3年間の新校舎計画が
中学生にもたらした自立心
青稜中学校・高等学校は、3年にわたる新校舎計画の最終段階を迎え、今春、中学生専用2号館の改修が完了。外壁は明るく塗り替えられ、内部は最新設備にリフォームされた。少人数、習熟度別授業にフレキシブルに対応する可変型の教室では、ICTを活用した授業も展開される予定だ。
環境整備の3年間に中学生に何か変化はあったのか、生徒募集対策部長に聞いてみた。
「高校生が離れた仮校舎にいて、中学生には頼れる先輩がいなかったんです。文化祭も『自分たちがやるんだ』という意識が生まれ、中3が率先して下級生に指示を出し、高校生を真似てしっかり仕事をこなしていました。これは私たち教員にも嬉しい驚きでした」
時にはぶつかり合いながら「中学生だけ」で創った文化祭は大成功。「この自立心を育てていかないともったいない」と対策部長は顔をほころばせた。
今春の中学受験者数は約1,300人。4科・2科を選べる5回入試で、合格者層の実力も年々上がっている。
「猛勉強しないと入れないような中学校ではありませんし、難易度も変えていません。60%得点できれば十分合格に達します。思考力は、入学後にしっかり養いますから大丈夫です」
中高一貫から今春、早稲田に進学した卒業生は「高校から面白いように成績が伸びた」と語る。この「伸びる学力」は中学過程で築いた土台にある。
英語は先取りせず、少人数クラスでじっくりと。数学は習熟度別・チームティーチングで手厚くフォロー。勉強が遅れ気味の生徒には徹底した個別対応を。家庭学習は2時間必須と、学習量も忙しさも相当だ。
「うっとうしいほど、教員が面倒を見ます」と対策部長が笑う。そのダイレクトな愛情を、中学生は日々全身で浴びて育つ。
今秋、高校の新校舎が完成
青稜流モチベーションとは
今秋、最後に完成するのが高校生専用の1号館北棟と、「自習スペースを増やして」という生徒の希望を叶えた図書館棟。1号館北棟の最新設備を備えた理科室は、学年半分を占める理系クラスを強力にバックアップするだろう。中学と高校の連絡通路に設けられるアトリウムでは、中学生と高校生の新たな交流や活動が生まれそうだ。
今春の高校受験者数は昨年より200人増の約1,300人。神奈川県の入試変更による余波と対策部長は分析。ここ数年は日比谷や横浜翠嵐など、トップ校を志望する受験生から併願校に選ばれている。大学進学実績を名実とも上げる同校の「面談」の極意を聞いた。
「チャレンジ叶わず、本校に来た生徒が多い中、ほとんどの生徒が『仕切り直すチャンスを得た』と1学期で吹っ切れます。ここでモチベーションを上げ直すことが、本校では非常に重要」
4月は学校全体で授業を5分短縮し、中高とも「面接月間」となる。入学直後は特に時間をかけて、担任は生徒の内面を理解し、「未来を見よう」と自信を呼び覚ますケアを徹底的に行う。
今春、東工大に進学した卒業生は、「生徒全員が大学受験に向かう雰囲気があり、後押ししてくれる先生がいる。青稜の環境が受験勉強は『苦しみ』ではないと教えてくれた」と語った。それこそが本校のモチベーションと対策部長も頷く。
面談は高校1・2年で年間10回、高3で20回にのぼる。「面談ノート」に蓄積された情報をもとに教科ごと生徒ごとに、教員はアプローチやかける言葉を変えていく。
生徒の可能性を引き出す共同作業は、在学中ずっと続いていく。 |
国内へ、海外へ
フィールドを広げる青稜生
行事も進化し続けている。昨年導入した「東北研修」では、中学生(希望者)が宮城県の震災跡や復興の様子を見学。今年は生徒から「被災者の方々を助けたい」と声が上がり、女川町で農地整備ボランティアを行った。中・高校生対象に、来春以降も継続する予定だ。
青稜生の間では、海外研修への意気込みも高まっている。毎夏、高校生対象に2週間のカナダ英語研修を実施。定員30名に今年度はすでに50人を超す希望者が。来年から研修先をイギリスへ変更することが決まっているが、生徒の熱気に応えたい、と対策部長。
「英国文化を肌で感じられる、オールド・イングランドの面影を残す古都でのホームステイを予定しています。雄大な自然体験ができるのもカナダの魅力。文化と自然、来年は体験したいほうを選べる形になるかもしれません」
中学生には八ヶ岳青蘭寮で希望者対象の3泊4日「英語サマーキャンプ」を実施している。自然活動を通して英語に親しんでいるが、海外で行う本格的な英会話キャンプを計画中だ。ネイティブの英語教員も増員し、生きた英語・日常の英会話力を向上させたい思いを、対策部長は静かな情熱で語る。
「大学入試システムの変更に臨機応変に対応していくのはもちろんですが、大学を卒業した『その先』ですよね。今の生徒たちが活躍する社会は、海外に行き、仕事をすることが避けられません。彼らが不自由しないように、『国際化』を徐々に進めているところです」
数年前は「自信がなく、おとなしい」と評されていた生徒たち。学校が進化するように少しずつだが着実に、確かな自信を身に付けて「新しい青稜の時代」を創り始めているのかもしれない。
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