校長に代わり、人工ロボットが祝辞
新しい21世紀型の私学として
駒込の高校入試説明会は、毎回1,000人を大きく超える参加者で賑わう。教育熱心な保護者や教育内容に魅力を感じるという生徒が集い、河合校長の話に耳を傾ける。その賑わいぶりは中学にも連動し、活気ある説明会であったことは言うまでもない。
結果、高校はこれ以上クラス数が増大すると教室確保が困難になるという、521名(13クラス)が入学。中学でも第一志望者が増加し、入学者も昨年を上回った110名(3クラス)が入学した。
入学式ではペッパーが「新しい時代の扉を一緒に開けましょう。僕も負けないで頑張ります」と挨拶。会場を大いに沸かせた。
一方、河合校長は、このときすでに30年後を見据えた学校改革に着手していたのである。つまり、学則定員の問題もさることながら、人気校化し、生徒数増大の現状をどのように打破していくのか。「本当の進学校」として、「新しい21世紀型の私学」として生まれ変わるための入試改革が必要だったからだ。
加えて、東京私学の市場偏差値(新教育研究協会)では、駒込高等学校の「国際教養コース」と「理系先進コース」が70台に評価されている。これらの上の層を見ると、偏差値77をトップに数校が名を連ねているだけ。併願パターンを見ても、77の早稲田高等学院、75の日比谷、74の西、市川と続く。この層になってくると、大学も東大、東工大のレベル。私大でもGMARCH以上になる。改革の要因はこういったところにもある。
「進学実績校にせざるを得ないところまで追い込まれています。本校にとっては関ヶ原(戦い)であり、私にとっては“古米配給の入試”を命じる官僚たちと戦う最後の生き様」と、河合校長の覚悟の言葉である。
「シェアリング時代の学校改革」は、塾対象説明会などでも公表され、500人の塾関係者から温かい応援の「拍手」が飛び交ったという。
中学の一歩先行く
先取り改革
中学校の入試改革は「一歩先に行く学び、先取り改革」とする。高校の「国際教養コース」・「理系先進コース」の“中学ジュニアコース”として「国際先進コース」を立ち上げる。また、これまでの「スーパーアドバンス」や「アドバンスコース」を統一して、「本科コース(AGS)」1本とし、国際先進と本科の2本立てコースで生徒募集の開始となる。なお、各コースとも21世紀型の高い能力と主体性や来るべきAI時代・IoT時代対応の視野とスキルを持ったリーダーの育成を目指す。
●国際先進コースの内容(抜粋)
・次期学習指導要領がもたらすICT授業にベースを置く「数理探究コース」と「英語4技能指導」を中心とした「グローバル教育」を一体化した「文理融合コース」とする。また、高校進学時に国際教養と理系先進のどちらかに進級することを目標とする。
・プログラミング技術の習得を早期から開始し、高1からのSTEM教育に連動させる。
・入試科目は英語を導入した「英・国・算」や「適性検査型=PISA型問題」並びに2科(国・算)、4科(国・算・理・社)のいずれかを選択できる入試とする。
●本科(AGS:アカデミック・グローバル・スタディ)コースの内容(抜粋)
・本コースは「AGSコース」として設定。「自立のためのアカデミックな深い教養」を身に付けさせ、能動的学習への参加を取り入れる。例えば、問題発見、グループディスカッション、ディベートなどを導入した「アクティブラーニング」を実施。
・大学進学先はGMARCHをベースに「難関国公立私大」の合格を目標とする。芸大、音大、美大、体育大などへの各分野に才能ある生徒を育成し、多様で幅広い進路保障を図る。
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高校の3コース体制
高校の入試改革は以下の通り。
・最上コースの「国際教養」と「理系先進」を残し、「Sアド」「アドA」「アド」を一つにまとめ「Sアド」とする。よって「国際・理先・Sアド」の3コースにして生徒募集を実施する。
・現状の市場偏差値(新教育研究協会)は先に述べた、「理先(71)」「国際(70)」、「Sアド(69)、「アドA(67)」、「アド本科(60)」だが、新規募集「Sアド」の設定基準はこれまでの「Sアド(3科14、5科22)とアドA(3科12、5科20、9科35)」の両者を残し、両者の上記現行通知表5段階評価で募集。
・本校を第一志望とする多様な能力を持った生徒が入りやすくするように、単願での特記事項による5段階評価加算措置をプラス2まで認め、音・美・書・体などやクラブ活動などで秀でた多様な生徒を単願で獲得する。
・入学後に行うクラス分け判定テストにより、すべての生徒をSアドに編入するとともに、希望により文系理系に分け、さらに上位「上位Sクラス」を設置、到達別授業を実施。
高校受験のこれまでのデータを見ると、約1,400人が駒込を受験している。今回の改革では、その半分の受験生が来年は受験できないことになる。勇気ある決断を河合校長は下したといえる。その先には「突破すれば全く新しい21世紀型の私学が誕生する」という思いを胸に。
河合校長は「このような改革を実行しても、駒込は仏教系の学校です。生徒はすべて仏様から預かった子たちです。できる子、できない子、普通の子、ご縁のあった生徒たちすべてが幸せになるように、なりたい自分になってもらうという学校づくりをしているだけです。それに本校の先生方は決して、優劣関係で生徒たちを見ることはいたしません。安心ください」と余裕の表情を見せた。
これこそが“LIGHT UP YOUR WORLD一隅を照らす”、駒込の人気のゆえんであろう!
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