すべてのコースに英語力
コース改編へ教師が本気
文京学院大学女子中学校高等学校は、来年度より現クラス編成を刷新し、中・高ともに3つの新コース制をスタートさせる。
そのひとつが「女性サイエンティスト」の育成を目指す「アドバンストサイエンス(理数キャリア)」だ。中学校で理数分野への興味関心を喚起し、高校で探究心とそれを支える学力・研究の技法を鍛えて、大学での研究活動につなげていく。
都内の女子校として唯一スーパーサイエンスハイスクールに指定されて3年目。理数分野を幅広く学び、研究法に習熟する学校設定科目、中学は妙高、高校は小笠原やマレーシアで行う自然体験学習のほか、放課後の「SSクラブ」では身近な現象から発した疑問を起点に、各生徒が研究活動を行う。その成果は科学コンテストでの入賞、学会での発表、また連携校であるタイの国立科学高校と共同で行うサイエンス・フェアの発表に現れている。「自分の研究を海外の人に伝えたい」という熱意が英語で研究ポスターを書き、英語でプレゼンテーションを行うための努力につながっていく。
2つ目のコース「グローバルスタディーズ(国際教養)」では、英語によるコミュニケーションを基盤に、グローバル社会で活躍できる人材の育成を目指す。
同校では6年前から課外講座として「国際塾」を開講。中1レベルからプレゼンテーションや小論文等のレベルまで、各人のレベルに合わせたクラスを用意している。クリエイティブな発想で英語を学ぶプログラムもあり、「ハリー・ポッター」を英語で演じた他、今年はロンドン芸術大学附属国際芸術高校のコリン・ケリガン先生を招き、英語によるアートワークショップを開催した。
海外語学研修も充実。BEST(Bunkyo English Study Tour)として、英国ウェールズの大学やオーストラリア、アメリカ、カナダを訪れるプログラムやニュージーランドへ100人以上の生徒が海外生活を体験している。「現地で異文化体験をすることで、より国際的な視点を養ってほしい」と佐藤校長は話す。
また中学から高校2年まで、週1回英語の多読の授業がある。辞書を使わず、生の英語に数多く触れるもので、多読室には7,000冊以上の本を用意。多聴(CDを聞く)、多書(英文を自由にたくさん書く)等も行っている。生徒は英語への抵抗がなくなり、模擬試験では長文読解やリスニング問題に力を発揮。英語に自信を持つ生徒が増えている。
同校では英語教員のレベルアップにも力を注ぐ。今年度、国際教養大学のパトリック・ドーティー教授による、ワークショップが6回の予定で行われている。生徒が積極的に授業に取り組めるための指導術を学ぶ他、英語力を上げる実践練習を行っている。ドーティー教授は「先生方は英語教育を最先端かつ充実したものにしようと、高い意識を持って臨んでいます」と語る。
「保護者の皆様、塾の先生から大切な生徒を預かっているわけですから、責任を強く感じています。期待に応えられる教育をしていきたいと思います」と佐藤校長は話している。
スポーツで生きる力を
部活の垣根を超えて指導
3つ目の「スポーツサイエンス(スポーツ科学)」コースのコンセプトも斬新だ。スポーツを通してリーダーシップを発揮し、社会で活躍できる人材の育成を目指している。優秀なアスリートの育成だけに特化しないのが最大の特色だ。
「練習で自分を追い込み、試合で勝ち負けを経験するスポーツは生きる力を育んでくれます。このコースではスポーツを通して、そうしたライフスキルを身に付けることを目的にしています」
同校では、これまで部活の顧問に任されてきた選手の育成を統括して行う「スポ学教育センター」を設置。大学の研究機関や外部の指導者を招いての「スポ学塾講座」を開くなど、部活の垣根を超えて活動している。7月には「スポーツ障害」、9月には「女性と身体」をテーマにした講座が、中・高運動部員300人を対象に行われた。 |
海外で活躍する日本人選手が英語でインタビューを受けるシーンも多い昨今、このコースでもコミュニケーションを中心とした英語力の育成に力を入れる。海外のスポーツ教育に触れる機会として、オーストラリアの高校のスポーツプログラムに参加する計画も進行中だ。
目標に向かってひとつのことをやり抜く力。チームをまとめるリーダーシップ。このコースでそうしたスキルを身に付け、スポーツ科学・体育系への進学だけでなく、医療系など多方面への進学が可能になると期待が高まっている。
コース別で目標がはっきり
有意義な中・高時代に
習熟度によるコース編成をやめ、「サイエンス」「グローバル」「スポーツ」という新しい切り口のコース制に大きくシフトした同校。その背景には「生徒に目標を持って入学してもらいたいという思いがありました」と佐藤校長は話す。
学力によって分ける「縦割クラス」では本当にやりたいことは何なのか、はっきりしないまま学校生活を送りかねない。具体的な3つのキャリアデザインを示すことで、早い時期から目標を持ち、有意義な学校生活を送ることができると同校では考えている。ただし、入学後にコースを変更することは可能である。
「世界で活躍している人は皆、夢を持っていますよね。中・高時代には生徒の好きなもの、得意なことを尊重してあげたい。それが世界に通用する専門性につながっていくと、私たちは考えています」
創立90周年の伝統校の挑戦が始まったばかり。「伝統は守るのではなく、将来に向かってつくっていくもの。10年後の100周年にはさらに輝いている学校になっていたいですね」。
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