「学校内完結」の学習環境を
ラーニングセンターが提供
「人や国際社会に貢献できる素地を育ててきた、これまでの取り組みと新しいものを融合し、システムとしてつないでいるところです」と、田部井道子校長は柔らかな笑顔で語る。学習サポート体制の仕上げとして今年9月「JSGラーニングセンター」が始動。
「自立学習を確立する環境を学校が『保証』しました。家庭学習の『学校内完結』を学校の新しい文化にしていきます」と進路指導部長の塚原隆行教頭の穏やかな声にも熱がこもる。
自習室の座席数は3倍に、部活後も学習できるよう下校時間を19時に延長。最大の特長は、質問に対応する大学生チューターと、学習計画の相談ができる担当者が常駐すること。予習・復習・宿題・テスト対策はもちろん、高校生はセンター試験6年分の分野別演習も可能だ。チューターの個別指導も受講できる(有料)。
ただあくまで「その日のつまずきを解消する」のが同センターの意義。「女子聖にとってまず大切なのは授業」と田部井校長と塚原教頭は強調する。主要5教科はセンター試験・GMARCHレベルをカバーする授業を展開。上積みとなる放課後の「JSG講座」は全学年対応で希望制。英・数・国中心に年間約150講座を開講、人気講座には80名近い希望者が集うという。
開講4年、教員たちが培ったスキル・結束力は甚大と田部井校長。「夏期講座は担当学年を超えて総動員で分担します。教員同士でスキルをシェアし、連携が進む中、6年間カリキュラムの一貫性も強固になりました」。
塚原教頭は、もうひとつ大きな課題を見据える。「さらに上位の大学を目指す生徒たちが満足できる高度な内容を学校が責任をもって届けたい。その準備が整ったところです」。
世界に視野を広げる
5年間の必修プログラム始動
オーストラリアのミッション系女子校で2ヵ月半学ぶ「ターム留学」に昨年参加した生徒の一人が帰国後、田部井校長にこう直談判した。「もっと長くいたい。現地校とホームステイ先に『1年間、私を預かってください』と交渉し、約束を取り付けました。学校は許可してくださいますか」。
「その積極性が素晴らしい」と『年間留学』が新たに同校の海外留学プログラムに加わった。
「生徒の行動力には驚かされます。40年以上続くホームステイ、今年度から始まった立教英国学院留学とセブ島マンツーマン語学留学、目的と希望に合わせて選ぶことで、世界を知るチャンスをより広げたい。海外の国公立・州立大学への指定校推薦入学につなげることも可能です」
田部井校長自身、女子聖での高校時代に留学を経験。背中を押されたきっかけが、当時中学生対象に行われていた「イングリッシュ・キャンプ」だった。楽しく英語に浸るプログラムを今の生徒にも…と希望制で再び導入したが、今年から必修へと大転換。中1〜高2生は年1回3〜4日間の通学型(中2は宿泊型)プログラムに全員参加する。中1生の「グローバル・スターター・プログラム」では、ネイティブ講師とのアクティビティを通して外国の習慣や文化を学ぶ。
最後に全員が英語で自己紹介に挑戦。「必修」の成果は上々。「4月実施で友達がたくさんできることと、英語のレベルは皆同じなので、シャイな子も積極的に話せる。自己紹介でつまずくと『がんばれー!』と応援し合っていました」と田部井校長は目を細める。「『ボーダレスの時代に生きる教育』とは、外国とのかかわりだけではなく、隣の人との違いや異なった点を受け入れる姿勢を育むこと。その上で日本語や英語で自分の意見を発信していけるように、それが「Be a Messenger」、今年のキーフレーズに収束されています」。 |
「Be a Messenger」
自分のことばで社会に届ける
「自分のことばで発信する教育」にも長年積み上げた土台がある。全員参加のレシテーションコンテスト(中2・3)・英語スピーチコンテスト(高1〜3)、ネイティブ教員の指導のもと、エッセイを書く「クリエイティブライティング」(選択科目)。スピーチ・エッセイは、自分が伝えたいこと、自分にしか語れない経験を、聞く人が共感できるよう表現する。担当教員は『光るもの』を探し出し、生徒とともに推敲を重ねて練り上げるという。
「一人にかける時間は非常に大きいです」。田部井校長の声に実感がこもる。「作品の真価はオリジナリティ、その人らしい視点を持つこと。中1からの『賜物』教育があってスピーチへとつながるのです」。
英語のスキル上達以上にユニークで読み応えのある作品群が放つ、自らの体験や感情を乗せた言葉の説得力は大きい。他教科でも、教員が独自に発展させてきた「調べて考えて発信する授業」を「グローバルアーツ」と総称し、インプット・アウトプット技術を磨く活動を教科共通テーマに据えている。
「発信型」入試として今年度から「英語入試」がスタート、伝統のレシテーションを入試課題のひとつに採用した。受験勉強はそれほどでなくても英語は頑張ってきた小学生にも門戸を開きたい思いから生まれた枠だ(2科・4科受験の定員設定は変更なし)。課題は事前に配布され、正確さより表現力を高く評価したい、とのこと。
「一人ひとりを認める人間教育への期待への大きさを感じます」と田部井校長。「自分を生かす場があり、周りにも差し出すことができる。『共に生きる』スクールモットーそのままに生きる、女子聖の6年間です」。
語ることば・賜物を持つ人は、未来を自らの力で創造できるはずだ。
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