試験に向けた合宿型の講習や個別指導など、さまざまな学習機会を用意している。
東大に合格した生徒は、女子校ならではの落ち着いた環境と大学受験体制が充実していることから、京華女子を第一志望で入学。3年次のみライバルと接するために予備校の東大クラスに通ったものの、高2までは学校の勉強のみで、校内の講座・講習を最大限利用した。塩谷校長は「生徒たちの学力はさらに伸びると思うので、成績不振者の補習も含め、放課後の指導をさらに拡充させたい」と話す。
一方、豊富な指定校推薦枠を利用した進学指導も行っている。日々の授業は少人数指導できめ細かく、推薦やAO入試に必要な小論文や面接対策は個別に対応。初めは勉強についていくのに必死だった生徒も、入学当初からは考えられないような大学に進学を決めている。
学費の面でも頑張る生徒を力強くバックアップしている。京華学園の学費減免制度では成績に関係なく、所得に応じて授業料の半額または全額免除を受けることが可能。成績優秀者には奨学金給付制度もあり、その分は修学旅行費等に充填できる。先に紹介した外部講師の講習料も3科目(国・数・英)を1年間で2万5,000円と通常の予備校の10分の1以下である。
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昨年、この制度を学校説明会でアピールしたところ、「私学は学費が高い」という保護者や受験生の意識が変わったという。安い学費と面倒見の良さが評価され、この春の高校受験者数は過去20年で最高に。特に第一志望者が倍近くに増え、人気が急上昇している。
文武両道の先輩に憧れ
「あたたかさ」こそ最大の魅力
部活動も盛んだ。有名なのは全国大会で3年連続金賞を受賞しているマーチングバンド部。吹奏楽部やバスケットボール部の活躍も目覚ましい。ほとんどの生徒が部活動に参加しており、特進クラスの生徒も部活動に制限がない。文武両道を実現している先輩の姿は後輩の憧れの的だ。
今年は京華学園の創立120周年に当たり、11月には東京国際フォーラムで記念祭が開催される。マーチングバンド部や吹奏楽部の素晴らしい演奏をはじめ、京華、京華商業との3校合同で120周年を祝う予定だ。
また、この春には手軽に入学後の姿をイメージしてもらおうと「制服体験アプリ」を制作。学校案内に掲載しているQRコードを読み込んでアプリをダウンロードすると、京華女子の制服を着た自分の姿を撮影できる。
最後に塩谷校長は「家族のように、生徒一人ひとりを大切に受け入れる。この『あたたかさ』こそ、本校の最大の魅力です」と語る。
築80年を超える風格ある校舎は、内部は改装されているものの、クラシカルな雰囲気は当時のまま。こうした空気に包まれ、1つの家族のように見守られて過ごす6年間は何ものにも変えがたい貴重な時間となるだろう。
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