東京都葛飾区の閑静な住宅街にある修徳中学校・高等学校。2011年に校舎をリニューアル、ピカピカの新校舎の中心には吹き抜けがあり、どのフロアも大きな窓から太陽光が差し込む。生徒たちも明るく真面目で、廊下を歩けば、校外の訪問者にも「こんにちは」と礼儀正しく挨拶をする。
取材したのは、「進学コース」文理選抜クラス高2の古文の授業。2限目、9時40分から始まった坂本陽子先生の授業は5分間テストから始まる。このテストでは文法問題を10問解かせて自己採点する。テストの間、坂本先生は席を巡回し、回答用紙を見ながら「思い出してね!」「合っているよ」と、一人ひとりの生徒に声がけをする。「それ、昨日やったよね」と厳しい言葉も飛び出すが、その声は愛情にあふれる。弱点を克服した生徒には「できるようになったね」と笑みをたたえて褒める。
坂本先生はすべての生徒を名前で呼び、全員の個性や学習習熟度を把握するようにしているのだという。
「自己採点させるのは、何が弱点なのか自分で気付いてもらうためです」
平均点が7割程度に伸びれば授業で次の項目に進むが、基準に達していない場合は同じ範囲を授業で復習する。
取材時のテストでは、平均点が7割に達していなかったため、前回の授業の復習を行った。坂本先生の授業の特徴は、「文法ノート」を生徒に作らせること。参考書を見ながら、先生の板書を自分の手で大学ノートに書き写し、高1から高2の2年間で文法ノートを完成させる。つまり、自分だけのオリジナルな文法の参考書が高3に進級するまでにできあがるわけだ。それは文法をしっかり学び、自信をつけさせるためである。古文に対して免疫力のない生徒たちに、まずは文法という「武器」を身に付けることで、「古文って読めるんだな」と古文の楽しさを感じてもらいたいのだという。
「今すぐにできるようにならなくてもいい。こういうものがあるんだとわかっていればいい」という坂本先生の考えによるものだ。 |
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テストが終わり、授業に入ってからも坂本先生は生徒一人ひとりに目を配る。席を巡回し、「ここ大事だよ」「見やすく書いているね」とノートを指さし、生徒の習熟度や弱点を確認。生徒からはノートの取り方や学習内容について、積極的に質問が飛ぶ。1年生のときからクラス替えをしていないというこの学級。のびのびとした雰囲気の中、授業は進められていった。そして10時半。授業後も質問をしにくる生徒たち。
「『わからなければいつでも質問していいよ』と、常に生徒たちに言っています」。この面倒見の良さが生徒に慕われる理由なのだろう。
坂本先生は、昼休みや放課後もできるだけ教室にいて、生徒たちの中にいることを心がける。生徒たちの勉強に関する疑問をできるだけすくい上げるためだ。生徒の細かな表情を見逃さず、勉強のやり方などの相談事には必ず答えを返す。そして、やる気のある生徒や受験生には個人に合わせたプリントを作成。各生徒の学習スケジュールに合わせて、多い生徒は毎日、生徒によっては曜日を決めてプリントを渡す。
「焦らず、一人ひとりを大切に指導するようにしています」
授業後に坂本先生は「ここ数年大学合格の実績が上昇しており、国公立大、早慶上理、GMARCHなどの合格実績が着実に伸びています。都会の喧騒を離れた勉学に打ち込める環境の中、部活だけでなく『文武一体』を実践している学校だということを知っていただきたいですね」と記者に語り、話を結んだ。
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